軍パロ
山田さんなんか死んでます
ハロウィン用の突貫工事小説です
思いつきです
でも思ってたのと違う
ハロウィン
今でこそ、若者が仮装という名のコスプレをして
酒片手に街で暴れ出すようなイベントになってしまっているが
実際は外国版お盆のようなもので
本来は収穫の儀式として行われていたようだ
サンクスギビングみたいなことなのだろう
由緒あるイベントが、若者の手によって浮かれたイベントになってしまった昨今
それらの後始末をさせられている身からすればはた迷惑なことだ
そんな俺は、絶賛ぼろぼろになったかぼちゃと向き合っている
ナイフで必死になって削り上げた顔はどこか歪でおかしい
いいんだ、こういうのは気持ちだ気持ち、と無茶に切り替えて立ち上がる
台所から香ばしい香りがした
もうそろそろ焼き上がるだろうか
直ぐ側においていたミトンを手にしてオーブンに向かう
煌々と燃え盛る火で照らされたオーブンの中には鉄板に置かれたパイが艶やかに輝いていた
「そろそろか…?」
オーブンの扉を開けると、ぶわりと熱気が俺を包む
いい感じになっているのを確認したら、金属の長い棒を鉄板の縁に引っ掛け取り出す
想像よりうまく焼けたパイに少し優越感を感じる
まだ熱いパイを一つ一つ皿に移して冷ましていく
この間にキャンドルを用意しようと、付けていたエプロンを外し調理場の扉を開ける
すると目の前に2つの影
どうやら匂いを辿ってやってきたみたいだ
可愛らしい食いしん坊二人に問う
「…つまみ食いしてく?」
「する!」
「食べたいっす!!」
間髪入れずに帰ってきた返答に、苦笑をこぼしてしまった
半分こね、と一つだけパイを渡し
火傷をしないようにとだけ注意を入れる
元気な返事を聞いてから、扉を締めた
すぐにそーちゃんの叫び声が聞こえる
やっぱり話を聞いていない
わかりきっていたことだ
きっと山田が居たら、茶化しに行ってるだろうな
くすりと笑いながら橙頭のアイツのアホ面を思い出す
刹那、”あの瞬間”がフラッシュバックした
「…ッッ…」
頭を横に振り、気持ちを切り変える
紅葉が美しい、秋の終わりだった
あの世は意外と退屈なところだ
一人なのが更にそう思わせてしまう
こっちの仲間も皆ハロウィンだからと家族や恋人が用意したかぼちゃのランタンを持ってどこかへ行ってしまった
きっと俺の恋人は、今頃ハロウィンに乗じて暴れる若者の後始末で大忙し
折角の機会なのにランタンも灯せず
俺だけこの空間に取り残されたまんま
悪霊のように他のやつにくっついて出ることもできず
気づけば一人ぼっち
あいつ、まさか俺のこと忘れとんとちゃうんよな…
そう不安に思った時
一本の紫陽花が降ってきた
生前、花屋で見かけた覚えがある
淡い緑が可愛らしい、アナベルという花だった気がする
確か花言葉は‥
「…______」
なんで急に花がとも思ったが
そういえば、うた辺りが昔言っていた気がする
現世の人が常世の人のことを思うと、常世の人のもとに花が降るらしいと
柔らかい花をくるくる指先で回しながらあいつの顔を思い浮かべる
誰よりも憎たらしいが、誰よりも愛おしかった
あいつの話す時間、関わる時間、内容が何であろうと幸せだった
不意に、手に持っていた花が温かな光に照らされた
淡いオレンジの光、さっきまで恨めしく見ていたあの光
慌てて顔を上げると、ふわふわと歪な顔をしたかぼちゃが浮いていた
ところどころ切りすぎていたり、大きく抉れていたり
あいつが必死にナイフを使って作ったと思うと、胸が暖かくなる
「なんや歪やなぁ〜…あいつこんなに不器用やったんか…」
鼻先がツンと痛む
久しぶりに会えるというのに、俺が泣いてどうする
服の袖で荒々しく目をこすり、かぼちゃの頭を撫でた
「頼むで、たくぱんの元へ」
柔らかい光がかぼちゃの中で揺らめいている
暖かい光に、何処か指先までほどけた気がした
「‥山田さん、迷子になりませんかね?」
「…そのためのランタンだよ」
皆アイツのことを思い出して顔が暗くなる
沈黙が訪れた
「…パーティー始めるか!あいつも明るいほうがいいだろ!」
無理やり作ったような明るい声ではるてぃーが言う
それに乗じて皆も楽しもうと切り替えていった
俺だけは、かぼちゃのすぐ近くでずっと座って皆を眺めていた
かぼちゃの直ぐ側に、小さく盛ったオムライスとさっきい焼いたパンプキンパイを置く
あの時贈ってもらった指輪も添えて
「……」
あの日、あの時
俺を庇って、戦場であいつは死んだ
『俺のことは忘れて…俺も忘れるから』
そんな無茶な事を言って、俺の前から姿を消した
それから忘れたことなんて一度もなかった
「…俺、悪い子だな…」
『ほんっっとそうやわ〜忘れろぉ言うたんに、こんなん用意しおって…それは俺もか』
聞き慣れたはずのあの声
ずっと恋い焦がれてたあの声
振り向くが誰も居ない
幻聴か、さすがの俺も休まなきゃだななんて思ったらまた聞こえた
『幻聴ちゃうて!これ見たら信じてくれるか?』
不意にダクトから数輪の花が落ちてきた
きっちり7本
赤い菊、青いアイリス、水色のヒルガオ、紫のライラック、桃色のガーベラ、白いコデマリ
そして薄緑のアナベル
『これ、こっち来る途中にいっぱい降ってきてん』
そんなに思ってくれるなんて嬉しいわぁ〜
なんて明るい声が聞こえる。
嫌になるほど聞いたのに
なんでこんなに嬉しいんだろう
『俺しっかり覚えててんで、この花、アナベルってやつやろ?』
そういえば一緒に見たことあったんだっけ
懐かしいな、もう3年も経ったのに、まだ鮮明に思い出せる
胸がぽおっと温かくなる
窓越しに冷たく光る月
『…いい秋やな』
「…知ってる」
歪なジャックは笑った
赤い菊 あなたはとても素晴らしい友達
アイリス 信じる心
ヒルガオ 絆
ライラック 仲間
ピンクガーベラ 感謝
コデマリ 友情
アナベル 我慢強い愛
コメント
2件
は ? 好 き 。 上 手 す ぎ ん ね ん 😭 💦 花 が 関 連 し て 来 る 小 説 大 好 き 🫶️💗 頑 張 っ て ね 、応 援 し と る ~ 、ち ゅ き 😘