「え? そんなに多いんですか?」
「はい。土魔法に水魔法、氷魔法と―――
希望者が殺到しています」
私は冒険者ギルド支部で、ミリアさんから
説明を受け驚いていた。
話の内容は、例のドラゴンの巣に向かい、また
常駐してくれる人の募集についてだ。
正直、この件はある程度難航すると見ていた。
何せドラゴンの巣だ。
この世界ではトップクラスに君臨する最強の生物、
その群れの中へ行くというもの。
ブレスだろうが牙だろうが爪だろうが、一撃で
致命傷は避けられないほどの戦闘力の差。
似たようなもので、すでにワイバーンの拠点への
常駐仕事はあるが……
こちらは安全という評判が確保されて久しく、
またワイバーン騎士隊が正式に国家に導入されて
いる事もあり、抵抗は少ない。
ほとんど交流の無かったドラゴンの巣の
拠点作成に、どれだけの人間が来てくれるのか
不安だったのだが、いい意味での予想外の出来事に
驚きを隠せなかった。
「やっぱり、アルテリーゼやシャンタルさんが
一緒に生活して長かったから?」
「それもあると思うッスけど、今回はちょっと
別の意図が働いていると思うッス」
レイド君が妻と一緒に書類をながめながら語る。
「それで、ギルド長は?」
部屋の主が不在であった事にも困惑したのだが、
リストは出来ているというので、そのまま
レイド夫妻から話を聞いていた。
と、そこへノックの音が響き、
「おう、シン。
来ていたのか。
すまんな。
例のドラゴンの巣へ拠点を作りにいく
人員確認のために、児童預かり所と
『ガッコウ』に寄っていたんだ」
そこへ白髪交じりの短髪に筋肉質のボディを持った
アラフィフの男性が入ってきた。
「?? 『ガッコウ』はまだわかりますが、
児童預かり所?」
するとジャンさんはリストの紙に視線をやり、
「そこに書いてある連中は、いわゆる留学組だ。
チエゴ国を除いて―――
新生『アノーミア』連邦やクワイ国、
ウィンベル王国の最恵国待遇国である
ライシェ国、そのほか各国からの留学組が
名を連ねている」
各国からの留学組とはいうけれど、身分や地位は
かなりグレードの高い人たちが来ているはず。
何でその人たちが? と首を傾げていると、
「まー、いい機会ッスからねえ」
「見逃せなかったんでしょう」
褐色肌に短い黒髪の夫と、丸眼鏡のショートヘアの
妻が夫婦揃って話す。
なおも困惑する私に、ギルド長が私と対角の
ソファに座ると、
「要はドラゴンと人脈を作りたいって事だよ。
チエゴ国からの留学組は、アルテリーゼから
『我が子の友達』とお墨付きをもらっているし、
アンナ・ミエリツィア伯爵令嬢は、ワイバーンの
ムサシと婚約している。
多かれ少なかれ、それと同じ状況はどこの国も
狙っているんだ。
今回の件はそりゃ飛び付くだろうよ」
「なるほど。
だからチエゴ国は『除いて』だったんですね」
言われてみれば、チエゴ国は最も早く留学組を
寄越した国―――
ドラゴンやワイバーンの他、児童預かり所に
寝泊まりしているので、獣人族、ラミア族、
魔狼を始め、人外や亜人とも良好な関係を
築いている。
そんな先例と、ましてやドラゴンと人脈を持てると
あらば、何を捨て置いてでも参加するだろう。
「ま、そんな訳で児童預かり所へは、ラミア族への
協力要請で寄っただけだったんだが」
「あー、土魔法で建物の土台を作れますからね、
彼女たちは」
私が受け答えしていると、ジャンさんはそのまま
レイド君へと頭ごと視線を向け、
「……で、リベラにお小言食らってな。
レイド、どうしてお前は肝心な事を
言わねぇんだよ」
私の正体をバラしてしまった事、ギルド長に話して
いなかったのか。
さらにミリアさんも忘れていたのか、
夫婦でばつが悪そうに視線を下げる。
「え、えーっと……
では、依頼の人員集めは順調という事で
いいでしょうか?」
話題を反らすため、ここに来た目的―――
ドラゴンの巣に拠点を作る人員集めの様子を
伺いに来た話に戻る。
「おう。
ラミア族以外では、2,30人がいつでも
出発出来るって話だったからな」
「そうですか。
それではまず、ドラゴンの子供たちの
熱中症対策が優先ですから―――
氷魔法を使える人を中心に送風の魔導具を
送り届けてもらって……」
その後、ギルドメンバーとの話し合いで、
具体的に拠点作りの内容を詰めていった。
「シャンタルが戻って来たから―――
次は我が行ってくるぞ、シン。
メルっちはラッチの事を頼む」
「ああ、気を付けて行って来てくれ」
「りょー」
「ピュ~」
公都『ヤマト』中央区の広場で、ドラゴンの姿に
なった妻に、人間の方の妻と一緒に見送りの
あいさつをする。
彼女の他にもワイバーンが数体、コンテナのような
箱を吊り下げ、スタンバイしている。
あの翌日、シャンタルさんがまず氷魔法の
使い手と送風の魔導具を乗せ、ドラゴンの
巣へと飛び立った。
その時もワイバーン数体が同行し、先に拠点に
必要な物資を輸送。
そしてシャンタルさんたちが戻って来た事を
確認後、今度はアルテリーゼがラミア族や
水魔法・土魔法の使い手を運ぶ手筈に
なっており、
ワイバーンたちは細々とした生活必需品を担当、
ピストン輸送でドラゴンの巣へと飛び立った。
ちなみに、シャンタルさんとアルテリーゼが
交互に向かうのは、公都からの要望で……
ドラゴンのどちらかは常に残っていると安心感が
違うとの事で、
また私やパックさんもそれなりに忙しく、
なかなか家族一緒の行動を取れないでいた。
「まあ仕方無いか。
ランドルフ帝国の脅威もあるし」
「そういえば、今頃どうしているんだろうねー。
ティエラ王女様たち」
ラッチを抱きながら、黒髪セミロングの
アジアンチックな容姿のメルが、使者の人たちを
思い出しながら話す。
あの使者が帰ったのは、ちょうど二ヶ月ほど
前だったかな……
さて、事態はどのように転ぶだろうか。
なるべく平和的な展開を望みつつ―――
私はメルとラッチと共に広場を離れた。
「人員は確保出来たか?」
「はい。いつでも出航可能です」
ランドルフ帝国・西海岸のとある軍港で、
腹の突き出た中年太りの男が、軍服に身を包み
船団を前に口元を歪ませる。
すでに月が空にある時刻、軍船はその月明りで
鈍く水面に姿を映す。
「新型の対空用誘導飛翔体専用軍船を150、
また念のため、対船攻撃用軍船を50隻。
ようやく形となった偵察用ワイバーンライダーが
5騎―――
ワイバーン用の滑走船と共に準備万端です」
軍の部下と上司が話し合っているところへ、
早足で一人の女性が従者を連れて駆け寄り、
「ゾルタン副将軍!!」
紫の長髪を揺らしながら、荒い呼吸で
彼女は声をかける。
「どうしましたか、ティエラ王女様。
こんな夜中に慌てて―――」
「ど、どうしたも何も……
これはどういう事です!?」
二百を超える軍船を前に、彼女は軍人に
問い質す。
「ああ、訓練ですよ。
新型の軍船、それにワイバーンライダーが
実用化されたとの事で。
その渡航能力及び性能をテストするためです」
しれっと答えるゾルタンに、ティエラに
同行していた従者二人も反発し、
「これだけの軍を動かして、何が訓練だ!?」
「どうせ行先は西の大陸でしょうが!!」
カバーンとセオレムが食ってかかるが、
「やれやれ……
この訓練は帝国武力省公認のものですぞ。
抗議ならアルヘン将軍にお願いしたい。
某に任務を断る権限はありませんのでね」
帝国武力省が認めている任務に異議を唱える、
それは延いては、皇帝マームードに対する
反発とも受け止められかねない。
従者二人は怯むが、王族であるティエラは
なおも食い下がり、
「ですがこれだけの船団で出撃すれば、
要らぬ刺激を与える事にもなりましょう。
もし他国が敵対行為と見たらどうするのです?」
「この任務はあくまでも遠洋での訓練です。
見た者がどう感じるか、そこまで責任は
持てませんな」
あくまでも訓練と言い張るゾルタン。
しかし、それでも彼女は言葉を止めず、
「200隻の船団を見て、友好的だと思う
国は無いでしょう。
もし攻撃を受けたらどうするのです?」
「おかしな事を仰いますな。
攻撃されたら反撃するのは当然では
ございませんか。
それとも王女様は、兵士たちに黙って
沈められろと言われるか?」
そこで反論が尽きたのか、ティエラは口を
一文字に結ぶ。
そしてその光景を―――
近場の施設の上階から、二人の男が
見下ろしていた。
「思い通りになりましたな、アルヘン将軍」
「人聞きの悪い事を言うな。
それなら君はどうだ?
この結果が予測出来なかったとでも?」
帝国武力省将軍、ロッソ・アルヘン、
兵器開発省・新機軸技術部門主任、
アストル・ムラト。
二人は互いに顔を向けず、ただ眼下の光景を
見つめる。
「いえ、さすがにあの人選まではわかりません
でしたよ?
ゾルタン副将軍ですか……
ちょっと不安が残りますね」
「能力はそこそこのクセに、身の丈に合わない
野心家だ。
新兵器の確認テストならアイツでいい。
いなくなったところで問題は無いしな」
帝国武力省のトップに、技術者の男は
眼鏡を直しながら、
「それはそれは。
付き合わされる兵士たちは、たまったものでは
ありませんね」
「嬉々として兵器を引き渡した君が言う事か。
まあいい、どちらにしろこれで向こうの大陸の
戦力が測れる。
出来れば早めに降伏なりして欲しいものだが」
両目を閉じるアルヘンに、ムラトは口角を上げて、
「そうですねえ。
それなら私も、良心の呵責に悩まされずに
済むのですが」
「ほう。君にも冗談が言えたとは」
「心外な。本心からですよ。
私はただ、ランドルフ帝国を
新生『アノーミア』連邦の二の舞にしたくない、
その一心です!」
そして二人がそれぞれの方向へ離れると同時に、
月光がその場に差し込んできた。
「薬草、ですか?」
「はい。出来れば追加で欲しいものが
ありまして―――」
私とメル、ラッチはドラゴンの巣から戻って来た
パック夫妻と、宿屋『クラン』で遅い昼食を
とっていた。
「夏バテもそうですが、今は子供もいるので。
念のため今のうちに薬も確保した方がいいかと
思いまして」
夫の銀髪に負けず劣らず、シルバーの長髪をした
妻が隣り合って事情を説明する。
「でも意外だよねぇ。
ドラゴンって熱に強いと思っていたんだけど」
メルがソーメンをすすりつつ話すと、
「火魔法などの攻撃ならビクともしませんが、
気温となりますと……」
「アルテリーゼさんのところのラッチちゃんも、
確か熱中症になった事があったでしょう?」
シャンタルさんの後にパックさんが、過去にあった
事実を指摘する。
「お話はわかりました。
手伝って欲しい薬草というのは、特殊な
ものなんですか?」
ラッチの口にみぞれ和えのチキンカツを
運びながら、私が質問すると、
「ドラゴンの子供専用のものですから、
希少といえばそうかも知れません。
大人であれば変身出来るので、人間の薬で
構わないんですけど」
そこで私はラッチとパック夫妻の顔を交互に見る。
「ああ、そういえばラッチも病院でお世話に
なってましたっけ」
「ウチの子がお世話になっております」
ラッチはまだ変身出来ないし、健康管理も
彼ら任せだったなあと―――
改めてメルと一緒に感謝の気持ちを告げる。
「公都ではラッチちゃんしかいませんし、
そもそもここでは衛生・食料事情が良いので、
あまり出番はありませんけどね」
「あくまでも念のための確保ですので。
手伝いというか、護衛をして頂ければ。
わたくしたちは確かにたいていの敵なら
退ける事が出来ますが……
焼き尽くしてしまう可能性もあるので」
それを聞いて私とメルは、『あー』という
表情になる。
「今、ドラゴンの巣にいる子供たちの具合は」
「それは問題ありません。
先に氷魔法の使い手を派遣したのが良かった
ようです」
「今すぐどうこうなる容態の子供は
おりませんので、それは大丈夫かと」
パックさんとシャンタルさんの答えに安堵し、
ラッチの頭を撫でる。
義理の子ではあるが、こちらにもドラゴンの
子がいるので他人事ではない。
こうして私は薬草採取への協力を約束し、
昼食後、さっそくシャンタルさんの『乗客箱』で
飛び立つ事となった。
「意外と近いところにあるんですね」
「距離的にはそーだけど、こんな高いところ
フツーは無理だよ」
ドラゴンの姿になったシャンタルさんに運ばれ、
飛行して小一時間ほどの場所に私たちはいた。
到着した先はそこそこ大きな山。
標高にしておよそ四・五百メートルほどだろうか。
その頂上付近で、
私とメルの他、パック夫妻、それに採取の
人手として冒険者が五人ほど同行している。
「彼らには薬草の見分けがつくんですか?」
「いえ、私とシャンタルが群生地を見つけて、
そこから彼らに手伝ってもらいます」
なるほど。
それならどちらかというと力仕事だし、
問題無いだろう。
「では私たちは捜索して来ますので……
大体の場所は把握しておりますから、
それまで少しお待ちください」
「シンさん、メルさん。
みなさんの護衛をお願いします」
と、二人は私たちに同行した人たちの安全を
任せると、薄いモヤのようなものがかかった
山中へと入っていった。
「ねー、シン」
「何?」
トントン、とメルが私の肩をつつく。
「ちょっと遅くない?」
「……だね。
道に迷っているのかなあ」
小一時間ほど経過したが、一向に二人が
帰ってくる気配が無い。
周囲にも不安が広がっているようで、
それぞれが顔を見合わせる。
ただ、彼らが危険な目に遭っている事を
想像するのは難しい。
ドラゴンの妻に、さらにそれに影響・強化され、
落雷レベルの魔法まで使える夫。
幻影魔法でも使われたら話は別だが―――
シャンタルさんがドラゴンの姿になれば、
通常の武器や魔法では傷一つつかないだろう。
「それに、いざとなれば飛べば済む話……ん?」
私の言葉を実現するようにして、突然強風が
吹き荒れた。
思わず目をかばい、再び目を開けると、
「あ、シンさん!
という事はやっと戻って来れたのか」
「でも参りましたね、パック君。
時間もそれほど無いのに」
パック夫妻が現れ、その姿にみんな
胸をなでおろす。
「いったいどうしたんですか?」
私がたずねると、二人は周囲をぐるりと指で
並行に泳がせ、
「どうもこのモヤが原因のようです」
「多分コレ、幽霊霧だと思います。
コレのおかげで群生地は見つけたものの、
行動が制限されてしまって」
パックさん、シャンタルさんの説明に私は
首を傾げるが、
「あー、幽霊霧かあ。
ゴーストって言っているけど、生き物、
魔物の一種なのよ。
強いて言えば霧状のスライム?」
メルの言葉を聞いて思わず自分の口をふさぐ。
「大丈夫ですよ、幽霊霧は生き物は食べません」
「ただ迷わせて、行き倒れになった獲物を
ゆっくり消化するんです。
それも腐敗してからなので……」
つまり直接的な害は無いという事か。
「それで風魔法で霧を飛ばして来たんですか。
じゃあ、早く採集を―――」
私が促すと、夫婦は揃って頭痛を抑えるように
眉間を指で揉み、
「?? 群生地がまだ見つかっていないとか?」
メルが聞くと、二人は首を横に振る。
「見つけたのですが、どうもそこに近付くほど
幽霊霧が多くなっているようです」
「帰ってきた時のように、風魔法を使い続けて
いけば大丈夫ですが―――
同行している方が惑わされた場合、すぐに
気付いて動けるかどうか」
そうか、複数の行動になるものなあ。
人数が多ければそれだけ移動する列は伸びるし、
範囲も広がる。
そんな中、一人幽霊霧で迷ったりしたら……
気付くのが遅ければそのまま、なんて事態も
あり得るわけで。
「四方八方の風魔法で散らしていけば、
そんな心配はありませんが」
「時間が……
今日は諦めて明日にでも―――
でもそうなると、ドラゴンの巣から
アルテリーゼが帰ってきて交代に
なっちゃいますから」
ドラゴンの巣の拠点作りは、彼女とアルテリーゼが
交互に協力して支援している。
事情を話せば融通は利かせてくれるだろうけど、
ドラゴンの子供専用の薬もまた優先事項だ。
出来れば予定通りに済ませたいに違いない。
私は髪をポリポリとかいて、
「じゃあ、私の出番でしょう。
群生地まで案内してくれませんか。
一行の前後を固める感じで」
そこでパックさん、シャンタルさんは
私の意図を察したのか―――
すぐに言葉通りにしてくれた。
「間もなく群生地です」
「薬草はわかりやすいので、それだけ
お願いします」
乗客箱の見張りにメルを残し、パックさんと
私を先頭に、五名の手伝いの人が続き―――
最後尾をシャンタルさんに挟まれるようにして
歩く。
「! シンさん」
「わかりました」
パックさんが風魔法で吹き飛ばしたにも
関わらず、また元の位置に戻ろうとする
煙のようなモヤがあった。
見ると、確かに生物的な動きをしている。
風に逆らい、空気の流れにも従わず、まるで
水中の魚群のように方向を決めて進む。
……確かに、気体とまでは言わないが、
それに近い目に見えないほどの生物は
地球にも存在する。
菌やウイルスといったものがそれだ。
ただ彼らは繁殖はするが、空気中を自在に
動く事はない。
またこれだけ広範囲に渡って意思統一するものや、
巨大なガス状のものも存在しない。
「霧やモヤのようになり、さらに自在に
大気中を移動する―――
そのような生き物など、
・・・・・
あり得ない」
そう私がつぶやくと、目の前にいた幽霊霧で
あろう魔物は一瞬動きを止めると、風の余波に
さらわれるようにして流れて行く。
これが私が立てた作戦。
先頭のパックさんに、風魔法で常に先方の
モヤを吹き飛ばしてもらい、
それでも残るモヤを幽霊霧と認定。
次に私の能力で無効化させる、というもの。
これで少なくとも立ちはだかる幽霊霧は
排除出来るし、最後尾はシャンタルさんが
担当しているので、異常があれば即座に
パックさんに声をかけてもらう事で対応する。
こうして私たちは、群生地までの道のりを
スムーズに進んでいった。
「あー!
やっと戻って来た!」
『乗客箱』まで戻って来た時には、すっかり
日も傾きかけていて、待機していたメルが
大声を上げて出迎える。
「すいません、採れると思ったらつい」
「すぐ出発します!
みなさん、早く乗り込んでください!」
パック夫妻が荷物を置くと、同行していた
人たちが荷物ごと『乗客箱』に乗り込んでいく。
「すまない。
待たせたな、メル」
「もー、ラッチも児童預かり所で待ってるから、
ホラ早く早く!」
そう言うと彼女は他の人の荷物も手伝い、
薬草をどんどん運んでいく。
身体強化が基本魔法だからか……
山のように採取された薬草はそれぞれ束ねられ、
採取的に『乗客箱』の半分ほどのペースを
占領した。
「でもずいぶんと確保出来たんだね、
シャーちゃん?」
メルがすでにドラゴンの姿になったシャンタルに
声をかけると、
「人手があると思ってつい……
ですがこれだけあれば、あと4・5年は
大丈夫でしょう」
量があるに越した事はない。
とにかく目的が達成出来た事に、ホッと
胸をなでおろす。
「しかし、今後も必要になると考えると、
公都で栽培とか出来ないんでしょうか」
「生息条件がハッキリしないので……
ゆっくり研究出来たらいいんですけど」
私とパックさんが話し合っていると、
「そこー!!
のんびりしてないで早く乗って!!」
「さすがにこれ以上はギリギリですね。
飛ばしますよ、パック君」
お互いの妻に注意され、私とパックさんは
慌てて最後の荷物をつかんで、『乗客箱』へと
乗り込んだ。






