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「オメーらはここに残れ。 問答してる間は無えぞ?」
大社の神職たちに、正式に助力を請われた史さんが、こちらを見ながら口早に言った。
近くでは、身の丈に不釣り合いな矛を携えたふゆさんが、袂の処理に掛かっている。
言われずとも、こちらの分は弁えているつもりだ。
私たちには、彼らのような力がない。 同行したところで、お荷物にしかならないだろう。
「この子たちも連れてきますよ」
そこに、思わぬ嘴が入った。 ほのっちだ。
何を言い出すのかと思ったが、彼女なりに気を遣ってくれたのかも知れない。
最初はそう思った。
「昨夜、きっちり根性見せてもらいましたから」
これについては、完全に買いかぶりだ。
少なくとも、私は夜の学校で何も出来なかったし、悪くすれば、幼なじみにまたしてもあらぬトラウマを植えつけてしまうところだった。
「私たち、お友達ですよね?」
「え?」
上目遣いで妙なことを言う。
答えは決まっているが、なぜ今? そもそも時間がないのではなかったか。
「友達なら、どんな時でも一緒にいなきゃ」
これまた可笑しなことを言う。
常々、彼女はこういう性格ではなかった筈だ。
なにか魂胆──、いや。友達の魂胆を探るのも嫌な気分だが、どうしても不審を拭えない。
「……………」
助言を求める心持ちで幼なじみに目を向けたところ、一名は安易にコクリと首肯、もう一名は彼女らしからぬ小難しい表情を浮かべていた。
「一緒に来てくれませんか?」
「ん………」
たしかに、乗りかかった船ではある。
そこに自分ができる事・できない事を持ち出すのは如何なものか。
そんな風に尤もらしく唱える私がいる反面、同行したところで、やはり邪魔にしかならないんじゃないかと、弱腰をさらす私もいるわけで。
「……分かった。 ついてくよ」
片手をそっと掴んだ幼なじみの振る舞いが、最後の一押しとなった。
いやもしかすると、これは良いように解釈しただけかも知れない。
“私たちもついてくよ”
そうではなく、
“行かないで”
この幼なじみの手はまさしく、私を掴み止めるための手だったのかも知れない。
「仲間外れ、嫌(や)ですもんね………」
「うん……。 そう、だね」
今にして思う。
これは、友人による一つの試験だったのだと。
この頃の彼女も、きっと迷っていたのだと思う。
これ以上、私たちを自分たちの側へ引き込んで良いものか。
それを測るため、この一件をお誂え向きに利用したと。
水臭い話だと思うし、“そこまでしなくても”という甘い考えを、その頃の私はたしかに持ち合わせていたのだと思う。
ゆえに、彼女は一計を案じた。
根が真面目な彼女らしいと言えば、まさしくその通りかも知れない。
ただ、手加減はして欲しかった。
“アレ”の正体について、言及を避けたにも関わらず、それが実際に待ち受ける場所へと、私たちを連れ出そうとする矛盾。
会うのは良いが、識ってはいけない。
その意味を、私は身を以て体験することになる。