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#年の差
水無月 京
836
鷹槻れん

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鷹槻れん

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#強引
昴はふと羽衣子へ視線を向ける。
「もう一度、温泉に入ってきたらどうだ?」
「……あの」
その問いかけに羽衣子は答えようとして口を閉じる。
何か言いたいことがあるようなのだが、なかなかそれを口にしない。
「……どうした?」
「……その……」
そんな中、もう一度問いかけられた羽衣子は意を決して顔を上げた。
「……あの、温泉…………一緒に……入りたい、です」
「…………」
羽衣子の言葉に、昴の動きが止まる。
羽衣子の方から誘われるとは思っていなかったのだろう。
目を見開き、明らかに面を食らったような表情を浮かべている。
その反応を見た羽衣子はますます恥ずかしくなったのか俯きつつ、
「……駄目、ですか?」
返事だけを待った。
「……駄目、なわけはないが…………本当に良いのか?」
念を押すように昴が尋ねると、羽衣子は俯いたまま小さく頷いた。
「……昴さんとだから……入りたい、です」
その言葉に昴は一瞬だけ目を見開くと、その思いを汲むように頷く。
「分かった。それじゃあ入るか……それで、どうする? 羽衣子が先に入るか? それとも、俺が先に入っていた方がいいか?」
「えっと…………」
突然問われ羽衣子は困ったように考え込んだ。
どちらを選んだところで恥ずかしいことには変わりないけれど、自分が後から入るとなれば、先に温泉に浸かっている昴を意識してしまい、今以上に緊張してしまいそうだと思った羽衣子は悩んだ末、
「さ、先に……入ります……」
自分が先に入ることを告げる。
「分かった。それじゃあ、少ししたら俺も入るから」
「はい……」
こうして二人は一緒に温泉へ入ることになり、羽衣子が準備を整える為に先に脱衣所へ向かう。
一人になり、浴衣に手をかける。
(とんでもないこと、言っちゃった……)
自分から一緒に入りたいと言い出したのだから今さら後悔するわけにはいかない。
そう思っているのに心臓はドクドクと大きな音を立てている。
(……自分から言い出したことだけど……やっぱり恥ずかしい……)
浴衣と下着を脱いだ羽衣子は早く温泉へ入ってしまおうと手早くタオルを手に取ると、深呼吸を一つしてから露天風呂へ向かった。
一方昴もまた、羽衣子の前では比較的平静を装っていたものの一人になった途端表情を硬くしていた。
(……まさか羽衣子が言ってくるとはな……)
正直に言えば昴としても一緒に温泉へ入れたら嬉しいと思っていた。
けれど羽衣子の性格を考えれば恥ずかしがって嫌がるだろうとも思っていたからこそ、無理に誘うつもりはなかった。
それがまさか羽衣子の方から一緒に入りたいと言いだしたのだ。
(……嬉しい、けど……)
柄にもなく緊張していることに気づいた昴は苦笑しつつ時計に目を向ける。
「……そろそろ、いいか……」
そう呟いた昴も脱衣場へ入り準備をすると、先に温泉に浸かる羽衣子の元へ向かって歩き出した。
羽衣子は背を向けたまま肩まで湯に浸かっていた。
緊張してはいるものの温泉の心地よい温かさに少しずつ身体の力が抜けていたその時、扉の開く音がして反射的に顔を向けた羽衣子は思わず息を呑んだ。
「……っ」
上半身には何も身につけておらず、腰には一枚のタオルだけを巻いている昴がゆっくりと歩いてくる。
その姿をまともに見ていられなくなった羽衣子は慌てて顔を背けてしまう。
そんな羽衣子をよそに、昴は無言のまま湯船の縁まで来るとタオルを外してそのまま静かに湯へ入った。
湯が静かに揺れる音とともに昴が近づいてくる気配を感じて羽衣子の鼓動がドキドキと音を立てる。
「夜風に当たりながらの風呂は、気持ちがいいな」
「そ、そうですね……。すごく、気持ちがいいです」
昴の言葉に平静を装って答えたもののその声はわずかに震えていて、そんな羽衣子を気遣いつつも昴は更に距離を縮めていくと、
「……っ!」
後ろから腕を伸ばしていき、羽衣子の身体を抱きしめた。
突然の行動に驚いた羽衣子だけど抵抗することも無く、そのまま昴の腕の中にすっぽりと収まった。
「……あ、あの……」
「何だ?」
「……い、いえ……、何でもない、です……」
背中越しに伝わる体温に羽衣子の頬は赤く熱くなる。
湯の中とはいえ、何も身につけていない状態でこうして密着しているこの状況下でどうしていいのか分からない羽衣子の頭の中は混乱していた。
「緊張してるか?」
「……しますよ。昴さんは……余裕そう、ですよね」
「そんなことねぇよ」
「え?」
「こんなこと、経験がないからな……」
「え?」
「正直どうすればいいのか分からねぇ。普段風呂なんて希海としか入らねぇんだから」
「……そう、ですよね……」
その言葉に羽衣子の中にあった緊張は少しだけ解けた気がした。
自分だけが緊張している訳じゃないんだと分かったからなのか、不思議と心が落ち着いていたのだ。
再び沈黙が訪れ、夜風が二人の間を静かに通り抜けていく中、
「羽衣子」
名前を呼ばれて振り返った羽衣子と昴の視線が重なり、恥ずかしさから再び視線を逸らそうとしていた羽衣子の頬に触れた昴はそのまま顎に手を添える。
「……昴、さん……?」
軽く持ち上げられた羽衣子の顔が自然と上を向くと、答える代わりに昴はゆっくりと顔を近づけていき、
「……っ」
二人の唇が静かに重なった。
「……っん……、はぁ……」
初めは触れるだけの口付けだったけれど徐々に深いものへと変わっていき、何も身に纏わない互いの存在を意識するたび平静を保つことが難しくなっていく。
もう一度重なった唇は先程よりも長く深い。
羽衣子が伏せた睫毛を震わせると、その艶めいた表情を目にした瞬間、昴の中にあった理性が音を立てて崩れていく。
コメント
1件
わあ、もう96話!このエピソード、羽衣子が自分から「一緒に入りたい」って言い出すのがすごい勇気だなと思った。昴もまさかそんなこと言われると思ってなかったんだろうな、ちょっと慌ててる感じが可愛い。温泉での密着シーン、お互い緊張してるのに自然に距離が縮まるところがすごく良かった。昴が「こんなこと経験ない」って素直に言うのもグッときたよ。ラストのキス、情緒がたっぷりでじーんとした…。続きが気になる! 🔥