翌日も、日本語の使えるタクシーの質問が出た。今日は親子四人組だ。「知り合いの業者がいますよ。観光案内もしてくれます」と健太は答えた。
連絡を入れてからも、森さんはなかなか現れない。
ハーバーのアパートからこのホテルまで、フリーウェイを使えばものの十分だというのに、もう三十分経っている。健太は広間を数度行ったり来たりしたのち、表の車道に出た。
ムスタング、アコード、オールズモービル、カムリ、ファイヤーバード、セントラ、レクサス、メルセデス、カローラ……千三百CCのスズキは一向に現れない。電話を入れても通じない。
健太が車道をホテルに向かって歩いたそのときだった。森さんがお客を引き連れて、ロビーを出てきたのだった。
「お待たせして申し訳ございません。車の手配に少々の時間がかかりまして」
森さんは、スズキではなく、大きな赤のポンティアック・ファイアーバード……五千七百CCの大きなエンジンを積むツードアで、異様に膨らんだボンネットには黒と赤と黄色の大きな火の鳥が描かれ、さらにエア・インテークが飛び出ている……の前でドアを開けた。
「どうぞお乗り下さい」健太はお客に背後から声をかけた。
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