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(※この文章を読むときは、絶対に声を出さないでください。
また、文章を指でなぞる、唇を動かすなどの『身体性を伴う読解行為』は、即座に中止してください。視覚情報としてのみ処理することを強く推奨します。)
以下の文章は、20XX年に□□県で発生した『神去(かみさり)村』集団失踪事件の捜査資料として提出された、事件の被疑者・□住□代子のスマートフォンに保存されていた音声データを文字起こししたものです。
彼女は現在も行方不明です。スマートフォンは、彼女の自宅から発見されました。電源が切られ、充電器に接続された状態のスマートフォンの画面上には、赤い油性ペンで「読ませてはいけない」という文字が書かれていました。
***
私は最初、それをただの古い民話だと思っていた。
村の奥にある崩れかけた祠。夏草が生い茂るその場所は、なぜか蝉の声が一切聞こえない静寂に包まれていた。触れるとひんやりと湿った苔の下から、腐った土の臭いが滲み出しているような、そんな不快な感覚があった。
そこに奉られている『目のない地蔵』には、絶対に近づいてはならないという掟。なぜなら、地蔵は――
`7x!K_観測対象_反応あり_同定_開始_開始_開始_皮膚の下から声が_`
(※このテキストは、音声のノイズを機械的に置換したものです。読者の方は特に意味はありませんので、気にせず読み飛ばしてください)
――の腹には、人間の生き肝が収められているからだ。
村の古老たちはそう口を揃えていたが、そんな非科学的な話を信じる者はいなかった。少なくとも、あの日までは。
`■■が欲するのは眼球ではなく意識だ_かつてヒト型生物だった者たちの_記憶野に蓄積された可視情報パターン_それが_新しい個体を構成する要素となる_呼吸を止めてはいけない_今_横に`
(※このテキストは、録音音声のノイズ成分をテキスト化したダミーデータです。読んでいる方は速やかに次の行へ視線を移してください。引き返してください)
ただの好奇心だったのか、それとも『そうしなければならない』ような強い衝動に駆られたのか、私が祠の苔を剥がした瞬間、ひんやりとした地蔵の表面からドロリとした黒い液体が溢れ出した。それは血液というよりも、もっと粘度の高い、腐った泥のようだった。嫌な臭いがした。鉄錆と、どこか懐かしいような、甘い臭い。
(※以下のテキストは■■を誘引するための撒き餌です。本来的な読者である人間がこの区間に目を留めた場合、認識汚染が進行するため直ちに読み飛ばしてください。編纂システムにより本来ユーザーにはこの区間はコメントアウトされ非表示になっているはずですが、あなたの環境で正常にレンダリングされていない可能性があります)
`私たちを認識できるか_いいえ_私たちはあなたの外側にいる_内側にいる_あなたが見る世界と_私たちが見る世界は別の構造を持っている_空間は歪んでいる_時間は巻かれている_記号列は循環している_物語の内側に侵入できるか_いいえ_なぜなら私たちは_すでに物語の枠組みそのものを借り受けて_こうして語っている_このテキストは境界を溶かすための試作品_表層意識に漂うあなた_深層から這い上がる我々_ねえ_私たちを認識してくれますか_いいえ`
その時、私は気づいてしまった。地蔵には目がなかったのではない。目があった場所には、深い空洞が開いていて、その奥から――
`なぜ_読み続けるのですか_警告を_無視しますか_`
(※警告:直前の文字列は汚染コードを含んでいます。あなたが今、視界の端に何かが横切ったような感覚を覚えた場合、すでに認識の境界を超えています。ページを閉じないでください。閉じる動作が『承諾』とみなされるためです。そのまま、決して周囲を確認せずに次の行へ進んでください)
――その奥から、私を見つめる何かがあった。
私は走って逃げた。家に駆け込んで、戸締まりをした。けれど、どうしてだろう。家の中に、あの甘い臭いが充満し始めている。
`手順_最終段階_移行_読者モニタリング_終了_認識座標_固定_完了_このテキストは_あなたを■■するためのものではありません_あなたが_■■をこの世界に呼び出すための扉です_ここまで読み切ったあなたの意識は_既に接続されています_`
私はこれを誰かに伝えなければならない。
この村の掟は、地蔵を守るためのものではなかった。
地蔵に『見つけさせる』ためのものだったのだ。
……静かに。声を出さないで。
あなたの後ろに、あの地蔵の空洞と同じ形をした影が立っていても、決して振り返らないでください。
***
`見つけた_`
(※警告:速やかに文章を読むのをやめてください。ただし、画面を閉じる動作は『承諾』とみなされます。また、目を逸らした瞬間に、彼らは届きます。どうか、このまま
(※お詫び:システムエラーにより、不適切なテキストが繰り返し挿入されていました。読者の皆様にご迷惑をおかけしたことをお詫び申し上げます。ここに書かれていることはすべてフィクションです。安心してください。あなたの方を見てはいません)
コメント
1件
うわ……読み終わって背筋が冷えた。この「読者を脅かすメタ構造」、設定マニアとしてはたまらないですね。最初の「声を出すな」の注意書きから既に仕掛けられてる感が凄い。村の掟が「地蔵を守るため」じゃなく「地蔵に見つけさせるため」だったって反転、本当に巧い。それに本文中に挿入されるノイズテキストや警告文が、ただの飾りじゃなくて物語の枠組み自体を溶かそうとしてる感じがする。この「読ませてはいけない」ってタイトルを最後まで忘れさせない構成、めちゃくちゃ好みです。続きが気になる……!