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星月 ひい/底P
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沙彩
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コメント
1件
ああ……もう、胸がぎゅってなったよ……。 「さむい」って言葉が、途中まではただの寒さだと思って読んでたのに、最後の「独りの方が、寒いから」で全部の意味が変わった。そういうことだったんだね。 ホットミルクを淹れてくれる人がいるからこそ、暖房をつけたくないっていう、その不器用な理由が切なくて愛しいよ。大切な人を失うのが怖くて、ちょっとした“甘え”を大事にしてる感じがすごく伝わってきた。 幼い頃の孤独や暴力の記憶が、今の優しさとかわいさの裏にあるのが、重くて、でもちゃんと向き合いたくなるお話だったよ。また続きが読みたいな……。
さむいのさむいの、とんでいけ。
──────────
さむい、さむい。
いつもなら、みんながいたら。
ずっと、いっしょにあったまれたのに。
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※ 注意書き ※
必ず読んだ上で、お進み下さい。
・このお話は全てフィクションです
・腐的に書いたつもりはないですが、これどうなの?といった表現があったら、コメントでこっそり教えてください
・添削は重ね重ねしておりますが、所々おかしい部分があるかもしれません。ご了承ください。
・似た作品があるかもしれませんが、一切パクリではありません。
・残酷的な表現、または読んでいてショックな表現があります。苦手な人はお戻りください
・関係の無い活動者の名前を出すのはおやめ下さい
・コメントでは必ず伏字をしてください
・上記を確認した上で、読むか読まないかご自分でご判断を。
『どれだけ寒くても、絶対に自室に暖房をつけないと言う煽り手の話。』
main 煽り手、書記長
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凍える寒さで目を覚ます、午前2時。
寝る前はあんなに毛布を首元まであげて寝ていたのに、寒さで目が覚めてしまった。
心なしか、足先が冷たい。
目元が少し濡れていて、
こめかみに向かって湿っていた。
浮かない 気分になりながら、 未だ起きて仕事をしているであろう彼の元へ向かった。
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執務室の扉の前をノックする。
入室許可が出たため、 寝ぼけ眼を擦りながら中に入った。
「シャオさん」
起きてもうたんか?と扉の前の自身に問う。
「ああ、確かに今日は寒いもんな」
その言葉に、同意を示す。
寒いのは、嫌いだ。
でも、それ以上に嫌いなのは──
「飲みもの入れよか」
そう言い、 万年筆を置いて席を立つ紅赤色の彼。
重いまぶたを開かず、自分の部屋かのように、 執務室のソファへ腰をかける。
今にも、眠ってしまいたかった。
けれど、寒さで眠れない。
ぽ つりと一言呟いた。
「さむい」
すると、ホットミルクを作っている途中の 紅赤色の彼が近づいて、彼と同じ色の マフラーを首にかけてくれた。
それはとても、暖かくて。
さらにまぶたが重くなってきたところで、 「シャオさん」と呼ばれた。
眠気に抗い目を開けると、
湯気をゆらゆらとさせながら、
紅赤色の彼から、 美味しそうなホットミルクを差し出された。
それを口に含むと、ふわっと温かさを感じ、 それと同時に甘い香りと味が広がった。
飲みなれているけれど、飲み飽きないホットミルクは 淡黄色の彼の好物のひとつである。
思わずんふ、と笑みをこぼす。
「…おいしいわ」
「それはどうも」
いつも通りの言葉。
変わらない、温かさ。
それを感じてしまえば尚更、 あんな日には戻りたくなくて、眉を顰める。
「なぁ、やっぱり暖房つけてもらわんか?このままやったらシャオさんも寝れへんやろ」
最近になってまた増えてきたこの言葉。
たしかに最近、寒さが酷い。
自分を心配してくれているのは、 充分わかっている。
けれど、淡黄色の彼は頑なに拒否し続けた。
それは、今回も同じであった。
「いやだ」
「うーん、そうかぁ…」
毎度、これの繰り返し。
だけども、今回は少し違った。
「なんでそんなつけたないん?」
紅赤色の彼の、純粋な疑問。
どれだけ考えても、 結論を出せなかったのだろう。
何せ、淡黄色の彼はこの軍の中では 結構な寒がりなのである。
その事実は、 ほかの幹部たちも周知の事実だろう。
だとしたら何故、
彼は暖房をつけたがらないのか。
幹部たちは、議論していた。
その中で出された説は、 「暖房嫌い説」や、「実は寒くない説」など、 滅茶苦茶な説だった。
もちろん、暖房が嫌いと聞いたわけでも、 寒がっているのは演技だなんて、 デタラメでしかない。
だって、暖房がついている部屋に猫のように寄っていく。
寒がっているのは みなが知っている事実である。
そのためこのことに、多くの者が頭を抱えて悩んでいた。
何せ彼は寒さで、よく風邪をひいてしまう。
なのに、 どうして暖房をつけさせてくれないのか。
理由があるのだろうか、と。
それで、 紅赤色の彼が疑問を投げかけてみたのである。
その問いかけに、淡黄色は目を開け何も返さなかった。
「なんでそんなつけたないん?」
そんな、素朴な疑問だった。
この際、話してしまおうか。
目の前の男からの問いかけで、 鮮明になってしまった頭で、 淡黄色は古い記憶を掘り返した。
なんで、なんで…。
───────
さむい、さむい。
雪が降るなか、彷徨い続ける。
ザクザク、ザクザクと雪を踏みしめて。
周囲の家の中から楽しそうな声や、 愉快な音楽が不愉快なほど鼓膜に絡まる。
さむい。
ただそれだけの思考が頭の中を支配していた。
ああ、なんで殺されてしまったのだろう。
なんであの子たちは、 死ななければならなかったのだろう。
短い人生の中で、 初めて見つけた家族のようなもの。
暖かくて、楽しくて、面白くて。
所詮は紛いもので、子どもだけだったけれど、 その子ども達と共に過ごした日々は、 どんなに寒くても、凍らない記憶で。
物心がついた頃、 淡黄色の彼には親がいなかった。
ボロボロの服を着て、 それはそれは汚れた路地で、 毎日を過ごしていた。
そんな場所だから、 似たような境遇の子どもは少なくはなかった。
だから、淡黄色の彼は子どもで身を寄せあって 温まろうと、みんなに提案した。
それを聞いた子ども達には、
柔らかな、暖かい笑顔が浮かんでいた。
それから数年、彼らは少し成長した。
皆で協力して、毎日命を繋いできた。
そんな彼らには、確かな絆があった。
確かな、確かな絆が。
子どもの集まりだ。
性格も何もかも違う。
けれど、 無知というのはどの子どもも同じだった。
何も知らない、何も知ることができない、 それはそれは、哀れな子どもたち。
淡黄色の彼、シャオロンが 食べ物探しから帰る時、
鼻につく臭いが漂った。
鉄っぽい、腐敗したような臭い。
気持ち悪さまで感じるものだった。
嫌な予感がして、 自分たちが住処にしている場所へ走った。
走った先には、真っ赤なそれらがあって。
息をしていない、大好きな家族が、仲間たちがいて、 それで、それで。
シャオロンの感情が目の前の出来事で 掻き回された。
思考もまとまらず、ただ感情に支配された。
なんで、どうして、だれが、と。
ただ数多の疑問だけが思考を埋める。
死体に手を合わせることもできず、走り出した。
寒い地面を踏みしめて。
やがて走り疲れ、シャオロンはうつらうつらと歩きだした。
行く宛てもなく、どこまでも。
手足がかじかんで動かなくなるほどの寒さの中、 何も分からず、知ることもできず。
大好きなものを失った。
喪失感からシャオロンは、 現場からいくつか離れた路地の入口の壁にもたれて蹲った。
そんな時、雪が降ってきた。
白い塊がゆらゆら、ふわふわと。
鬱陶しく感じるほどに、ゆっくりと。
シャオロンに見せつけるように、楽しそうに。
なのに、シャオロンの体に落ちると、 一瞬で溶けてしまう。
その様子には儚いという言葉が似合うだろうか。
目を背けるために己の膝に顔を埋めると、 突然、上から声をかけられた。
「どうしたんだい?そこの君」
顔を上げれば、図体の良い男が立っていた。
人あたりの良さそうな気色悪い笑みを、ケタケタと。
その男の手には、真っ赤な刃物。
本能で理解した。
否、理解を拒むことはできなかった。
「おや、
もしかしてあそこのガキの生き残りかぁ?」
突然、 男の笑顔だった顔が一気に鬼の形相になる。
そんな男にシャオロンは動けなくなった。
『あそこのガキ』とは、 おそらく先程見た大好きな仲間たち。
ああ、この男が。
「それならじゃあ、殺さないとなあ」
逃げなければならないと分かっていても、足が動かない。
体が動かない。
動けぬ理由は寒さ故か、底知れぬ怖さ故か。
目の前の男から逃げることができず、 ただ呆然と立ち尽くしていると 髪を乱雑に捕まれ腹を拳で殴られる。
息と共に唾が出る。
その腹の痛みに耐えきれず、蹲る。
顔を歪ませたシャオロンなんざお構い無しに、 男はシャオロンを痛めつけ続ける。
頭を抱えて、耐え続けた。
歪んでいく視界に、気持ち悪さを覚えながら、 殴られ続け、蹴られ続け──
ピタリ。攻撃が止まった。
恐る恐る顔を上げると、
「他のガキはわんわん喚いてたのに、なんだお前、面白くねぇなぁ。」
そう言われた。
途端、男は刃物を高々と上げ、 シャオロンを目掛けて振り下ろそうとした。
殺される、という恐怖に駆られシャオロンは、 腕で体を守り、目を瞑った。
──いつまで経っても、痛みがこない。
驚いたシャオロンは、 腕の隙間から上を見上げた。
目の前の男が死んでいたのである。
首と胴体が、泣き別れになって。
驚いて目を見開くと、真っ赤なマフラーが目に入った。
そちらに目を見やると、真っ赤な血が付いた、 水色の大きな大きな剣。
寒さと痛みで滲む視界で、姿ははっきり見えなかったけれど、 とても格好良かった。
立ち去る目の前のマフラーの人間を、 シャオロンは無理やり止めた。
マフラーを、弱々しい力で引っ張って。
すると、マフラーをつけた人間…
マフラーをつけた男は、こちらを向いてしゃがんだ。
「大丈夫か?」
そんな問いかけ。
シャオロンに大丈夫だなんて、言えるはずもなく、 涙を零し震えながら言った。
『さむい』と。
数秒して、目の前の男がマフラーを取って、 淡黄色の子どもの首に巻いた。
大人用であろうそれは、やせた子どもには大きすぎた。
シャオロンは、そのマフラーに顔をうずめ、 頬を濡らした。
頬を濡らすそれは雪なのか、それとも。
浮遊感を感じたシャオロンは、マフラーの男に抱えられたと悟った。
大人しく、男の体に体を預けた。
──────────
目を覚ますと、シャオロンは、トントンに暖かい風呂に入れられ、 暖かい服を着せられた。
ふかふかで、生地の厚い暖かい服。
暖かい食事ももらった。
体の芯から温まって、食事を食べなれてなくても、食べやすかった。
でも、少し死んでしまったみんなに、申し訳なくて、 罪悪感を感じていた。
自分ひとり生きていること。
自分だけ暖かいものをもらっていること。
寒さに凍えながら死んでしまったみんなに。
そんなことを考えているうち、次第に眠気に襲われていくが、 まだ、寒くて眠れない。
心細くて、どうしようもなく不安で。
どうしようもなく、寂しくて申し訳なくて。
そんなシャオロンに、 トントンは暖かいホットミルクを淹れる。
甘くて温かい、優しい味のホットミルク。
──────────
トントンの淹れるホットミルクが飲みたい。
だから、暖房をつけたくない。
こんな理由は幼稚だろうか。
わがままだろうか。
けれど、どんなに暖房が暖かくても、心細いのだ。
ひとりでいるのが、嫌なのだ。
寒さよりも、大切な人が居なくなってしまうのが、 どんなことよりも怖い。
ひとりになるのがこの上ないほど寂しい。
ベッドでひとり、涙を零してしまうほど。
でも、そんなことは言えない。
だから、
「寒くなったら、ここに来る」
どうして?という質問の答えとは程遠い返事。
寒くなるというのは、 根本的解決には至っていない。
けれど暖房をつける気がないと察したのか、
紅赤色の彼は呆れたように半ば諦めたようにため息をつく。
けれど表情は心なしか、笑顔である。
「答えになってへんけど」
冗談混じりにそう吐いた。
それを聞いて、淡黄色はんふ、と笑い声をこぼす。
あと少し、できればこの心がもっと温まるまでは、 このままが良いと思ってしまうのは、わがままではないだろう。
だって、どれだけ冷たい部屋でも、やっぱり
────独りの方が、寒いから。
寒いのがなくなる魔法がここにあるんだもの。
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あとがき
お久しぶりです。さて、本日は立冬、冬の寒さが本格的になるでしょう。皆様の心と体が凍えないよう、暖かくしてお過ごしください。
ご完読ありがとうございました。
2026.11.7.