テラーノベル
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午前7時。いつも通りインターフォンが鳴る。
またあいつかよ…
不登校の俺を懲りもせず毎日迎えに来る。
「元貴!学校いこーぜ!」
俺はまだベットの中。まわらない頭で答える。
「お前…部屋まで勝手に入ってくんなよ…」
「お母さんが入っていいって」
懲りもせず毎朝俺を迎えに来る同級生の若井。
中一から学校に行かなくなって三年、俺の何がそんなに気に入ったのか。
俺の作る音楽が好きだと言った。
一緒にバンドを組みたいと言われた。
だが俺は断り続けている。
男でも女でも誰かに追われるのは苦手な性分だ。
「行かないよ。作りたい曲があんの」
「じゃあ俺も休むわ」
「お前は健全な青春を送れよ…」
若井のことは嫌いではなかった。
友達を作るのが苦手な俺でも少し気を許せていた。
しかし本当の俺を知ったらどうだろう?
「健全」なお前は離れていくんじゃないか。
「お前ほんと懲りないね」
俺は呆れるのとほんの少しの嬉しさで言う。
「お前と一緒に音楽やれるまでは諦めないで通うよ」
「受験勉強始まるだろ。俺にかまってないであと少しの青春を謳歌しろよ、他のお友達と」
「お前より大切な友達なんていないよ」
「彼女かよ…」
そう、若井は怖いほどに俺に心酔していた。
時々逃げ出したいほどに。
だが若井の瞳が決して俺を逃さない。
仲良くなればなるほど俺は不安になった。
お前もどうせいつか俺を裏切るんだろう?
「若井、俺の過去の話聞きたい?」
「過去?大げさだな…俺たちまだ14歳だぜ」
「俺が何で毎日曲を作り続けているかわかる?」
「音楽が好きなんだろ?」
「それもあるけど、もっと根本的な…」
若井は俺の目ををまっすぐ見つめながら、さっぱりわからないという表情をした。
「若井、お前に俺の初恋の話してないよな」
「何!?聞かせてくれるの?元貴、恋愛の話とか乗ってこないから嫌いなのかと思ってた!」
無邪気だな…と思いつつも俺は話し始めた。
「俺の初恋は小6の時…」
若井が楽しそうな顔で聞いている。
この笑顔も数秒後には歪むだろう。
「同級生の…仲の良い男友達だった…」
俺は若井の顔を見れなかった。
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