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「では、此の方らが行ったことは事実だと言うことか…」
皇都の門を潜った俺達は、援軍として訪れた二国と皇国軍の階級が高い人達と一緒にパレードをしながら、城へと辿り着いていた。
車は俺たちしか運転できないので、城の前でみんなを下ろした後に俺だけで馬車置き場に車を駐車しに行った。
そして、二国のトップ階級の人達と共に城の中へと入っていった。
城自体もこの世界の王都であれば、どこにでもある尖塔が付いている城だ。
まぁ西洋のお城だな。
謁見室というか、玉座の間みたいなところに案内された後、皇国のお偉いさん達が質問してきた事にみんなで答えたら、皇帝からのお言葉が先ほどのモノだった。
「はい。セイ殿は二国の王族からの手紙を預かっています」
そう言われたので俺は手紙を二通取り出し、従者らしき人に渡した。
従者はそのまま宰相と思われる人に手紙を渡した。
「間違いありません。両国の文です」
宰相は手紙の封蝋を確認してから皇帝に渡した。
「ふむ…」
皇帝は読み終わると、こちらへ質問してきた。
「ここに書かれていることは誠か?」
「はい。エンガード王国はどちらの王族が出られるかは不明ですが、ナターリア国王は自ら出席なさると」
それに聖奈さんが答えた。
よく何について質問してるかわかるな……
「わかった。今日にでも戦勝パーティを開こうかと思っていたが、話が変わった。
ナターリア軍、エンガード軍両方を丁重に持てなせ。
アルカナの探求者はついて参れ。
以上だ」
皇帝は理解しているが、他の貴族達は動揺している。
しかしここは君主制だ。
皆直ぐに表情を戻し、皇帝へと最敬礼した。
謁見の間を後にした俺達は、皇帝の後に付いて行き、一つの部屋へ案内された。
部屋は豪華ではあるが、流石にナターリアのお城の部屋ほどセンスは良くなく、調度品が数点あるだけだった。
高いんだろうけど…いらんな。
部屋に似つかわしくないソファへ座るように促され、みんなで並んで着席した。
六人掛けのソファって…キャバクラか?
行ったことないけど。
「早速だが…転移できると言うのは本当か?」
皇帝は聖奈さんを見て話し始めた。
どうやらリーダーだと思われているようだな。
さすが皇族…お目が高い!
「本当です。先程は配慮して頂きありがとうございます」
「当たり前だ。そんな事が出来るとバレたら、あの狡猾な貴族共が何かするのは目に見えているからな」
自国の貴族なのに凄い言い方だな。
パンピーには理解が及ばないこととか、色々あるんでしょうね……
つーか、手紙には転移のことが書かれていたんだな。
「はい。この度、両国軍を伴って来たのもその為です。ナターリア軍は最終戦には間に合いませんでしたが。
ですので、来賓の際は皇都の外で待つ、両国軍の所で転移します」
そりゃ王様だけ来たら事情を知らない貴族はビックリするよな……
その為にも両国軍をここへ来させたのか……
数万の軍勢なら国王が来ても、増えたかどうかなんてわからんもんな。
まぁ国境の警備がしっかりしていたらどこから来たんだ!ってなるけど、今は両国軍が自由に出入り出来るからそれも問題ないな。
「承知した。ナターリア王の手紙に書いてあったが…珍しい酒があると…」
歯切れ悪く皇帝が聞いてきた。
カイザー様は何を書いてんだよ……
「ありますよ。これなんかどうです?」
俺は日本酒を取り出して献上(?)した。
「ほほう。見事な瓶だな」
まずそこかよ…ただの一升瓶なんだけどな。
こちらにも瓶はあるから珍しい物じゃないはずだが、多分皇帝の語彙力の無さか、審美眼の無さのせいだな。
「それで…お前達は誰がAランクなのだ?」
「全員です」
「なんだと?!この小さな娘もか?」
「ちなみに陛下が小さな娘とおっしゃったのは、18歳の女性です。最年少はこちらのミランで14歳です」
エリーは失礼なっ!って顔で驚いているけど、仕方ないだろう。
「14歳でAランク冒険者…リーダーは其方か?」
「いえ。私ではなく、こちらのセイです。転移魔法の使い手も彼です。
さらに言うと、これは脅しですが、彼がその気になれば一瞬でこの皇都を城ごと消し飛ばせますのでお気をつけ下さいね」
皇帝のあまりの鈍感さに聖奈さんがわざわざ脅しだとまでつけて釘を刺した。
舐めてるといてこますぞワレ!って感じだ。
ちなみに融合魔法で城ごと消し飛ばすことは出来るが、するわけがない。
例え狙われても逃げればいいだけだし。皇都の民は何も関係ないのに、危害など加えられない。
もちろん仲間を傷つけたら何すっかわかんねーぞ!オラッ!
「そんな事が…いや、転移などと言う人智を越えたことが出来るのだから…可能なのか?」
考えが口に出るタイプなんだね!
為政者には向かないよ!
えっ?俺も?知ってるよ!
「そんなヤバい魔法は見せられませんが、転移なら見せられますよ」
「本当か!見せてくれ」
頼まれた俺は徐に立ち上がり、部屋の隅にある壺の前に来た。
人が入れそうな壺だけど、これは何に使うんだよ……
「これと一緒に転移します。俺だけだと高速移動だと思うでしょうし」
そう考えて壺を持とうとしたらやけに重い……
中を覗くと……
「うわっ!?誰だ!?」
中に人がいた。
マジかよ…冗談で言ってたのに……
「済まん。そいつは皇族を守る忍びだ」
し、忍び…ニンニン。
異世界に居たのかよ…地球にはもう居ないのに。
「まぁ話を聞かれたので…」
そう告げると中にいた忍者さんは身体を震わせた。
「一緒に転移します」
こんなところに隠れていたのが見つかったら恥ずかしいだろうし、出てこなくていいよ。
『テレポート』
俺は部屋の反対側へ壺ごと転移した。
もちろん中の人には何が起こったのか、わかっていないだろう。
唯一壺の中から見える天井は真っ白で、さらに段差も見当たらないから尚更だ。
「す、凄い!凄いぞ!」
転移魔法を見た皇帝は大はしゃぎだ。
その後、他の人達(大臣職、側近)が入ってきて手紙の内容や、こちらが求めていることには否定的だったが、俺達…いや、俺のヤバさを知ってしまった皇帝が黙らせた。
そりゃ皇都を破壊はしないと思っていても、寝てる時に転移で来られて寝首をかけると思ってるだろうから、これで俺達は皇国で無碍にはされないだろう。
その脅しを込めた転移の披露だったはずだ。
知らんけど。
ドンドンッ
「いらっしゃいますかっ!?」
その日の夜、俺が部屋でごろごろしていると、焦った感じで扉がノック(?)叩かれて(?)問いかけられた。
「はい。開いてますよ」
ガチャッ
「お休みのところ申し訳ありません!陛下並びに大臣方達が至急とのことです!」
入ってきた侍従と思われる人はただ呼んでこいと言われていただけで、何事かは聞かされていないようだ。
それにしても、焦りすぎだろ。
まさか命の危険が…?
一瞬不穏な未来が頭を過ったが、恐らく俺が予想しているものだろう。
俺は侍従に付いて行き、大広間へと入っていった。
「待っていたぞ!」
皇帝がテンション爆上がりで手招きしてきた。
はぁ。やっぱりか……
「酒、ですよね?」
「そうだ!まだあるか?金ならいくらでも出そう!」
流石皇帝。いや、こんな事で威厳を感じるのは違うな……民の血税だし。
その日の夜は大いに呑みニケーションした。
死語か……
「よし。では、まずはエンガードに行くぞ」
いや…アンタはフットワーク軽すぎだろ……
「本当にいいのですか?また怒られるんじゃ…?」
「馬鹿を言うな!これは爺と妻からも頼まれていることだから問題などない!
余は国王だぞ!」
アンタ尻に敷かれてるやん…人のこと言えんけど。
俺はエンガード王国王都の前に近衛騎士達を転移させた後、カイザー様と一緒に転移した。
「聞いていたし見てもいたが…体験するのはまた別だな」
流石の王族も帝王学に転移の項目はないだろうから驚いているな。
騎士達にも転移が出来るのがバレてしまったが、必要経費の為致し方ない。
「陛下。エンガード王国国王が会談に承諾致しました」
良かった。ここで断られていたら出直しだからな。
アポ無しなのは仕方ないが、この世界ではアポをとるのに手紙くらいしか無くて、その手紙も届くかどうかわからない。
そんな理由もあって、アポが取りたくても取れない時もあるから、受ける側は臨機応変に対応しなきゃな。
俺は片手間で出来るメールの返信すら怠るけど・・・・