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新藤は一瞬死んだかのような気分を味わった
あの天にも昇る心地はまさに
「死んだ」
としか表現できない
今の自分は体の中で
満足していない部分など一つもない
新藤は満足のため息をつき
あやすように桃子を抱きしめていた
彼女の顏も髪も汗で濡れている
まずはおでこにキスをし
乱れた髪の毛を耳の後ろに払ってやった
今ほど人生が素晴らしく思えた瞬間はない
「初めて会った時から僕を好きだって
どうして言ってくれなかった?
ホテルから帰ってきて君があんまりにも
冷たく仕事に徹してるので
もう僕とは関わりたくないのかと思っていたんだよ」
桃子はムッとして言った
「最初に契約を持ち出したのはあなたですっ
だから・・・
一度そういう関係になったからって
私に追い回されるのはあなたは
嫌なんだと思ったの・・・」
「でも・・・
やめられそうにないかも・・・・ 」
桃子は新藤を熱く見つめて言った
「あなたに近づくことを
まつわりついて
気を引こうとすることを
あなたの頭のなかに忍び込んで
私を抱いてってせがむことを」
新藤はにやりと口元を緩めた
「君に院内中を追い回されるのか・・・
気に入った 今度やってみよう
君が僕を堕落させるんだ 」
桃子に小突かれて新藤が笑った
「ああ 桃子
あの時ドクターズラウンジで泣いている
君に偶然出くわせて本当によかった・・」
気持ちも幸福に緩んでいる時・・・・
またいつもの鬱積した感情が
煙のようにゆらりと立ち上がった
突然桃子に気持ちを打ち
明けてみたくなって
新藤は喉のつまったような声で言った
「前の妻の晴美は・・・・・
こんな話をしてもいいのかな・・・
君に・・・その
愛しあった後に・・・ 」
桃子はドキリとした
新藤が離婚したと聞いた時は
驚くと同時に新藤が本当は傷ついているのではないかと彼を心配したものだ
しかし彼の業務姿勢は離婚前となんら
変わらなかったので
院内ではやはり新藤は心の冷たい機械人間だと噂されたものだった
しかし新藤の離婚の真相は誰も知らなかった
「あなたの話ならなんでも聞きたいわ」
桃子は新藤の胸にすり寄った
新藤が桃子の髪をもてあそびながら続けた
「大学時代のサークル仲間だったんだ
彼女に片想いしてた
付き合えた時は天にも登る気分だったよ
彼女が浮気するまでは・・・・
結婚してからも何度も裏切られた 」
「まぁ・・・・それは・・・ 」
桃子は顏をしかめた
「ひどいわ 」
「彼女は泣いて僕のことを心から
愛しているから二度としないとかなんとか言うんだが
結局また浮気するんだ・・・」
新藤は物思いにふけりながら
じっと天井を見つめていた
「僕はずっと自分を責めた
どうして僕じゃダメなんだろうって
僕の何が足りないんだろうって・・・・」
桃子は彼の胸をさすりながら
話の続きを待った
「僕なりに彼女に歩み寄ろうと努力したが
結局はもう彼女に何もしてやれない
所まで行って無理だとあきらめた
頭がおかしくなりそうだったよ・・・」
桃子は身震いしてうなずいた
「辛いわね・・・・ 」
ささやくように言う・・・
「べつに同情を求めてるわけじゃないんだ」
新藤が言った
桃子が起き上がって彼を見つめた
そういう体制になったものだから
自然と彼女の尻の丸みに手を這わせた
「ううん・・・・
辛いのは彼女の方・・・・
そういう女性っているわよね・・・」
「そうなのか? 」
「ええ・・・
私の高校の同級生にもいるわ・・・
多くの男性から興味を引いていないと
自分の価値を見い出せないの・・・」
新藤が興味深げに桃子を見た
「それは相手の男性の問題じゃなくて
彼女の問題なのよ
彼女の自分に対する問題
彼女は自分を嫌っているの
自尊心がないのよ
だから自分じゃない誰かに好かれて
初めて自分を好きになるの
でもそれは・・・・
いたちごっこと一緒で相手を変えても
結局は同じ事を繰り返すのよ・・・
彼女自身がそれに気付いて変わらない限りね」
「へぇ・・・え・・・ 」
新藤は驚きに目を見開いた
誰かにもっともな事を言われて
頭が真っ白になったのは
これが初めてだった
桃子が両手で新藤の顔を
挟んだものだから
桃子しか見えなくなった
「あなたとは違うわ
あなたは自分の価値を分かってる人だもの
だから合わなくてもしょうがないのよ 」
桃子が上になって自分のおでこと
彼のおでこをひっつけた
「あなたは威厳があって
献身的で、勇敢で、さらに聡明で
神の手を持っていて
外見は言うにおよばず
とても魅力的だってことは?
もう言ったかしら? 」
新藤がキスを返して笑った
「興奮させないでくれ
さっきしたばかりだ 」
「いくら言葉で言っても
あなたの素晴らしさは伝わらないみたい・・」
桃子は身をよじって
いったん体を離し彼に馬乗りになった
桃子は新藤の手をさっとつかむと
胸のふくらみに押し当てた
新藤は首を横にふりながらも
手が勝手に動いた
両手でなでまわしてなめらかで
柔らかな感触を味わう
さらにすくいあげてずっしりとした
重みを確かめる
つんと立ったピンクの先端が
手のひらをくすぐった
素晴らしい
彼女は硬くなった彼のものを
握って目で訴えた
新藤は笑いながらも屹立したものを
そっと中に入れた
桃子が腰を落とすと
彼は背中をそらして鋭く息を吸いこんだ
「ああ・・・」
新藤が桃子の尻をしっかりつかんだ
「まだ慣れないのに
ヒリヒリしてるだろう・・・・
動かないほうがいい 」
「中に入ってほしかっただけ 」
桃子が微笑むと新藤がまぶしそうな
目つきをして桃子の体のフォルムを
手で撫でて確かめた
気持ち良すぎる
ウェーブのかかった髪が新藤に垂れかかってくすぐる
きらきら輝く優しい目で見下ろされると
胸がきゅんとし喉がしめつけられた
目に涙がこみあげたが泣くなんて
そんな恰好悪い事はできない
「本当に綺麗だな・・君は・・・ 」
動かないと言ったが
やはり動かずにはいられなかった
どちらからともなく徐々にペースが
速くなっていき否応なく突き動かされ
あっと言う間に絶頂の悦びに輝いた
「さっきの話しの続き・・・・」
まだ全身がドラムのように打ち震えて
呼吸を整えている新藤に
またがってるままの
桃子がハッキリ言った
「とにかくあなたが原因では無いわ」
「・・・そう言ってくれてありがとう」
二人は硬く抱き合って眠った
これ以上ない至福に包まれて
元旦から2日
桃子はずっと新藤と一緒にいた
彼の家で一緒に過ごし
昼間は生田神社へ初詣に行き
中華街で食事を楽しんだ
今は神戸ハーバーランドの港に
新藤のBMWを波止場へ付け
二人は車のボンネットにもたれ
桃子は後ろからスッポリ新藤に抱きしめられ桟橋の光が反射されて
キラキラ光る水面を見つめていた
「・・・本当に新年のドクターゴルフコンペに行かなくてよかったんですか?
なんだか私のせいで心苦しいわ 」
背後から抱きしめている新藤が
微かに笑った顎を桃子の頭の頂点に
のせている
「新年はここ十数年毎年教授たちのご機嫌をとってきたんだ
今年ぐらい君と過ごしても
罰は当たらないだろう」
新藤が桃子の耳にささやいた
息を吹きかけられただけでふにゃりと
膝が潰れてしまいそうになる
「それに今僕はインフルエンザにかかっていることになっているから大丈夫だよ」
そう笑って彼は桃子の首すじにキスをした
まるで彼の腕の中で形を変えるパテになった気分だ
「僕の方こそ元旦から君をご家族と
引き離してしまって申し訳ない
さすがに今日は帰さないと・・・ 」
桃子も密かに笑った
「私も生まれてから28年間
お正月は家族の機嫌をとってきたわ
今年はあなたと過ごす一世一代のチャンスを貰ったんですもの逃がすなんて
できないわ 」
「そうかい?」
「それに文香にLINEしておいたから
大丈夫ゆっくりしておいでだって
どうやらあなたはウチの家族を
いとも簡単に手なずけたみたいね 」
「それはよかった 」
二人は神戸の美しい海を見ながら
キスをした海風にさらされてお互いの
唇がアイスクリームのように
冷たくなっていた
しばらくすると新藤の股間の高まりを
桃子はしっかり感じた
「君といるとSEXを覚えたての
高校生みたいになる・・・・ 」
頬に彼の熱い吐息を感じる
それは桃子も同じだった
キスをしただけでどこでも燃え上がる
自分の体をはしたないと感じていた桃子は
新藤も同じように感じてくれているんだと思うと嬉しくてたまらず自分からキスをし
舌を差し入れた
「もう一泊していかないかい?」
「よろこんで・・・・ 」
二人は荒い息で見つめ合った
それから新藤は桃子を神戸のデパートの
婦人服売り場に連れて行った
彼は何でも好きな物を買えと言い
あちこちに置かれている安楽椅子の
一つにゆったりと座った
桃子は綺麗に陳列してる服の値段を
チラリと見て青ざめた
自分がいつもスーパーで買う服の
三倍の値段はする
それを見た新藤が微笑み桃子に言った
「僕が君を着のみ着のままで
さらってしまったから
申し訳ないと思っていたんだ
これからもう一泊僕と過ごすために
必要なものを全部買うといいよ 」
「でも・・・・ここは高いわ・・ 」
躊躇する桃子にウインクして彼は言った
「値段は見なくていいんだよ
君にクリスマスプレゼントを貰った
お返しもしていないし
どう考えても君が僕を破産させるぐらい
金使いが荒いとも思えない 」
それで桃子はスエードの黒の
ミニワンピースを手に取った
それを見た新藤はやめて欲しいと言った
「そういうワンピースは
君に似合わないよ
スカートが短すぎる
脚を見るのは僕だけでいい 」
桃子はあけすけに言う新藤に頬がポっと
赤くなった
うっとりと新藤を見ている店員の
感心を自分に戻そうと
桃子は軽く咳きばらいをした
店員はあわてて仕事に取りかかり
桃子におせじの雨を降らせた
桃子は新藤に喜んでほしくて
そういう服をじっくり探し
やっとのことで見つけた
襟ぐりは少し深いが周りについている
ファーが上品に見せてくれる
スモーキーブルーのニットワンピース
だった
ウエストにタックが付いていて
桃子のみごとな肢体を際立たせた
試着室から出てきた
桃子が彼の前を歩くと
新藤は満足そうな笑みを見せた
「ありがとうございます・・・・
次のお給料が入ったら
必ずお返ししますから 」
桃子は手渡されたゴールドカードと
レシートを新藤に渡して言った
レシートをチラリとみて彼が笑って言った
「これぐらいじゃ僕は破産しない
他にこまごましたものは?
下着やあっちにドラッグストアがあるよ
僕はここでコーヒーを
飲んでるから行っておいで 」
新藤をスタバに残し
渡されたゴールドカードを手に桃子は
下着売り場へ向かった
桃子の心がまたチクリと痛んだ
彼は女性の買い物を知り尽くしている・・・
そしてその買い物に付き合う時に
自分がどうふるまえばいいか
本当に熟知していた
しかたがない彼は大人の男性だ
女性の扱いも慣れている
無理もないけど彼の言葉や仕草の所々で
前の奥さんの影がついてまわる
それを垣間見るたび桃子の心に嫉妬の針が
ちくりと突き刺すでも首を振って
その針を吹き飛ばした
数日前までは彼とこうして過ごせるなんて
考えられなかったんだもの
今は彼は私に大きな幸せを
与えてくれているのだから
素直にそれを受け入れよう
桃子は下着売り場のマネキンが着ている
白い繊細なレースのブラジャーと
トンガのセットを一目で気に
入ってしまった
さらにドラッグストアで化粧品や
シャンプーなどを次々に
購入できる喜びに浸った
沢山の買い物袋を下げて
息を荒がせて新藤の元に戻った時には
子供のように目を輝かせていた
新藤はショッピングバックを見て言った
「荷物が多いならば配達させようか?
今から晩メシも食いに行くだろう? 」
桃子は首を振り真顔で言った
「これと別れることに耐えられないわ
どれほど綺麗な下着かあなたにも
見て欲しいの 」
袋を開けてチラリと見せようとする桃子に
新藤が耳打ちをした
「あとでじっくり見せてもらうよ
それに僕はそれを着た君を
脱がせる方がいい・・・ 」
桃子は顏をしかめて言った
「ちゃんと隅々まで見て触ってから
脱がせてね 」
「君のために買い物をするのは
おもしろいな 」
新藤は笑った
言った言葉は本心だった
元妻晴美にダイヤのネックレスを
買ってやった時よりも
さほど高くないものを桃子のために
買う方が楽しかった
晴美は贈り物など当然の権利でそれでも
医者の妻なのにこれぽっちなんて
足りないくらいだと考えていた
贈り物も新藤に贈られたことよりも
それで自分を飾ることのほうを嬉しがった
もちろん新藤も恩着せがましく
感謝の言葉を期待していた
わけではなかったが
なにか肝心なものが
欠けているようで寂しかった
ところがその肝心なものが桃子にはあった
最初は買う必要がないからと断っていたが
結局はこれ以上ないほど喜びをあらわにして言った
「とっても嬉しいわ・・・・
ありがとう きっと大切にするわ 」
そういうと新藤の手を握りしめ
そっと指の第二関節を撫でた
今すぐ彼女にキスしたくなる衝動を
押さえ新藤ははにかんだ
「さぁ・・・食事に行こうか・・・
君は若いから肉の方がいいかな 」
新藤が桃子を連れて行ったのは
神戸牛がおいしく食べられて粋な
ジャズも聞ける
ダイニングレストランだった
「君は本当においしく食べるね 」
桃子は舌鼓を打っていたステーキから
顔をあげた
「はしたなかったかしら・・・・
でも・・・どれも美味しくて 」
桃子は恥ずかしそうに口元をナプキンで拭いた
新藤は椅子にもたれかかった
それからジャズのナンバーをやわらかな
音色で演奏するバンドに目をやり
物思わしげな顔を彼女に向けた
「君は踊ったことがあるのかい?」
桃子は意外な質問に驚き
無言で首を振った
彼は立ち上がり手を差し出した
「僕が教えるよ
踊ってくれないか? 」
彼のハスキーな声にぼうっとなり
桃子は彼の手を取り立ち上がった
そして導かれるままにダンスフロアに
歩いていった
新藤は彼女の背中に手を回し体を
引き寄せた
桃子はうっとりと目を閉じ
彼の体温に包まれ
彼の吐息が鼻をかすめている
桃子は新藤の匂いが隅々まで届くように
息を深々と吸った
「おかしいんだ・・・・
君に触れると火がついたみたいになる・・・」
新藤は桃子を見つめて言った
彼の高まりが桃子のきわどい部分に
押し付けられている
桃子も濡れている
「私も同じよ・・・・
まるで化学反応みたい 」
桃子も彼を熱く見つめて言った
その言葉に新藤がまた笑った
「帰って実験しよう 」
二人はレストランの駐車場の陰で
待ちきれずキスをした
彼は桃子のうなじに手を入れて
もう片方の手を彼女の腰に回し
唇が同じ高さになるまで体を引き上げた
まるで離れるのを許さないとばかりに
彼のキスは情熱的だった
けれどいつもと違うことに桃子は気づいた
情熱的で官能的なだけでなく
真摯な心が込められていた
その夜から
桃子は幸せの絶頂にいた
桃子が急に綺麗になったことは
院内でも有名になった
桃子にはその変化は新藤に求められているという幸せのおかげだともわかっていた
おどろいたことに新藤はいつも桃子に
そばにいてほしいと願っている様子で
桃子は驚きながらも喜んで期待にこたえた
しかしまだ自分に自信が持つなかった
桃子は自分とお付き合いをしていることを
院内の連中には内緒にしてほしいと
新藤に頼んだ
彼の恋の相手が自分なんかじゃ
彼が恥ずかしい思いをするのでは
ないかと不安になった
新藤も桃子の願いを聞き届け
いつもの朝の回診も桃子に新藤の
指示を書き止めさせたり
電子カルテのことで彼に質問したりする
時にたがいにひそかに笑みを
かわすだけだった
なのでもっぱらのデートの場所は
新藤の家になっていた
桃子は新藤が次の手術にそなえ夜遅くまで復習や準備をする新藤の世話をし
彼にその日一日の患者の様子を聞き
今の病院のシステムの不備にも耳を傾け
できるかぎり手伝った
むずかしい手術が終わり勤務が明けると
新藤はまっすぐ桃子のいる自宅に帰り
桃子は彼の肩の凝りをほぐした
また夜勤明けの桃子を新藤が車で
迎えに来てそのまま彼の家で
彼の腕の中で仕事のことをすっかり
忘れる日もあった
ある夜も愛を交わした後
互いに抱き合い横になっていると
不意に新藤が心のつかえを話し出した
最近ではよくあることだった
そういう時桃子は彼の言葉を一言も
もらそうとせず全身耳になった
彼は予定がずっとつまっている手術
回復が思わしくない術後の患者の事を
話した
「今の手術チームはすばらしいんだ
一番頼りになるのは中堅を筆頭に
4人の医師
それと手術担当の主任看護師
彼女は実に的確な判断をしてくれる」
桃子はそれを聞いた時に
チクリと心が痛んだ
それが嫉妬だということに
すいぶん後になってから気づいた
自分が手術室で彼のそばにいる看護師では
ないことを残念に思った
「君と仕事の話ができるのはとても嬉しい」
桃子は微笑んだ
「あなたの話はとても面白いわ
それに勉強になるもの 」
「どの女性もそう思うとは限らないよ
晴美は・・・・
ちがったな 」
桃子の心臓が再びチクリと痛んだ
また元奥さんの話だ・・・
やっぱり彼は元奥さんを忘れられなくて
どうしても私と比べてしまうのだ
しかし桃子はそんな考えを振り払った
少なくても今は私の方がいいと言ってくれているのだから
「晴美は僕が手術の話をするのを嫌がった
生々しいってね・・・・
たしかに楽しい話ではないけれど
人の内臓と5時間も向き合っていたりしたら帰って愚痴の一つも
こぼしたくなるもんでね・・ 」
新藤はため息をついた
「それから彼女に仕事のことを相談することはなくなった
僕は夢中になってしまうんだ
患者をほおっておけないんだ
今もそうだが充分に準備をして
手術に向かうのはどれほど時間が
かかるか君なら分かってくれるね」
「わかるわ・・・・ 」
桃子は彼の腕まくらで
彼の乳首の回りを撫でながら言った
「僕たちの間に子供がいたら
違っていたかもしれない
スケジュールの組み方もそうだし
いくつも手術を引き受けたり
しなかったかもしれない
晴美は自分のためにもっと
時間を割いてほしいと言ってた
僕が・・・・
仕事が好きすぎるのがいけなんだ」
「あなたがどれほど貴重な仕事を
しているか現場にいない奥様には
それは分からなかったかもしれないわね・・・ 」
桃子は新藤をかばった
「もし手術を怠ったり
時間を惜しんだりすれば
あなたにとってだけじゃなく
貴方を頼りにし信頼している患者さんに
とってもマイナスだわ・・・・
あなたは・・・・
多くの人のために
生きている人ですもの・・ 」
長い間抱き続けていた
新藤に対する賞賛の気持ちが
そのまま言葉に出た
「本当に嬉しいよ・・・・ 」
うす暗がりのなかでも
新藤が微笑むのがわかった
彼がこちらを向いて桃子を抱きしめる
「君はいつも僕の見方をしてくれる
そうだ・・・・
ずっと思ってたんだが
君は正看護師になる気持ちは
ないのかい?」
「え?」
桃子は意外な言葉を新藤から言われ
体を半分起こしたものだから
桃子の胸が新藤の目の前でプルンと揺れた
「もちろん学校に夜に通えば
今みたいに会う時間も少なくなるけど
その分週末はここに泊まりにくればいいし・・・ 」
新藤が嬉しそうに桃子の胸を
両手で揉みしだき
そこに顔をうずめながら言う
「ああ・・・
それに夜勤勤務が出来なくなるから
君の給料も減るかもしれないけど
心配ないよそこらへんはすべて僕が持つ 」
桃子は顔をしかめて言った
「あなたは私を甘やかしすぎるわ」
新藤が笑って肘をついて
覆いかぶさってきた
「僕には自分の女を甘やかす権利はある」
桃子はふたたび
彼の愛に心とからだを開いた
「つまり
万事上手くいってると言うわけね!」
早苗がレモンサワーのジョッキを口に持っていきぐいっとやってから言った
「そうでもないわ 」
早苗の隣の桃子もカクテルを
飲みながら言った
「どうしたらそんな暗い物の考えに
なれるか分からないわ!
彼はあなたにすばらしい
初体験をさせた王子様で
あなたの家にさっそうと現れて
怪人が美女をさらうようにさらって・・・・
その上に看護学校の学費まで払おうと
しているんでしょ?
それってあし長おじさんじゃないっ!
ああ・・・
いったい彼は一人で何役してる訳?」
うっとりと
好奇心いっぱいの早苗が明るい声で言った
興奮して彼女は焼鳥を端から口で一気に
串からはがし大きく咀嚼した
陽気な早苗の声と居酒屋の
カウンターの客の騒々しさとは
うらはらに桃子の声は沈んでいた
「・・・彼の口から別れた奥さんの事を
聞くのが辛いの・・・ 」
桃子は早苗の方に向き言った
「ねぇ彼を愛する身としては
今だに彼の心を独占している元奥さんが
妬ましいの
彼と元奥さんが離婚した時も驚いたけど
それよりも彼に深い心の傷を
負わせた彼女に腹を立てたわ・・・・
でも彼と付き合えば付き合うほど
その心の傷の爪痕はとても深いことが
分かったの・・・
修復できない程に・・・」
「ひどいわね!その女!
たしか何度か病院に来た時見かけたけど
ものすごい美人だったわよね・・・
服装もセンスよかったし 」
と早苗ははっとして桃子の背中を叩いた
「もちろん!
今のあなたも負けてないわよ!」
桃子は軽く首を振って
目の前のフライドポテトをつついた
「彼女にかなうなんて思ってないわ
だからこそ彼の口から彼女の名前を聞き
あの人が死ぬほど彼女を愛していたという
辛い事実に胸が絞めつけられるようになるの
彼は今でも元奥さんを愛し
その美しさと輝くような個性の虜に
なってると思うの・・・・
今だに彼女の話をするのが良い証拠だもの」
「まぁ!
あたしなら怒って彼に言うわ
あたしといる時に昔の女の話なんか
しないでって!! 」
早苗が顏をしかめた
それに少し勇気づけられ桃子が
穏やかに言った
「私だってそう思うわ
でも そう思う反面彼は私に今まで
やり場のなかった思いを吐きだしているんじゃないかと思ったの
それはすなわちそれだけ私を
信頼してくれているんじゃないかって
そう考えると
彼の気持ちをもっと聞きたいし
彼をもっと良く知り秘密を打ち明けて
もらえる相手になりたいとも思うの・・・
だって私が元奥さんに唯一勝ってる所かも
しれないでしょ 」
桃子は小さくため息をついた
「そう考えようとしてるけど
感情がついていかないの・・・・ 」
「・・・
あなたには辛い時期かもしれないわね
でも希望を捨てちゃダメよ
一つだけ決定的に元嫁と
あなたが違うところがあるわ 」
早苗が思案げに言う
「それは何?」
桃子がすがるように早苗に聞いた
「一つ
今は彼の一番近くにいて影響を与えられるのはあなただってこと!
二つ
人を癒すのは私達ナースの本業だってこと!」
早苗が勝ち誇ったように言った
二人はもう一度乾杯をした
・・・・・・・・・・・・・
二人は病院が休みの日は
普通のカップルのように
映画や芝居を見に出かけたりした
しかしほとんどは新藤の家で愛を交わして
過ごすことのほうが多かった
新藤の広いベッドで愛し合ったり
時々初めて愛しあった神戸の宮殿のような
ホテルで週末を過ごしきらめく
イルミネーションが見渡せる
広い窓の下で愛を交わした
時には早急に新藤が桃子の中に入り
3突きで果ててしまうような慌ただしくて
激しい愛もあったり
時にはゆったり新藤に全身舌で愛撫され
時間をかけて甘美な欲情を燃え上がらせながら
最後には耐え難い絶頂に桃子が悲鳴を
上げるまで引き延ばされたこともあった
さらに場所を変えたりもした
バスルームで、キッチンで、車の中でと
新藤は桃子にさまざまな愛を教えたが
彼自身もまたそれまで知らなかった
喜びを桃子を相手にして
初めて経験する感動を覚えたりもしていた
ある夜新藤は自分のベッドボードにおかれた
緊急呼び出し用の端末を眺めていた
手術をして経過が気になる患者を
残して家に帰宅したものの
そのことが頭を離れなかった
面倒な腸管切除のケースだったため
経過が思わしくないようなら
急いで病院に戻らなければならない
とりあえず眠ろうとランプを消して
布団にもぐりこみ目を閉じる
しかしまだ頭は眠りたくないらしく
頭の中で手術を再生すると
手術室の冷凍装置から噴き出す冷気で
足が冷たくなるのを再体験した
それに手袋をはめた指を患者の腹に
滑り込ませた時
その温かさに覚える不安感も
病んだ腸は所々紫色の斑状出血を起こし
小さな裂創から真っ赤な鮮血がゆっくりと漏れ出していた
そんな事を思い出しながら
経過を逐一知らせてくれと言っておいた
夜勤勤務の者から今の所連絡がないことは
良い知らせだ
目が冴え眠るのを
諦めるて書斎の医学書を手にとり
今日の手術のおさらいをし
気になる事柄をメモした
手術室では緊張とアドレナリンのおかげで
自分が神にでもなったような気分で
患者の体と真摯に向き合う
内蔵に話しかける
「悪い所を教えてくれるかい?」
.:*゚..:。:. .:*゚:.。:
しかしいったんアドレナリンが切れてしまうとどうしようもない不安に襲われる
そういう時は決まってベッドの中で一晩中寝返りを打つはめになる
数時間が経ちやっぱり患者の様子を
見に行くことにした
すると玄関の呼び鈴が鳴った
ドアを開けると遅番だった桃子が
外は寒かったのであろう
鼻の頭を赤くして入ってきた
「すいません起こしてしまいましたか?」
「いや寝ていなかったよ
君はどうしたんだい?
言ってくれれば迎えに行ったのに 」
桃子は買い物袋をキッチンに置いて
冷蔵庫を開けた
「すいません
こちらに私のコンタクトを忘れて
しまってたので取りに来ました
明日無いと困るので
それと冷蔵庫の物を少し足しておきますね
コーヒーも切れていたので 」
桃子がソファーに座り考えこむ新藤に
近寄ってきて膝に手を当てて言った
「私が帰る頃には
変わったことはありませんでしたよ 」
「え? 」
医学書から目線を桃子に向ける
彼女は可愛く笑った
「バイタルはすべて安定していますし
数値もオーケーです
出血もありませんし
私が出る時に見たがぎりでは顔色も
青白いものではなくほんのりピンク色で
首筋の脈も力強いものでした 」
新藤はその言葉を聞いて大きく息を吐いた
そしてはじめて自分が息を
詰めていたことに気づいた
「そうか・・・・
よかった・・・・ 」
彼は言った
「見て来てくれたんだね
ありがとう安心したよ」
「手術は成功しましたね」
桃子は新藤にむかって
温かな笑みを浮かべた
新藤はやむくもに彼女にもたれかかって
泣きたい衝動にかられ
それを必死で堪えた
しかしまだ油断はできなかった
ERの看護師が新藤の
緊急呼び出しをしていないかと
ベッドボードの端末を確認しに行った
呼び出しはきていない
でも縫合の時のあの小さな盛り上がりが
化膿したら・・・・
新藤はもう一度書斎の医学書を手に取った
桃子は書斎とリビングをせわしなく行き来している新藤を
ため息をついて見つめて言った
「ねぇ あなた
もしよかったらお風呂いただいて
よろしいですか?
外は寒かったもので・・・・ 」
新藤はその声でハッと桃子の
存在を忘れていたことに気付いた
「あ・・・ああ!
わるかったね
風呂は沸いてるから入ったらい―― 」
桃子に視線を向けて驚いた
桃子はシャツの胸元をすべてはだけていた
シルクの花柄レースのブラジャーが
うっすらとピンクの乳首を映している
彼女は椅子に座ってスカートを尻が
丸見えになるまでたくしあげ
見事なピンクの太ももを見せた
そして思わせぶりな手つきで
ガーターベルトを外し
ストッキングを脱いでいく
なんてことだ
そらしたくても目が彼女に釘づけになっている
ゴトンッと大きな音を立てて
新藤は医学書を落とし
彼の心臓が飛び跳ねたそして他の部分も
クールで何気ないふうを装おうとするあまり
桃子の手は震えていた
新藤の気持ちがこれほど不安定な時に
誘いをかけようなんてどうかしてる
でも少しでも彼に体を休めてほしかった
激しい愛を交わした後は
彼は爆睡することを桃子は熟知してる
激しいSEXは彼が十分睡眠を取るのに
効果があるかもしれない
桃子はその場で最後のパンティーを脱ぎ
欲望に満ちた目で見られるのを楽しみながら
もう一度チラリと新藤を思わせぶりに見て
わざと尻をゆらしてバスルームに向かった
バスタブにつかりながら
新藤が来るのを楽しみにしていると
勢いよくバスルームの蛇腹のドアが開いた
「卑怯だぞ!」
顏をあげると新藤が腕組みをして
こちらをにらんでいる
彼の唇が面白そうにゆがんでいるのがわかる
「僕をそそのかしているな」
「かまってほしかっただけ」
湯船につかり鼻から上だけをだして
上目づかいで桃子は見つめた
「可愛い顔をしても無駄だからな」
だが新藤が服を脱ぎ始めるなり
桃子の心臓は素早く動き出した
彼は最初にシャツを脱ぎ
逞しい胸をあらわにした
それからズボンとソックスを
脱ぎ散らした頃には
桃子は赤くなっていた
ボクサーショーツの上からもわかる
ふくらみは大きく盛り上がっていた
新藤を誘惑できたことに成功した
桃子は小さくほくそ笑んだ
ボクサーショーツもけちらかし
一糸まとわぬ彼を見上げるのは勇気がいった
彼はとても逞しくギリシャ神話の銅像のようだ
でも学生時代に美術室で見た
筋骨隆々の銅像と違う所は・・・・
桃子の視線が股間で止まる
何度みてもドキリとする
新藤の高まりはとても大きく屹立していて
へそに付きそうなぐらい天を仰いでいる
あんな逞しいものが・・・・・
自分の中に・・・・
ああ・・・・・
彼は桃子のいるバスタブに入ってきて
桃子の胸を背後から両手でつかんだ
「この胸は違法だ 」
そう言いながら新藤は背中にキスの
雨を降らし桃子を震わせた
それからバスルームで早急に愛を交わした後
新藤に体を洗われベッドに移動した
再び彼に後ろから貫かれ
震える桃子に荒い息で言う
「君が誘ったんだ今夜は容赦しないぞ
覚悟しろ・・・・・・ 」
「あっあっ・・・こわれちゃう・・・ 」
それが夜のはじまりだった
桃子は新藤に連れていかれた絶頂から
おりることなく
悦びを与えられ続け
疲れを知らない新藤に驚かされた
まさに夜明け前になってやっと
二人は疲れ切って眠りに落ちた
幸福感に包まれながらも
明日が二人とも非番で良かったと
桃子は思った
初めての新藤の支配的なSEXに
彼が今までどんなに自分を労わってくれていたのか痛いほど分かった
まるで過去の彼の一部を初めて
垣間見たような愛し方だった
今は桃子を腕枕しながら
小さないびきをかいて熟睡している新藤を
見つめていると幸福な感覚が体全体に広がった
疲れが溜まっていたのだろう
うっすらと目の下にクマができている
桃子は眠る彼にささやいた
「今だけは・・・・
何も考えず眠って・・・・ 」
頬に優しくキスをする
「私の大切なあなた・・・・ 」