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その瞬間、祐樹は、
筒井美穂よりも、土井尚子よりも、仙田隆太よりも、酷い姿に変わった。
「―――うう゛!!」
遠目で観ていた尾山がその姿を見て口を抑える。何も食べていない胃を裏返すようにえずく。
祐樹は自分の身体を見下ろした。
―――なんだ、これ……。
喉がかさついて声が出ない。
―――影?
まるで祐樹は、真っ黒に歪んだ影のようだった。
アリスはそんな祐樹を見下ろしながらその顔に手を翳した。
アリスがそう囁いた瞬間、祐樹が跪いていた道路が、ビキビキと音を立てて裂けた。
ズズズズズッ
ズズズズズッ
道路がずれていき、底の見えない穴が開く。
祐樹がめった刺しにした赤い塊が、声もなくその中に落ちていった。
ビシッ
自分の膝の間まで亀裂が走った。
「――――」
祐樹はアリスを見上げた。
―――俺は、生き返るのか?
「……ええ。そうです」
アリスは静かに頷いた。
―――じゃあ、やっぱり。俺の勝ちだな?
地底深くまで開いた穴からフワッと、生暖かい風が舞い上がった。
アリスは前髪を靡かせながら、ふっと微笑んだ。
「―――それは、どうでしょう」
そういうと、彼は翳した手に力を込めた。
アリスの手が青く光ると、裂け目が広がり、炭と化した祐樹は、その穴に深く深く落ちていった。