テラーノベル
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#ご本人様には関係ありません
嘘と、仮面と、雨の音
マイクの前で、しろせんせーはいつものように軽快な声を張り上げていた。モニター越しには、メンバーたちの笑い声と、流れるようなコメント。画面の中の自分は、誰がどう見ても「おなごけんのしろせんせー」だった。
収録が終わり、接続を切る。
静寂が、一気に部屋を埋め尽くした。
しろ「……ふぅ」
椅子に深く背を預け、彼はスマホを手に取った。指が吸い寄せられるように、自分を評価する言葉の海へと潜っていく。
「最近のしろ、つまんない。調子乗ってる」
「いなくなればいいのに」
「生理的に無理」
鋭利な刃物のような言葉たちが、視界に飛び込んでくる。一つ一つは小さな棘かもしれない。けれど、それが毎日、何百、何千と降り積もれば、心の形を変えていくには十分すぎる重さだった。
崩壊の足音
数日後の撮影中、異変は起きた。
トークの最中、不意に視界が歪んだ。メンバーが楽しそうに自分を弄り、いつもの「返し」を期待しているのがわかる。けれど、喉の奥が引き攣って、言葉が出てこない。
しろ(また、叩かれる。何を言っても、どうせ嫌われる)
ニキ「……しろせんせー? どうした、お前。フリーズしてんぞ?」
ニキの心配そうな声。それが、今の彼には「監視」のように感じられた。
しろ「あ、いや……ちょっと、ツッコミをどうやって返そうかと考えてただけ」
なんとか絞り出した声は、自分でも驚くほど震えていた。
その日の夜。彼は暗い部屋で、ただ一点を見つめていた。
スマホの通知が鳴るたび、心臓が跳ね上がる。画面を見るのが怖い。けれど、見ずにはいられない。自分がどれだけ否定されているかを確認しなければ、立っていられないような、底なしの不安。
しろ「もう、無理だ」
その一言が、ぽつりと唇からこぼれた。
仮面の終わり
彼は、おなごけんのメンバーを愛していた。リスナーを喜ばせたいと思っていた。
けれど、鏡に映る自分は、ボロボロに擦り切れた布切れのようだった。
しろ「ごめん、みんな」
しろせんせーは、メンバーが集まるグループチャットを開いた。
いつもなら、ふざけたスタンプや自信満々の言葉を投げ込む場所。
震える指で彼が打ち込んだのは、これまで一度も見せたことのない、一人の人間としての「悲鳴」だった。
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