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110まで待てなかった😜
冷徹な軍人として育てられた滉斗と、慈愛の王として立ち尽くす元貴。火花散る攻防の果てに、凍りついていた時間がついに動き出す。
「黙れ……! 私に、過去などない」
滉斗は吐き捨てると、迷いを断ち切るように氷剣を振り下ろした。凄まじい冷気が部屋を白く染め、鋭い氷の刃が元貴に迫る。しかし、衝突の瞬間、紅色の淡い光が半球状に広がり、その一撃を弾き返した。
「防御術……。相変わらず、それしか使えないのか」
「そうだよ、ひろぱ。僕は誰も傷つけられない。……でも、君にだけは、僕を傷つけてほしくないんだ!」
幾度となく振り下ろされる氷の連撃。そのたびに防御の障壁が火花を散らす。元貴の額には汗がにじみ、術式の行使による疲労が色濃く現れていた。それでも元貴は、一歩も引かずに叫び続ける。
「覚えてる? あの午後、椿の花を咲かせたこと。僕を守るって言ってくれたこと! 君の剣は、誰かを絶望させるためのものじゃないはずだ!」
「うるさい……黙れ……!」
滉斗の脳裏に、ノイズのような記憶が奔る。琥珀色の夕暮れ、小さな手のぬくもり。完璧に調教された「兵器」としての意識が、元貴の言葉によって内側からひび割れていく。
その時、背後の扉が轟音と共に吹き飛んだ。
「若井殿! 手こずっているのか。我らも加勢する!」
現れたのは、血気に逸った反乱軍の援軍たちだった。彼らは無防備に立ち尽くす元貴を見るや否や、一斉に殺意を向ける。
「戦えぬ王など不要! 処刑せよ!」
銃口が向けられ、刃が煌めいた瞬間――。
滉斗の身体が、思考よりも先に動いた。
「……ッ!」
凄まじい速度だった。滉斗は元貴の腰を抱き寄せると、窓ガラスを突き破って外へと躍り出た。落下する刹那、滉斗が空中で剣を一閃させると、瞬時に巨大な氷の結晶が足場となって二人を受け止め、滑り落ちるように地上へと降り立つ。
気づけば二人は、王邸前の広場にいた。そこは皮肉にも、数千の反乱軍に包囲された絶体絶命の戦場だった。
「若井……! 貴様、何を血迷った! その男を渡せ!」
かつての部下たちが困惑と怒りに声を荒らげる。元貴は、自分を抱きかかえたまま離さない滉斗の腕の震えを感じていた。
滉斗はゆっくりと元貴を背後に隠し、敵軍の前に立ちはだかった。その瞳には、先ほどまでの虚ろな冷徹さは消え、鋭く、それでいてどこか晴れやかな「意志」が宿っている。
「……任務は変更だ」
滉斗の声が、戦場に低く響き渡る。彼はかつて元貴に渡された翡翠の守り袋を、軍服の胸元から引きずり出した。忘れたはずの約束。捨てたはずの心。それらは、ずっとそこにあったのだ。
「俺の剣は、王を討つためのものではない」
氷剣が鞘に収まることなく、さらに深い青白い光を放ち始める。周囲の気温が急激に下がり、反乱軍の足元が次々と凍りついていった。
「この男は、俺が一生守ると決めた男だ。指一本、触れさせない」
不器用で、あまりにも遠回りした答え。
元貴は、滉斗の広い背中を見つめ、溢れ出しそうな涙をこらえて微笑んだ。
「……おかえり、ひろぱ」
最強の剣と、最強の盾。
15年の空白を経て、二人の真の共闘が今、始まった。
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コメント
2件
ひろぱかっこいいぞ!そのまま一生大森さんを守れ!w
よかったぁ!おかえりだよ😭ほんとに