村から離れた森へと汽車に揺られながら向かっていると、自分はいつの間にか眠っていた。そして、目が覚めると、目の前には中世風の城かのような外観をした建造物が俺の目に映ったのだ。
「すごい・・・」
まるで童話の話に自分が入り込んでしまったと錯覚してしまう程に、その城は現実味を帯びていない建物だった。
*
生成色のカーテンを開けると、窓の外から朝日の光が深紅の絨毯を照らしていた。
「おはようございます、014様」
後ろを振り返って一礼をしたのち、頭を恐る恐る上げると、部屋中を真っ黒に染めている煤が一目散に目に映り、俺は小く息を吐いた。
「おはよう・・えっと、貴方、名前は何?」黒い人がゆっくり起き上がると、その人は今、笑っているのか、はたまた怒っているのかが、俺にはさっぱり分からなかった。
「名前はないです。」判断することができなかった俺は、正直に事実を口にした。
すると、声色何一つ変えずに
「うーん、それならいっくんて言うのはどう?」手を顎に当てて、首を少し傾けながらそう言ったのだ。
「わかりました、これからよろしくお願いします。」
「こちらこそよろしく。」
俺は上を見上げると、黒く染まっていた天井が、少しだけ元の色に戻っていた気がした。
to be contents .
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