silence
「じゃ、私はお茶入れて来るから。」
「はーい。」
僕は少女__ノアと2人きりにな
った。
いや気まず!!!!
「あの…レオンさん。」
「はひッ!」
予想外にも、最初に話し出したのはノアの方だった。
いきなり話しかけられた事によって、変な声が出る。
「えっと、お仕事中のクロエさんって、どんな感じですか?」
質問に対して、少し前…俺と同僚だった頃のクロエを思い出す。
「…仕事熱心で、効率を良くする為に色々考えてるよ」
「そうなんですね。」
「最近は、ずっと君の話をしていてね。
前も、 『ノアを待たせる訳には行かないって』 急いで準備していたよ。」
「うぇ!本当ですか…えへへ、ちょっと嬉しいです。」
(嘘は言ってない嘘は言ってない)
とびっきりの笑顔に罪悪感が湧いてくる。
今度お土産でもあげよう…
「レオンさんってどんなお仕事されてるんですか?」
「僕?僕は今、魔法に対しての研究をしているよ。」
「へぇー、お仕事仲間って言ってましたよね。という事は、クロエさんも魔法の研究をしてるんですね。」
(やべっ失言だ…怒られる)
「クロエさんの魔法って一体なんなんですか?」
「僕も知らないって言うか…」
「そう!君の魔法は?おじさん気になっちゃうなー、なんちゃって 」
「……私は、魔法を使えません。」
「……ふえはへー」
終わった!!!!
全ての地雷を踏み抜いた!!
「……レオンさんの魔法は?」
地獄みたいな空気の中、ノアが気を使って話しかける。
「僕の魔法は、マジカルブレイク。魔法を破壊したり、分析したり……使い道のない魔法だよ。」
「魔法。いいなぁ使ってみたい。」
(罪悪感MAXなんだが?)
1つ、聞きたい事があったはずだ。
こんな話題は出しにくいが、僕の研究に成果が出るかもしれないし、……
勇気を出して、凍った会話を取り返す。
「あの…ノアちゃん。君に冤罪をかけられた事件に着いて、聞きたいんだ。」
「え?」
「僕の魔法は、鑑定ができる!もしかしたら…真犯人を見つけられるかもしれない。
お願いだ。協力してくれないか。」
「……クロエさんから、聞いたんですか?」
「ああ。」
「分かりました。事件の事、話します。レオンさんは多分、クロエさんに信用されてる気がするので。」
「っ!ありがとう」
「と言っても、一言で語れる話です。」
「私の両親が殺され、事件現場には魔法の痕跡が残っていた。
その魔法は…綺麗な、綺麗な蝶の魔法でした。
そのあとは…まぁクロエさんから聞いてると思います。
何故か魔法の使えない私が犯人にされて、逃げました。」
「………」
「ありがとう。犯人探してみる。」
「ありがとうございます!」
「あのさ、1つ、聞いてもいい?」
「はい。」
「君は犯人の事、どう思ってる?」
「犯人の事……
一言で言うと、殺してやりたい。私の大切な両親を、家族を、奪った奴を許せない。」
「…………そっか、そっか。」
「探してみるよ、犯人。」
「ありがとうございます!本当に感謝しきれません!」
口が裂けても言えない事実を心に秘めながら、クロエを待った。
心には少しばかりの、消失感と無力感が渦巻いている。
(そっか。だからなのかな)
眠るように周りが見えなくなった