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夜が更けていく。
雨が窓を打ち、過去と現在の境界を曖昧にしていく。
美咲は立ち上がり、台所から封筒を取り出した。
中には、一年前の写真。
雨の夜、妹の背後に立っていた“もう一人の影”。
その顔を、俺は見て凍りついた。
――それは、俺だった。
「兄さん、あの夜……私、あんたに電話したの。覚えてる?」
「……まさか」
「来てくれたのよ、現場に。でも、血を見て……何も言わずに私を帰した」
脳裏に、一瞬の断片が蘇る。
血の匂い。妹の泣き声。自分の震える手。
思い出した。確かに、あの夜――俺は現場にいた。
美咲は静かに微笑んだ。
「ねえ兄さん。だから、私たち、似てるのかもね。
――“真実”から逃げるところが」