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_ ℒ .
347
#茈赫
翌日
赫は教室の後ろで窓の外を見ていた
朝から曇りだった
雨が降りそうだな。そうぼんやり考える
教室ではみんなそれぞれ楽しそうに話していた
ゲームの話
テレビの話
週末の話
明日の約束
赫は相変わらず、その輪の外側にいた
別に慣れている
今更、寂しいとは思わない
そう思っていた
「おはよー!!」
元気な声が教室に響いた
赫は顔を上げた
雨乃 瑞だった
胸に鮫のぬいぐるみを抱えている
学校に持ってきてはいけないはずなのに、なぜかいつもこっそり持ってきてる
先生は何度か注意してたが、瑞が泣きそうになるので、最近は黙認されている
瑞は教室に入るなり、赫を見つけた
ぱっと顔が明るくなる
「あっ!」
嫌な予感がした
「暇乃くん!」
一直線にこちらに走ってきた
赫は机に突っ伏した
「……」
「おはよう!」
「………」
「おはよう!!!」
「……聞こえてるわ…」
「じゃあ返事してよ!」
「やだ」
「なんで?」
「めんどくさい」
瑞は少し黙っていた
「そっか!」
なにに納得したのか、なぜ納得したのかわからない
赫は小さくため息をついた
昨日の帰り道
結局、瑞と途中まで一緒に帰った
特に話したわけじゃない
ほとんど、瑞が一方的に話していた
それなのに…
まるで、友達みたいな顔をしている
赫はそういうのが苦手だった
期待して
仲良くなったと思ったら
すぐ離れていく
そんなのばっかりだから
昼休み
赫はいつものように校庭の隅に行った
1人になれる場所だった
しかし
「いた!」
聞き慣れた声
振り返る
やっぱり瑞だった
「なんで来るんだよ」
「だって、暇乃くん見つけたから!」
理由になってねぇよ……
瑞は隣に座った
鮫のぬいぐるみも一緒だった
赫はそれを見た
「それ」
瑞はきょとんとする
「鮫くん?」
「なんでいつも持ってるんだ?」
瑞はピタリと動きを止めた
少しだけ困った顔になる
「……友達だから」
赫は首を傾げる
「ぬいぐるみだろ?」
「違うよ」
瑞は鮫くんをぎゅっと抱きしめた
「…、鮫くんはお話聞いてくれるもん」
その声は少し小さかった
「お母さん、忙しいし……」
ぽつり。
「だから鮫くんに話すの」
赫は何も言わなかった
瑞は続ける
「嬉しいことも」
「悲しいことも」
「怖いことも」
そして少し笑った
「鮫くんは、怒らないから」
その言葉に
赫は少しだけ胸が痛んだ
怒らないから。
たったそれだけで友達
赫にはわからなかった
放課後
空は灰色になっていた
帰ろうとした時。
職員室の方から怒鳴り声が聞こえた
反射的に体を震わせた
心臓が跳ねた
家で何度も聞いた声に似ていた
「だから、何回言ったらわかるの?! 」
女性の声
多分、問題児たちが怒られてるんだろう
よく、壁に穴をあけたり、窓を割ったりしていた奴ら
先生はずっと無視していたが、ついに堪忍袋の緒が切れたのだろう
その瞬間。
近くにいた瑞がしゃがみ込んだ
耳を塞ぐ
震えていた
「……瑞?」
そう呼ぶ
返事はない
瑞の顔は真っ青だった
呼吸が荒い
「おい」
「…だいじょうぶ?」
全然大丈夫じゃない
赫はわかった
その顔を知っていた
自分も同じ顔をしたことがあった
怒鳴り声が怖い人の顔だった
瑞は無理矢理立ち上がった
笑おうとして。
でも、うまく笑えていない
「帰ろっか」
震えた声だった
赤は少しだけ迷った
人に踏み込むのは嫌いだった
聞いたらダメな気がした
でも。
「……お前も?」
瑞が止まった
「え?」
赫は目を逸らした
「怒鳴られるの…」
沈黙。
数秒。
そして
瑞は小さく頷いた
「うん」
風が吹いた
雨の匂いがした
「お母さん、怒ると怖いんだ」
瑞は笑った
無理矢理。
「でも優しいよ?」
まるで、誰かに言い聞かせるために
「本当は優しいもん」
赫は何も言わなかった
言えなかった
その気持ちが少しだけわかったから
好きでいたい。
怖いのに。
苦しいのに。
それでも、家族だから。
2人は並んで歩き始めた
ぽつ。
雨が落ちる
ぽつ。
ぽつ。
やがて本降りになる
「うわっ?!」
瑞は慌てる
傘を持っていなかったから
赫は考えた
無言で傘を差し出す
瑞は目を丸くした
「え」
「…入れよ」
「いいの?」
「濡れるだろ?」
瑞は数秒固まった
それから
笑った
「ありがと!」
赫は返事をしなかった
ただ、前を向いて歩いた
でも少しだけ。
本当に少しだけ。
1人の帰り道よりも悪くない気はした
雨雲の向こうは見えなかったけど、
空にはきっと、もう一番星が出ていた
コメント
6件
え 、 なんですか この 神作は 。 とりあえず 𝑲𝑰𝑺𝑺 __ 😘😘 瑞 くんが いつも 鮫さんを 持ってる理由に 涙です 🥲🥲 赫 くんが 2人の 帰り道を 悪くないと思えてるの 良きです 😭 がち 涙腺 ゆるすぎて 泣いちゃったよ 😖💧 続き待ってます 🫡
神作すぎ!!! 核のわたしよりうまい気がしてきた これからも見るね!!
読みながら胸がぎゅってなった……。「鮫くんは怒らないから」って言葉に、瑞くんの寂しさが全部詰まってる気がして。怒鳴り声に耳を塞ぐ場面で、赫くんが自分と重ねてるのも切なかった。言葉にしないけど分かり合える2人、尊いです。最後の傘、ほんと良かった。続き待ってます!