ご本人様に一切関係はございません。
irxs様より
1 × 2 × 1
R指定無し
最近暑くなって来ましたね。
夏のお話ですがぜひ読んで下さい。
蝉がうるさい夏の日。
夏休みに入ってすぐの、7月のある日。
家の庭日陰にしゃがみ込みながら汗だくでアイスを口に頬張った。
遠くで風鈴の音が聞こえる。
💎┆あっついなぁ…
誰にいうとでもなく、
ただ口からこぼれ落ちた言葉。
のつもりだった。
?┆あっついねぇ…
僕の呟きに応えた声。
ふと、先程まで誰もいなかったはずの横を見ると、
放った言葉とは正反対の涼しげな顔をした男の子が座っていた。
💎┆え……、いやいや…誰?
💎┆ここ、僕の家の庭なんだけどどっから入ったの…?
門を開ける音も立てず、いつの間にか隣に現れた男の子。
夏とは思えない程、汗一粒すら流さず佇んでいる。
そんな彼はこちらを見やって一つ笑う。
そして、笑んだまま口を開く。
🐤┆りうらは、りうらだよ?
🐤┆大分前から此処にいたんだけど…気付かなかった?
そう言った。
遠くから、涼しげな風鈴の音がした。
🐤┆にしても、此処いいねぇ。木がいい感じに木陰作ってて。
🐤┆りうら、毎日此処来て涼もっかな。
💎┆…いや、そもそもここ僕の家だし…
マイペースな相手の気配に押され気味になりつつも、何となく彼の隣に腰掛けてみる。
🐤┆君だけの家じゃないでしょ?家族とか、家にあるモノとかも、此処に住んでるし。
💎┆…それはそうだけど。
🐤┆だったら、此処はりうらの家でもあるよ。
💎┆いや、それは違うと思う…
どこか掴みどころの無い、ふわふわとした言葉。
それでも何故か繰り広げる会話が面白くて、自然と笑みが零れ落ちる。
💎┆なんか君、面白いね。
🐤┆そう?
心底意外だ、とでもいう風に目を瞬かせ、こちらを見やる。
💎┆何というか…不思議な感じがする。
💎┆話が少しズレてるのに、何故か納得しちゃうんだよね。
僕のその言葉を聞き、彼は小首を傾げる。
そして、その澄んだ真紅の目で僕を見つめ、口を開いた。
🐤┆りうらからしたら、君の方が不思議だよ。
💎┆…え?
🐤┆なんでそんなに笑っていられるの?
💎┆なんで、って…笑っちゃダメなの…?
🐤┆いや…、でもだって君は、もうすぐ…
そこまで言い、彼はいきなり口を噤んだ。
そして少し暗い顔で考え込んだ後、言葉を漏らした。
🐤┆…やっぱいいや。なんでも無い。
🐤┆君自身が気付かないといけないことだ。
その顔は、先程までの幼い表情は消え去り、少しの憂いを湛えていた。
まるで全てを見透かしているかのような。
…でも、そんな表情もまばたきの隙に消え去り、先ほどと同じ無邪気な笑みを浮かべていた。
🐤┆…ねえ、一緒にちょっと出かけようよ。
🐤┆ほとけっちと行きたいところあるんだよね。
そう言って彼は僕の手を引いて立ち上がらせる。
💎┆…距離感の詰め方異常じゃない?
🐤┆そう?りうらは普通これくらいだよ。
彼はそう言って涼しげに笑った。
夏の気だるさが少し、無くなったような気がした。
これは、僕の人生を変えた少年との一つのお話。
そして、淡くて脆い、たった一夏の恋のお話。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!