テラーノベル
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「……っ、⸝⸝」
なつは、自分の口元を手で隠していた
顔は真っ赤で、耳までほんのり赤くなっている
(……可愛い)
いつもなら、ここで可愛いと大騒ぎしているところだけど、 今はそれどころじゃない
(やばいやばいやばいやばい…スクープになってしまう)
頭の中を、嫌な想像が駆け巡る
(カメラにも絶対写ってたよな?絶対そうだよな?あー、終わった…)
今回の企画は、俺たち自身が持っているカメラでも撮影している。 つまり さっきの一部始終も もしかしたら、 全部映っているかもしれない
「……」
俺が固まっていると、なつがちらっとこちらを見る
「…あ、えと……⸝⸝」
なつはまだ顔を赤くしたまま、視線を逸らした
「その… ⸝⸝は、早く行こうぜ!⸝⸝暗いところ、やだし…⸝⸝」
「……あ、お、おう」
俺も慌てて立ち上がる。 なつも続いて立ち上がり、二人並んで歩き始めた。 さっきまでなら 怖いだの 何か出てきそうだの、 くだらないことを言いながら歩いていたはずなのに 今は
お互いに何も言わない。 聞こえるのは、足音と不気味なBGMだけ
(…気まずい)
さっきのことが頭から離れない。 一歩進むたびに、 隣にいるなつの存在を意識してしまう
そんな時、 ふと 自分の袖に違和感を覚えた
「……?」
視線を落とすと なつの手が、 俺の服の袖をぎゅっと握っていた
「……」
どうやら、ずっと握ったままだったらしい
(……可愛いかよ)
さっきまで真っ赤になっていた顔も、俺の 袖を離さない手も、 全部可愛く見えてしまう
いや、元々可愛いんだけどな
🌸視点
俺らは3番目、つまり最後にお化け屋敷へ入った。入る前から、先に入ったいるまとなつの叫び声や、すちとみことの悲鳴が聞こえてきたせいで、こさめは入る前からすっかり怯えている。さっきまで元気にしていたのに、入口の前に立った途端、俺の隣から離れようとしなくなった。
「うわぁ、結構雰囲気あるね…」
こさめが隣を歩きながら、周囲を見回して小さくつぶやく。薄暗い通路の中には、古びた壁や壊れた家具なんかが置かれていて、いかにも何か出てきそうな雰囲気が作り込まれていた。
「そうだね〜…結構色々こだわってるみたいだし…あ、こさめ足元気をつけてね」
俺がそう言って前方を照らすと、こさめも慌てて足元へ視線を落とす。
「うんっ…!明かりも全然ないし、カメラのライトでゴールまで目指さなきゃだね」
こさめの言う通り、屋敷の中にはほとんど明かりがない。頼りになるのは、俺たちが持っているカメラの小さなライトだけ。先がほとんど見えない暗闇の中を、俺とこさめはゆっくりと進んでいった。
(カメラも回ってるし、なにか話題を作らなきゃだな……いるなつペアもすちみこペアも、関係がごっちゃになってるし、ここでなんとかカバーしなきゃだよな)
そんなことを考えながら、俺は隣を歩くこさめへと視線を向けた。せっかく番組でお化け屋敷に来ているんだ。ずっと黙って歩いてるだけじゃ、さすがに撮れ高も何もない。俺は暗闇の中でカメラのライトを前方へ向けながら、無難そうな話題を振ることにした。
「こさめって、センターじゃん?」
「うんっ、そうだよ!」
こさめは少し嬉しそうに頷く。怖がっていたさっきまでとは違って、好きな話題になった途端に声が明るくなった。
「センターって、やっぱ大変?」
「そりゃあ大変だよ!リーダーじゃないけど、センターだし…プレッシャーめっちゃ感じるし!センターだからミスも目立ちやすいから、いっぱい頑張るだ!」
「へー……」
こさめの話を聞きながら、俺は相槌を打つ。こうして話している間は、少なくともお化け屋敷のことを考えずに済むらしい。
さっきまで強張っていた表情も、少しだけ柔らかくなっていた。
「なにか、夢とかある?」
「夢?グループでドームに立つ!っていう目標があるよ!ぁ、でも…個人的な目標はないなぁ」
「へー、そうなんだ…」
こさめの答えを聞きながら、俺は少しだけ考える。そして、隣から返ってきた問いに、ゆっくりと視線を前へ向けた。
「らんくんはある?」
「俺〜?そうだなぁ…」
俺は、小さい頃から、なっちゃんが憧れの存在だった。 何もしていないのに、その場にいるだけでキラキラしていて、笑うだけで誰かが救われる。現に、アイツの姿を見て人生が変わった奴だっている。俺は、そんななっちゃんが羨ましかった。
俺にはない、才能の塊だった。
演者として、負けている気がした。
……いや、きっと、負けていたんだろう。
子役時代のなつは、本当にキラキラしていた。立っているだけで周囲の目を引くようなオーラがあって、言葉にしなくても感情が目だけで伝わってくる。まさに、天才って言葉が似合う子だった。
でも、今のなつには、あの頃のキラキラがない。
俺は、知ってるよ。
君が一時的に芸能活動を辞めた、本当の理由を。
君は「学業に専念したかった」って言ってたけど…本当は、色々あったんだもんね。
だからこそ、俺には夢がある。
俺の夢は、そんななっちゃんを、もう一度あのステージに立たせてあげること。 昔みたいに、誰もが目を奪われるような場所で。
もう一度、君自身が心から笑える場所で
「んー、ないかなぁ…」
俺は少し考えてから、適当にそう答えた。さすがに「なっちゃんをもう一度ステージに立たせたい」なんて、今ここで話すことでもない。こさめも深く聞くことはせず、うんうんと頷いてくれた。
「そーだよね、夢って中々見つけられないよね〜…あ、待ってあるかも」
「え、なに?」
急に何かを思いついたらしいこさめが、ぱっと顔を上げる。俺が首を傾げると、こさめは自信満々に胸を張った。
「タワマンに住む!✨️ タワーマンションのエントランスで、こうふぁぁぁ!ってしたい!✨️」
「ふぁぁぁ…?浄化されたいってこと?」
「ちがうよ!」
思わず聞き返すと、こさめが即座にツッコんできた。
「じゃあ、ふぁぁぁって何!?」
「なんかこう…タワマンのエントランスって、広くて綺麗じゃん?そこでセレブみたいに、ふぁぁぁ…ってしたいの!」
「なるほど……?」
説明を聞いても、いまいち分からない。
けど、こさめがめちゃくちゃ楽しそうなので、たぶんこれでいいんだろう …というか。
「こさめ、夢めっちゃ具体的じゃん」
「でしょ!?✨️」
さっき「個人的な目標はない」って言ってた奴とは思えないくらい、目を輝かせていた。
しばらくして、俺たちはようやくお化け屋敷を出た。外の明るさがやけに眩しく感じて、こさめもほっとしたように大きく息を吐く。
「追いかけられる系じゃなくてよかったね」
「追いかけられなくてもこさ的には十分怖かった」
「そっか、笑」
そう言いながら、俺はさっきまでのことを思い出す。
(さっき俺の袖が千切れるくらい引っ張ってきたもんな……なっちゃんと肩を並べるほどのビビりだ、この子)
まあ、無事に出てこられたんだし、結果オーライか。
「あ、みんなー!おまたー!✨️」
先に出ていたみんなを見つけると、こさめが手を振りながら駆け寄っていく。
「おかえりっ、こさめちゃん!」
みことが笑顔で迎えてくれた。けれど、こさめはそんなみことを見た瞬間、少しだけ首を傾げる。
「あれ、みことくん…なんかスッキリしてるね?なんかいいことあった?」
「え?えーっと、、色々ね⸝⸝
なっ、すちくん?」
みことが少し照れたように隣へ視線を向ける。
「うん…そうだね、みこちゃん」
すちも穏やかに頷いた。
(なんだろう…?)
さっきまでのお化け屋敷で何かあったのは間違いなさそうだけど、俺らにはさっぱり分からない。
(まあ、二人が妙にスッキリした顔をしてるなら、きっと悪いことではないんだろうな…)
「いるまくんとなつくんは?こさめたちよりも、先に行ったよね?」
こさめが辺りを見回しながら尋ねると、すちが何でもないように指を向けた。
「あそこで、全身冷やしてるよ」
「……?」
すちが指さした方へ視線を向ける。すると、少し離れたところに置かれた椅子に、いるまが深く腰をかけていた。
顔を上げたまま、目元には水で濡らしたらしいタオルを乗せている。その隣では、なつが両手でぱたぱたと顔を仰いでいた。
「なんか、2人とも顔真っ赤で帰ってきて」
「……え?」
こさめが目を丸くする。 俺も二人の方をもう一度見た。 確かに、めちゃくちゃ赤い。
お化け屋敷がそんなに怖かったのか、それとも中で何かあったのか。
「いるまくん、大丈夫ー?」
こさめが心配そうに声をかけると、いるまはタオルを目元から少しずらして、こちらを見た。
「…大丈夫」
そう答える声まで、なんとなくぎこちない。
(…絶対なんかあっただろ)
俺は思わず、なつの方へ視線を移した。なつは俺たちの視線に気づくと、さらに勢いよく顔を仰いでいた。
こうして、俺らのお化け屋敷での肝試し企画は幕を閉じたのであった。
🍍視点
あの撮影から数日後。
ピピピピピピピピ――。
「っ、、38℃… ⸝⸝」
朝起きると、体がやけに重かった。布団にくるまっているはずなのに、凍えるほど寒い。喉もイガイガしていて、うがいをしてみても一向によくならない。
もしかしてと思い、俺は体温計を取り出して脇に挟んだ。そして、しばらくして表示された数字を見て、思わずため息をつく。
まあ、こうなってしまった。
「マネージャーに連絡……」
スマホを取り出そうとして、画面に表示された時刻を見た瞬間、目を見開いた。
11時。
「うそ”ッ…!? ぅ”、ゲホッゴボッ!」
思わず声を上げたせいで喉にさらに負担がかかり、咳き込んでしまう。慌てて口元を押さえながらスマホを確認すると、通知にはマネージャーからの不在着信がいくつも溜まっていた。
俺は急いでLINEを開き、熱が出てしまったことと、起きるのが遅くなってしまったことを報告する。すると、送ってからすぐに既読がつき、今日は安静にしておくようにと返事が来た。
(今日スケジュールやばいのに…全部、潰れた。もっと気をつけるべきだった…)
(風邪薬、棚にあるよな……)
重い体をなんとか起こし、ふらふらとした足取りで棚まで向かう。背伸びをして、高いところに置いてあった薬の入った小さな箱を取り出した。箱を開けると、中にはいくつもの薬が入っている。
(これか、えっと…?)
『かならず食事をした後にお飲みください』
(あ”~…朝飯作らなきゃいけねーのかよ…)
今の俺には、そこまでの体力は残っていなかった。何か簡単なものを作ることすら億劫で、立っているだけでも体がふらつく。
そこで、俺はLINEを開いてらんに連絡した。
前に熱を出したときも、らんに面倒を見てもらった。申し訳ないとは思うけど、今回もらんに頼るしかない。
しばらくして、らんから返信が届いた。
『ごめん!今日大事な映画の撮影で、今北海道にいる!』
「北海道…」
東京からかなり距離がある。
たとえ今日の撮影が終わったとしても、明日の夕方くらいまでは帰ってこないだろう。
「どう、しよ…他にアテ……」
そこで言葉が途切れた。 突然、視界が大きく揺れた。床がぐっと俺の方へ近づいてくる。
いや、違う。
(俺が床に近づいてんだ…)
そう気づいた瞬間、体から力が抜けた。
ドサッ…
(あれ、俺…寝てた? あぁ……倒れたんだっけ? でも、冷たくない…もしかして床じゃない? でもふかふかしてるし、あったかい…)
ぼんやりとした意識の中で、そんなことを考える。体はまだ重くて、頭も上手く働かない。俺はゆっくりとまぶたを開けた。
ぼやけた視界の中に、紫色と黒のシルエットが浮かんでいる。誰なのか、最初はよく分からなかった。
けれど、少しずつ視界がクリアになっていく。
「!、ぃ”る……ま……」
ようやく見えた顔に、思わず名前がこぼれた。声はガラガラで、喉が焼けるように痛い。それよりも、どうしてここにいるまがいるのかが分からなかった。
「!!、よかった……」
俺と目が合うと、いるまは安心したように微笑んだ。
「らんから聞いて、なつのマネージャーさんに合鍵貸してもらった」
「…あい、かぎ?」
「汗やばいな…タオルで拭くから、一旦脱げるか?上半身だけ捲るでもいいから」
「う”ん、…」
俺は重たい体を起こそうとするけど、思うように力が入らない。いるまに支えてもらいながら、なんとか上半身を起こし、ゆっくりと上の服を捲った。
そのままいるまの方を向くと、一瞬だけ、いるまの頬が赤くなったような気がした。
(……?)
でも、熱のせいでそう見えただけかもしれない。今はそんなことを気にする余裕もなく、俺はそのまま力を抜いた。
いるまは濡らしたタオルを手に取ると、汗で濡れたところを優しく拭いてくれる。
「昨日雨酷かったもんな…傘さした?」
「んーん、…両手塞がりたくなくて…」
「はは、なにそれ……笑」
小さく笑ういるまの声を聞きながら、俺はぼんやりと目を閉じた。熱でぼーっとしているせいか、その声がいつもより近くに感じられた 。
タオルで汗を拭き終えると、いるまは俺の体を支えながら、またゆっくりとベッドへ横にしてくれた。枕に頭を預けると、張り詰めていた体の力が少しだけ抜けていく。
「冷えピタ買ってきたけど、貼りたい?」
「うん…はって、… 」
「ん、分かった」
いるまの声は、いつも優しい。でも今は、それよりもずっと優しくて、あたたかい声に聞こえた。熱のせいなのか、その声を聞いているだけで胸の奥までほかほかしてくる。
いるまが冷えピタを取り出す。そして、俺の前髪をそっと手でかきあげた。
「ちょっと冷えるからな?」
そう言われた直後、ぴたっと冷えピタが額につく。
「んっ、…」
ひんやりとした感覚が額に広がる。最初はキンッと冷たくて、少し嫌な感じがしたけれど、しばらくするとその冷たさにも慣れてきた。熱を持った額にはちょうどよくて、俺は小さく息を吐いた。
いるまは俺の頭から耳、頬へと順番にそっと手を動かしながら、優しい眼差しで俺を見ていた。その表情を見ていると、不思議と体の力が抜けていく。
「いるまぁ、… ⸝⸝」
「ん?」
俺に向けられた優しい笑顔を見ているうちに、自然と口元が緩んだ。自分でも分かるくらい、へにゃっとした笑顔になってしまう。
「……っ、⸝⸝」
そんな俺を見たいるまが、また少し頬を赤くした。
(あったかくて、やさしい…⸝⸝)
熱でぼんやりする頭の中で、そんなことを考える。 そんな彼が、俺は……
「す、き… ⸝⸝」
「え?」
いるまの声が聞こえた気がした。
けれど、その声を最後に、俺の意識はゆっくりと途切れていった。
コメント
1件
お化け屋敷…いいですね✨
りんご
222
#すち受け
瀬那
227
クッキー
900
#御本人様とは一切関係ありません
# 一生 そばにいて .
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