次の日も瀬南くんはE組に来てくれた。
中学時代から苦手だった英語…中学の塾の先生にも高校受験の際『五十嵐さん、あとは英語だけなんだけどね…』と何度言われたか。
塾の先生でも苦労した私の英語力。
「……英語に関してはだいぶポンコツ」
瀬南くんもかなり苦戦しながら私に英語を 教えてくれた。数学の時よりも教え方が かなりスパルタで、その日は心身ともに疲労しててぐっすり眠れました。
そして再試験日。
瀬南くんから教えていただいたおかげで、なんとか再々試験を免れたのでした!
「五十嵐、再試おつおつ!」
「あはは、棚橋くんもおつおつ!」
「友ちゃんも再試?おつかれー!」
「麻実ちゃんも?お疲れ様ー!」
顔見知りが多い五十嵐は色んな生徒に声をかけられる。コミュニケーション能力の高さは本当にこの学年の中でもトップクラスだ。
「瀬南くーん!見て見て!セーフだった!!!」
「数学はまだしも何で僕が教えたのに、こんなギリギリな点数なわけ。信じらんないんだけど」
英語 61点
数学A 88点
合格基準点は60点。
「英語受かってよかった~!」
「80点は取ってくるかと思ってたのに」
「え?!ごめん、でも英語は本当に苦手で1回で合格できる方が奇跡で!」
「…まぁ、何はともあれ合格おめでと」
「瀬南くんのおかげだよ!本当にありがとう!」
「どういたしまして」
私が再試験を受けている間、瀬南くんは部活に行っていたらしい。再試験が終わると帰る準備をして迎えに来てくれたのだ。
「早く鞄取っておいで、帰るよ」
「うん!」
瀬南くんと放課後寄り道できる!と、超ご機嫌な私に彼も気づいたようで
「再試験終わってそんなに嬉しい?」
「ん?それもあるけどー」
「放課後に寄り道出来るのが嬉しい?」
「っ」
言い当てられてしまうとなんかめちゃくちゃ恥ずかしいんですが…!思わず瀬南くんの方に顔を向けるとくすくすと笑われた。
「分かりやすいねほんと。」
「そんな顔に出てる?」
「久しぶりに飼い主に散歩連れてってもらえる犬みたい」
「例え…」
「まぁ見てるこっちとしても悪い気はしないけどね」
そう言ってスマホを取り出した瀬南くん
「どっか行きたいとこある?」
「お腹すいた!」
「言うと思った。通学路から少し外れた所に大判焼き売ってるとこあるけど行く?」
「行く!」
「ん、じゃあ行くよ。」
再試験中に瀬南くんの教えを思い出して、ギリギリ解けた問題のこと、コンクールのチラシが完成間近なこと…そんな話をしていると大判焼きのいい匂いが漂ってくる。
「あ、いい匂い!」
「うん、僕も1つ食べようかな」
お店のメニューには
・こしあん
・つぶあん
・チョコレート
・カスタード
と書いてある
「カスタード食べたい!」
「僕はこしあんかな。1つでいいの?」
「うん、1つでいい!」
お店の人に注文したら、手元に熱々の大判焼きが届いた。
「熱い…」
「やけどしないようにね」
そう言って近くのベンチに腰掛けて、大判焼きを半分に割ると湯気が出てきた
「はい、瀬南くん半分あげる!」
「くれるの?」
「うん!カスタード美味しいと思うからお裾分け!」
「じゃあ先にそっち食べようかな」
「いただきます!」
「いただきます」
2人して同じようなタイミングで大判焼きを口に運ぶ。
「ん、おいひー!」
「美味しいね」
「カスタードの大判焼き初めて食べた」
「僕も餡子が入ったのしか食べたことない」
「こっちも有りだね」
「まぁこの生地にカスタードクリームが合わないわけがないしね」
瀬南くんも気に入ったのかパクパクと食べ進める。
私が食べ終わる頃に彼は自分のこしあん大判焼きを取り出して、綺麗に半分に割ってくれた。
その時に目線を下に向けたせいで眼鏡がズレてしまい、塞がった手で押し上げようとしてレンズに指が触れてしまったみたいだった。
「……汚れた」
「眼鏡のレンズ、ちょっと触るだけで汚れたりするよね。大判焼き持ってようか?眼鏡拭く?」
「ありがと」
私が大判焼きを預かると彼はブレザーの胸ポケットから眼鏡拭きを取り出し、眼鏡を外してレンズを拭き始めた。
「……」
いや、GW辺りから何となく分かってはいたけど…瀬南くんってやっぱりめちゃくちゃ顔整ってる!隣にいるとその綺麗なお顔がとても見やすい
「ん?何?」
私があまりにも見つめすぎていたせいか、眼鏡をかけていない素顔の瀬南くんがこちらを向いた。
「せ、瀬南くんて」
「?」
「瀬南くんってやっぱりめちゃくちゃ顔整ってるよね」
「……は?」
「いつもの瀬南くんもいいけど、眼鏡かけてない方がかっこいい」
唐突に褒めたせいか、瀬南くんは目を見開いてほんのり頬を色づかせた
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