episode23 ライングラビット
ブライド視点
あの後、結局シュリはオブサーバーへと帰っていった。
所夜も映矢輝も不服そうだったが、3人とも疲れきったのか、翌日からシュリの話題が上がることは無かった。
その間に、大きな変化が2つ。ひとつは映矢輝がサーバーから正式に許可を貰い、アラムリーブスとしてウイルス退治をすることになったこと。
映矢輝は心底嬉しそうにしてたし、ウイルス退治に順応するのも早かった。魔法というサポートがあるおかげで、私も前より戦いやすくなった。
だが、2人とも種族を盾にしていつも特攻しては怪我をして帰ってくるのだけが気がかり。私の兵団は自分を含め人を守りながら戦っていた。だから余計に慣れないのだろう。
2つ目はその怪我を治療するために、1匹のうさぎが来るようになったこと。毎回、大した怪我じゃなくてもすぐにやってくる。
うさぎと言っても、半分は人間。うさぎの姿で家に来るものの、治療自体は人間の姿で行う。
なんでも、シュリの弟子なんだとか。所夜は彼女の存在を知っていたみたいだが、彼女の治癒の腕前に驚いていた。
彼女の名前は神功ツキ。月出身の月のうさぎらしいが、訳あってシュリに弟子入り。人間の年齢で換算したら私よりも年下だけど、こいつも医者(見習い)らしい。
同年代なのに性格が全然違っているから、気が合わないこともある。でも、いいやつ。
そんな変化があってからおよそ数週間後のこと。
たまたまこの日も、ツキが来ていた。映矢輝も一緒にいたが、所夜は任務で外している。
「お、お邪魔します、、」
「もう何回も来てるだろ。そんな緊張することもないって、」
「そーそー。それにあたし達も何回も会ってるじゃん!」
「だって、、慣れないものは慣れないんですよ、、、ウチ、人前に出るの、本当に嫌いなんです。」
「まぁ、無理して出ることもねぇだろ。んじゃ、治療頼むよ。」
「は、はい!」
性格が真逆とは、こういうこと。ツキは極度のコミュ障と言うやつだ。
でも、やっぱり手際はいいし、治療も的確。でもこの性格ゆえ、シュリの助手くらいしかしていないのは、本当にもったいないと思う。
「終わりましたよ。腕のかすり傷、ちょっと深いところもありましたけど、、、大丈夫ですか?」
「大丈夫。このくらいなんともねぇよ。」
「ほんと?」
「ほんとだよ。」
「そうですか、、なら良いのですが。」
「じゃあ、ウチはそろそろ行きます。また何かあったらきますね。」
「おう、ありがとな」
「えー、もう行っちゃうの?」
「仕事なんだからしょうがないだろ。」
ツキを見送るために玄関に出た。なんか靴を履くのに苦戦してる。
人間の姿で動き回ること自体久々らしいから、しょうがないと言えばしょうがないが、かなり面白い。
「それじゃあ、お邪魔しました。」
「また頼むよ。、、おい、ちょっと待て。」
「え、?どうしました?」
「うそ、、何あれ!!」
ツキが扉を開けた瞬間見えた空。いつもの空じゃない。まだ夜にすらならない時間帯なのに空が真っ暗になっている。
それどころか、強い妖力だ。所夜と、、後シュリの気配に似ている。
でも、2人のものとは全然違う。気分が悪くなるような、そんな気配。
早く2人を引き込まなければ。
「ツキ、映矢輝、一旦中に入ろう。」
「うん。これってなんなんだろう。」
「わからねぇ。ただ、有毒だろうな。原因を特定しないと、、」
「っておい!大丈夫かよ!!」
「すみません、すみません、!なんかものすごく気分が悪くて、、!」
見ると、ツキが玄関にしゃがみ込んでしまっている。体調も悪そうなので、このまま返すのは危険かもしれない。
「まずいな、、顔色がすごく悪い。担ぐぞ、一回中で休もう。」
「ツキちゃん、大丈夫?」
「大丈夫です、こんなのすぐに休めば治るものですよ。」
本人は強がっているが、荒い息をしている彼女はとても辛そうだ。
急いで中に入り、私の布団に寝かせる。
体温は低く、吐き気と頭痛が止まらないらしい。
風邪薬を飲ませようとしたが、その前に寝てしまったようなので映矢輝のいるリビングに戻る。
見ているだけで辛そうだった。急いで葉 映矢輝と原因を解明しなければ。
「映矢輝、早速だが今回の件を、、って、おい!映矢輝!!」
少し目を離した隙に、映矢輝もぶっ倒れてしまった。呼吸はあるが意識が無く、ツキとは違って高熱だ。
まだ家具を配置している最中の部屋に映矢輝を寝かせ、薬の用意とスポーツドリンクを準備する。
私は体調が悪い所か、かなり元気だ。なのになんで2人だけ?
原因は何なのか。そう思いながら準備をしていて、ふと目に入った外の景色。原因はあれだろうな、と確信した。
2人の看病でドタバタしている中、インターホンが鳴った。
モニターに移ったのは、所夜とシュリだった。
所夜はシュリに方を支えられて項垂れている。まさかとは思ったが、人外がほとんどダウンしてしまったらしい。
急いで玄関の扉を開け、シュリを中に通す。
「所夜の部屋、どこ?」
「第一声がそれかよ。貸せ。私が運ぶ。」
所夜を布団に寝かせ、リビングに戻る。家の構造をシュリに説明して、彼女に治療を任せることにした。
「熱はあるけど、ただの風邪みたいなもんね。」
「所夜とツキは?大丈夫そうかよ。」
「ええ。あっちも処理は終わったわ。ちょっと低体温症気味だったけど、すぐに薬を打ったから大丈夫よ。」
「ならよかった。てか、お前はなんで元気そうなんだよ。」
「事前に抗体を打ってきてたからね。所夜はあんたに応援を送ったつもりだったらしいけど、私に誤送信したみたい。」
「それで?原因はわかったのかしら?」
「なんとなくは、な。外見てみろよ。」
「外、?、、、、、あぁ、なるほどね。」
「多分原因は、、秋祭りだな。」
秋祭り。秋になると、食物の豊作を祈るために開かれる祭り。今日はその祭りの開催初日だった。
そして、外の景色。少し前まで鮮やかに色づいていた葉がほとんど枯れているのだ。
そして、秋祭り開催地の山が黒い空を生み出しているように見える。逆に、それ以外が原因だったらもう何が原因かわからない。
「とにかく、あの山に行ってみる。」
「あまりにも危険だと思うけど?辞めることをお勧めするわ。」
「じゃ、お前も一緒に行ってくれんのかよ。見た感じ、筋力も申し分ないし戦えそうだけど?」
「……わ、私は、、足でまといになるだけよ。」
「…じゃ、私がいくっきゃねえな。」
「……、、、」
「大丈夫。なんかあっても、お前が直してくれんだろ?」
「勝手に言ってくれるわ、、」
「ははっ、悪いとは思ってるよ。じゃあ、行ってくる。」
勢いよく扉を開けて、全速力で山に向かう。
私の仲間をあんなにしたんだ。絶対許さない!
シュリside
あの子は、すぐに家を出ていった。迷うことなく、後ろを振り向くことなく。まっすぐに。
私は所夜の寝ている部屋に向かい、彼女のベッドの横に腰掛ける。
「ねぇ、所夜。あなたの言うとおりだった。あの子は本当にあの人にそっくりよ。」
額のタオルを再び濡らし、よく絞る。作業をしながら、考えてしまう。本当に、行かせて良かったのか。私も行ってあげたら良かったかもしれない。
あの子が大怪我して帰ってこようものならきっと所夜は怒るだろう。あと、あの紫髪の神も。
どうか無事で帰ってきてね。ブライド・エモーション。
神功ツキ 設定
名前 神功(じんぐう)ツキ
年齢 月では90歳、現実では18歳 性別 女性
誕生日4月19日 能力 人の心を癒す能力
種族 半人半兎(はんじんはんと)
身長 165cm 体重51kg バスト C
月出身の月のうさぎ。臆病で人と関わることはあまり得意ではない。月からオブザーバーに来たあと、シュリに弟子入り。治療の腕はよく、まだ見習いながらも優秀。頭もいいが、変なところでポンコツを発動する
私って展開変えるの下手ですね。もっと上手く書けるようになりたいです🥹あと、この後シュリちゃんのビジュアル公開します!是非見てくださいね!
コメント
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続きが更新されるのを待っておりました✨新展開に心躍ります😊次のお話もワクワクです✨