テラーノベル
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その日はもうすぐ12月がくるのが嘘のようなポカポカ陽気で昼間はコートもいらないくらいであった。
今日の私のランチは夜お好み焼きなので軽めのサンドイッチにしておいた。
名前呼びの宿題のプレッシャーもあったが、純粋にお好み焼きが楽しみであった。
なにぶん粉ものが大好きで中でもお好み焼きはうどんと1位2位を争うほどだ。だとすると3位は何だろうか?
そんな私の中の粉ものランキングなんぞ世界で1番誰も興味のないことを考えながらワクワクと緊張で待ち合わせの駅に着いた。
改札を抜けると絃さんの姿があった。
「すみません、お待たせしましたか⁈」
絃さんはiPhoneを見ると
「大丈夫だよ!それに今まだ待ち合わせ5分前だしな。俺早く着いちゃってさ、楽しみだったからさ〜いろいろとねっ。」
(いろいろ?あーやっぱり名前の事か…)
「私も楽しみにしてました!」とだけ答え
あえて’いろいろ’の部分は聞き流した。
そして予想していなかった事が起こったのだ。
‘ラーメン会’の時以来の手繋ぎがここにきてやって来たのだ。
彼は歩き出すのをきっかけになんとも自然に私の手を握ってきた。
ビックリしたがそれがバレない様にそーいうの慣れてますからみたいに少しだけ軽くキュッと握り返した。
その瞬間本当はずっと気がかりな私の心の奥底にある塊に対し心の中で都合良く出てきたモザイクがそっと覆い被さっていった。
「遊園地以降もお出かけの時に由布ちゃんと手を繋いで歩きたかったんだけど、なんかきっかけがなくて恥ずかしくてさ。」
彼は真っ直ぐ前を向いたまま私の手をまたキュッと握り返してそう言った。
(もしかしたら、’いろいろ’とは私の名前呼びではなく手を繋ぐという事を指したのかも)
そう思うと少し気が楽になった。
彼はいつも所謂デート的な事を’お出かけ’と称する。
そういうところがワイルドな風貌とは裏腹であり、なんとも可愛いらしく思えていた。
そんな言葉選びをする彼に対してより心の中の風船が膨らみそうになった。
自分で言いたくはないが傍から見ればある程度落ち着いた年齢の2人だが、そんな事をよそに私は’学生の初々しいデート’の気分になっていた。
そして彼、絃さんもそう思ってくれていたら嬉しい。
多分思ってくれているはず。
そんな気持ちを噛み締めながら歩いていくと
だんだんと香ばしいソースの香りが2人を包んでいきお店の前に到着した。
コメント
1件
第20話、楽しく読ませていただきました!お好み焼きデート前のワクワクした空気感がとても伝わってきました。特に「粉ものランキング」の頭の中の独白、めっちゃわかります(笑)。そして何より、自然に手を繋ぐ絃さんの「きっかけがなくて恥ずかしくて」という言葉に胸がきゅっとなりました。「お出かけ」って言う可愛らしさとのギャップも素敵です。次回も楽しみにしています✨
#漫画家
Jasmine
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