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快晴は、ナゴミヤ旅館の別館「じろう」の部屋で見つけた、赤色の日記帳のページを開いて、最初から読んでいた。
快晴「(黄ばんどるけど、読めるわ読めるな。毎日は書いてへんけど、気になった事とか書いとーっぽいなー)」
『物忘れ防止に日記を付けることにしました。旅館経営の方が忙しいので、あまり書けないかもしれませんが、珍しい事があれば書こうと思っています』
快晴「物忘れ防止?まだ30代やのに?」
三ヶ月後。
『旅館経営は順調。路郎も藍愛もすくすく大きくなり、小学生になった路郎は、時々お店を手伝ってくれるようになりました』
快晴「……もしかしてこの日記、オーナーさんのお母さんの?」
女嫌いの父親にしては、女性に対して誹謗中傷が無いところから見て、「この日記を書いている人は、路郎の母親」という事がわかった。
快晴「(この部屋にあったからオーナーさんが昔書いとった日記かと思たわ)」
快晴はそのままページを捲って読み進める。
快晴「(殆ど、路郎さんと藍愛さんの成長について書かれてる…。あと、女嫌いの旦那さんとの夫婦仲は案外ええ方やな)」
『もう直ぐ結婚記念日。もう何度目かわからないけれど、始さんは毎年毎年欠かさず私にプレゼントをくれる。バラの花束に、少し高価なネックレス…あげればキリがありませんが、どれも嬉しい物です。一番嬉しかったのは「いつもありがとう、愛している」とはにかんだ笑顔で言ってくれることですね』
快晴「(夫婦仲めっちゃええやん。なんで旦那さんは自殺して、呪いで奥さんと娘さん殺したんやろ?)」
実の息子の路郎から聞いた話では、「前オーナーの始が極度の女嫌いで、ナゴミヤ旅館に立ち寄る女性客を呪い、行方不明にさせている」と聞いていた。
快晴「(けど、奥さんの日記は、始さんに対してめっちゃええ印象しか書いてない…。日記やから嘘書く必要もないし…。また疑問が増えた)」
快晴は溜め息をつきそうになったが、日記を読み進めた。
快晴「(あ、路郎さんが初めての彼女を家に連れ込んだ時のこと書いてる)」
『路郎に彼女が出来ました。路郎と同じく聡明そうで可愛らしい女性でした。高校で寮生活を送っている藍愛とも、是非仲良くなって欲しいわ』
二ヶ月後
『路郎とあの彼女さんが、別れたらしい。残念だわ。それより、この家も随分古いのかしら。なんだか変な匂いがする』
快晴「変な匂い?そう言えば、始さんの部屋が血生臭かったような?」
「この頃から始さんがおかしくなるのか?」
そう考えた快晴だが、さっきのページが最後のページのようで、ページを捲っても捲っても何も書かれていなかった。
そして、最後のページも全く何も書かれておらず、快晴は日記帳を閉じた。
快晴「(血腥い匂いしてから日記が途絶えとる。始さんの女嫌いが始まって自殺して、この日記書いてるお母さんを呪い殺したんやろか?)」
快晴はそう考えると、今度は「始が女嫌いになった原因を調べよう」と思い立った。
風太「おい快晴。音奈ちゃん見つからへんって」
快晴「ホンマか…。ここにもおらんかったし……」
風太「どこ行ってんやろホンマ」
快晴と風太は冷や汗をかいて音奈の身を心配した。
加藤あいさ
21
哀 川 せ せ ら .
14,946
ねむ
222
快晴「警察に頼むか…」
風太「せやな!来てもらおう!」
音奈が行方不明になっているので、快晴と風太は警察を呼ぼうと決めて、快晴がスマホで電話をかけた。
『おかけになった電話番号はおでになりません』
快晴「え?」
快晴は何度も何度も110番をするが、その度に『おかけになった電話番号はおでになりません』と帰ってきた。
快晴「警察呼べん」
風太「嘘やん!?」
快晴はスマホを見ると、圏外にはなっていなかった。
快晴「え?圏外ちゃうのに警察かけられへんのん?フウちゃんさっき路郎さんにスマホで連絡出来たよな?」
風太「おん!音奈がおらへんってちゃんと言うたで!」
快晴「警察に繋がる回線混んどるんやろか?」
正月なった途端に「あけましておめでとうメール」で混雑して友達にメールを送れないような感じだろうと仮説を立てた快晴は、それ以上警察に連絡するのをやめた。
快晴「音奈ちゃん、もうちょい探してみるか…」
風太「せやな。あの開いてへん部屋にノックしてみるんは?」
快晴「せやな。あん中に音奈ちゃんおるかもしれんし、呼びかけてみよ」
快晴はそう言ってから、「じろう」の部屋から出て、隣の「ろあ」と書かれたプレートがかかっている扉に近づいた。
そのあと、コンコンと中指を折って扉を叩くが中から何の返事も無かった。
快晴「音奈ちゃん!」
風太「おい!!音奈おらんかァ!?」
快晴と風太が大きな声で部屋の中にいるかもしれない音奈へ呼びかけ耳を澄ませるが、声が全く聞こえたなかった。
快晴「やっぱおらんか」
風太「一旦帰るか?」
快晴「その前に、血腥い部屋に行きたい」
風太「う…ッ、おん、わかった…」
あの部屋は不気味で、風太からすれば「呪いの部屋かもしれない」という思考があった。そんな風太の思考などお構いなしに、紫色のキノコヘアーの幼馴染みは、歩き始めてそのまま「はじめ」の部屋へと向かっていた。
風太「なんでアイツ恐怖心とかないねん」
風太は冷や汗をかいて快晴の細い背中を見て、そのまま彼を追いかけた。