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外へ出て、気がついた。
早朝は夕暮れ時と並び、釣りに最適な時間だったと。
ということで外に出たついでに、釣りに適当な場所を魔法で探す。
アクラ川は昨日行ったからパス。
あそこで養魚場のエサを使うと、同じようにコイが釣れてしまう可能性が高い。
あんな感じで簡単にそこそこ大物が釣れるのは、もちろんありがたいのだけれど、今の気分ではない。
なら……
そう思って、思いついた。
今の季節でここの環境なら、チアユが釣れそうだと。
チアユとは、アユという魚の稚魚。
この魚は、
① 秋に川の下流域で生まれて
② 海へ下って冬を越し
③ 春になると中流域まで川を遡上して
④ 夏を経て秋になると、再び下流で産卵する
というライフサイクルを送るのだけれど、この③の段階を狙う釣りだ。
これで釣れるのは10cm程度と小さいけれど、味は美味しいらしい。
釣り場と釣り方、エサを間違えなければ、かなりの数を釣ることが出来る。
釣り方は基本的にサビキ釣り。
つまりダグアルで魔魚カンディルーを釣ったのと同じ方法だ。
大きさ的にも、小さ目のカンディルー用に作った仕掛けをそのまま使えるだろう。
エサカゴだけは小さめにした方がよさそうだけれど。
エサは前世では『シラスと呼ばれるイワシ等の稚魚を茹でたものをすりつぶし、塩とパン粉を加えてばらけやすくしたものが最高』となっていた。
しかし今の俺の収納には、残念ながらシラスは入っていない。
ただイワシは一応あるので、これをしっかりすりつぶして、塩とパン粉を加えておけばいいだろう。
ということで仕掛けを準備し、アクラ川へ。
昨日コイを釣ったのとは違う場所、本流の深い場所も狙える場所に陣取って、エサをエサカゴに入れて、投げる。
確かこの釣り、投げた後はそのままにして釣れるのを待つより、巻いてゆっくり引っ張ったり、上下に動かした方が釣れるんだったよな。
そう思ってちょっと上下に動かしつつ、ゆっくり巻き上げてみる。
竿に微妙な感触、これは釣れたかな。
そう思いつつ手前まで引いた後、上げてみると、5本ある針のうち2本に魚がついていた。
魚の引きはカンディルーよりも弱いから、釣れたかどうかはわかりにくい。
けれど結構簡単に釣れるようだ。
そう思いつつ魚を回収し、また遠くへ投げる。
◇◇◇
多分200匹程度釣ったなというところで、納竿して家へ。
途中、集会場の前の広場、つまりはお祭り会場を通って様子を確認。
ミーニャさんを回収した時に行き倒れていた猫獸人の皆さんは、一度は家に帰った様で姿がない。
一部は惨憺たる状況だった会場も、綺麗に片付いている。
それでも人がいないわけではない。
料理コーナーはターニャさんと交代してムーニャさんが管理している様だ。
そしてテーブルの方には、朝食を食べている猫獸人さんたちが十数人。
そしてピンクの腕章をつけた普人女性10人も食事中。
この人たちはきっと、片付けや整理の担当だろう。
しかしその中に一人だけ、緑色の腕章を付けた知っている人が混じっている。
アライアさんだ。
昨日あれだけ食べたのに、もう朝食を食べられるくらい回復したのだろうか。
きっとあの中に、知り合いでもいるのだろうけれど。
とりあえず俺はまだ、食事はいい。
祭りの本番である10時までに食欲が戻る様、今は食べない方が正解だ。
そう思いつつ近づかずに通り過ぎ、家に到着。
ジョンは出かけているようで、魔力を感じない。
ミーニャさんの魔力は2階で、まだ寝ている模様。
祭りまで、まだ2時間はある。
一度自分の部屋に戻って休むとしよう。
何ならお祭り期間中、ここで他にどんな釣りが出来るか、魔法で周囲を調べてみてもいいかもな。
なんて思いながら、魔法でさっと全身&服の汚れを落とし、家に入って、階段を上ったところで。
すぐ前の扉が開いた。
「また違う魚の匂いがするのニャ」
もちろんミーニャさんだ。
俺が去った後、無事服を脱いで着替えたらしく、バスローブ姿。
そういえば最初に家に来たときもこの格好だったなと思い出したけれど、今回はあのとき以上にゆるゆるな着方で、胸も脚も更に危険な状態。
いや、そっちに気をとられてはいけない。
あくまで今は、魚の匂いの方だ。
そして現状は……
「今日の早朝まで、充分食べたでしょう。今日のお祭りの本番までにお腹を空かせないと、インガンダ・ルマを食べられませんよ」
「もう食べた分は消化したのニャ。それにお腹が完全に空より、少しは何か入っている方が食べられるのニャ。それに昨日出ていた魚とは違う匂いがするのニャ。それも獲ったばかりという匂いなのニャ」
ミーニャさんの魚の匂いセンサー、無茶苦茶に強力だ。
ひょっとしたらミーニャさんに限らず、ホウトン村の猫獸人さんの過半数は同じような能力を持っているのかもしれないけれど。
マーニャさんも、魔法収納しているインガンダ・ルマの数がわかっていたし。
ただミーニャさんにそう言われると、チアユの味を確かめたい気がしてきた。
1匹か2匹くらいなら、俺も食べられるだろう。
ミーニャさんには、チアユの他におにぎりも出しておけばいいか。
「わかりました。少しだけですよ。今、料理しますから、待っていて下さい」
さて、チアユというと、やっぱり唐揚げが一番メジャーな食べ方だろう。
あとは甘露煮を作って、おにぎりに仕込むなんてのもいいかもしれない。
俺は魔法収納内で、調理を開始する。
■■■ 稚鮎釣り ■■■
だいたいGWくらいを中心に楽しめる、春の風物詩。有名なのは琵琶湖かもしれないけれど、関東から西の河口近くや海と繋がっている川なら、割とどこでも釣れる魚。ただし漁業権には注意。
今回はエサを使っているけれど、場所によってはエサ無しで、サビキ仕掛けを遠くへ投げて、ゆっくり巻いて上げてを繰り返すだけでも結構釣れたりする。ただ釣れる仕掛けやエサは地域によって結構違うので、その地域で釣れる実績があるものにした方が無難。
食べ方としては、片栗粉をつけてさっと揚げて、ポン酢醤油や塩、レモンなどでさっといただくのが個人的におすすめ。
コメント
1件
100話おめでとうございます!もうそんなに釣ったのか…と思ったらちゃんとお祭りに備えて調整してるのが、主人公らしい抜け目のなさですね。ミーニャさんの魚センサー強力すぎて笑いました。チアユ、私も食べてみたい気持ちよくわかります。