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砂原 紗藍
#再会
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二重の大きな瞳に、ぷっくりした色気のある唇、高い鼻。
同性なのに全く作りが違う。どんな徳を積めばこんなお人形みたいな綺麗な女性に生まれるのだろう。
しかも爪まで手入れされてて指先まで美しい。あの爪にネイルさせてほしい。
お土産をもらったらすぐに帰るつもりだったらしいけど、途中で悪阻で気分が悪くなった紗矢さんを強引に部屋に連れてきて休ませた。
トイレに入った瞬間、妊婦さんに飲ませていいお茶を必死で検索した。
冷蔵庫の中に飲ませていい飲み物が麦茶しかなかった。
でも彼女は、控えめに微笑んで麦茶を飲んでくださった。
大きなお腹に折れそうな両手足。これじゃあ歩きにくそうだなって、じろじろ見てしまう。
「すみません。急に押し掛けたのに、こんな感じで」
「いえいえ。私こそ、ハンバーグなんて作っちゃってごめんね。食べれないよね」
温かい食べ物の匂いが駄目らしく、中途半端に焼いたハンバーグに蓋をして冷蔵庫に隠した。もう少し悪阻について勉強しておけばよかった。
「いえ。ぜひ今度食べさせてください。というか、料理得意ではないので、尊敬します。私の旦那も兄も料理できちゃうから、全然自分の料理に自信持てなくて」
「あー、わかります。一矢くん、器用でなんでもまんべんなく作れちゃう。というか、敬語じゃなくていいからね」
「嬉しいです。私も呼び捨てでお願いいたします。あ、お願い」
はにかんだ紗矢さんを見て、思わず結婚しそうになった。
一矢くんと結婚したら私は、紗矢さんのお姉さん……。
一人っ子の私にこんな美人な、前世で徳を積んできたような妹ができちゃうんだ。
「お義姉さんのおじいさま、海外旅行に行かれたんですね」
「そうなの。ごめんね。つまらないお土産なんだけど」
紗矢さんへのお土産は私たちのチョコとは違って、大きく重たいのは気になったけど。
「いえいえ。うちの父も事業拡大して忙しいけど、おじいさまも医院を新装したり、一時期大学で講義もされていたし。ようやくゆっくり人生を謳歌できていていいなあって思いました」
「……でも、それで医院の経営が悪化しちゃったらねえ。本当に色々と一矢くんには迷惑をかけたというか」
恥ずかしくて頭を掻いて苦笑すると、紗矢さんは不思議そうに首を傾げた。
「経営が悪化? どちらが?」
「あー……と内緒でお願いします。うちの祖父の」
「そんなはずないですよ」
しまった。妊娠している紗矢さんに心配させるようなことを言うべきではなかったかな。
「私の勘違いかな。あはは。ほら、うちの祖父って消費家だからさあ」
「でもとても倹約家でもありますよ。それにまた新しい医院を作るからと一括でお支払いいただいてますし」
「……え?」
「従兄弟さん、駅三つ向こうで起業することになったからと、お爺様がお支払いされていましたよ」
えーっと。
「でも海外の最新医療機器を大量購入したためにお金がないって話だったのに」
「それって数年前の話ですよね。とっくに全て綺麗にされてるはずです」
えーっと。
なんだろう。話がかみ合わない。
お互い、同じ名前の違う人の話をしているような。
プライドの高い母が、私に縋りつくぐらい経営が傾いてるって話だったはず。
「あ、喬一さんがエントランスに来たみたいです」
携帯画面を見て幸せそうに微笑む紗矢さんを見たら、これ以上は突っ込まない方がいいかなと口を閉じだ。
妊娠中の人に、いくら偽装とはいえ義姉の実家が経営傾いてて改装費払えずに全て一矢さんが払ったと知ったら驚くだろうし。
「あの、旦那様もよかったら上がってください。まだ紗矢さん、顔色が優れないし」
紗矢さんの旦那さんは、眼鏡をかけた知的な男性で、柔らかく笑うのが印象的だった。
常に優しそうなオーラを見にまとっていて、一矢くんとは正反対。
一矢くんは見た目はクールで、怒っているのかなって程無表情。でも一度表情が乗ると、ギャップもあってかとても格好いい。
「大丈夫? 抱えようか?」
しかも包容力あり。どんなわがままを言っても全部受け止めてくれそう。
「大丈夫。あ、でもちょっと洗面所借ります」
紗矢さんは、悪阻のせいでまだ気持ちが悪いようだ。
心配そうについていくが、ドアを閉められて寂しそうな旦那さんからは溢れんばかりの愛情が感じられた。
こんな風な旦那さんだったら結婚したら間違いなく幸せだな。
私がじっと見ていたのに気づいたのか、こちらをみて首を傾げ優しく微笑まれた。
「ごめんね。急に来て、俺まで家に上がらせてもらって」
「いえ――。いえ……あのう、一矢くんの家庭教師をされていたってことは、今でも仲がいいんですよね」
「そうだけど」
「一つ、聞きたいことがあるんですが」