コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
「ブラッキーの目的は余を亡き者にして魔王国を乗っ取ることだ。余のそばにいなければおまえの命まで奪うことはあるまい」 「陛下、何をおっしゃる! わたくしははじめから陛下とともに死ぬ覚悟でございました」
「やめておけ。まもなく殺される余に、おまえに与えられるものは何もない」
「わずかな時間でも陛下がわたくしに与えられるものはあります」
「そんなものがあるなら言ってみよ。余は喜んでおまえにそれを与えると約束する」
「では申し上げます。わたくしにアイをください」
アイ? 正直何のことか分からず余は困惑した。
「アイとは?」
「アイは愛です。それ以外のアイがあるとは思えません。陛下は卑しい人間でさえ夜伽の相手を命じて愛をお与えになることがあるのに、なぜ陛下のそばにいて誰より陛下を敬愛しているわたくしには愛を与えてくださらないのですか?」
「夜伽は世継ぎをなすためであって、夜伽の相手に愛を与えたことはないぞ」
「かまいません。陛下の命があるうちにわたくしにも陛下の夜伽の相手を務めさせてください」
「女同士で夜伽をしても世継ぎをなすことはできぬではないか」
「今まで誰と夜伽をしても、どうせ世継ぎをなすことはできなかったではないですか」
「どうせって言うな!」
マコティーは余の反論を無視して近づいてきて、余の寝ている寝床に手をかけた。全身に鳥肌が立ち、心臓がバクバクと音を立てている。これが恐怖か。余は生まれて初めてそれを感じていた。
「おまえは今までそんな邪な気持ちで余に仕えていたのか?」
「邪な気持ちではありません。これは純愛です。わたくしの初めては陛下に捧げると決めていました」
「ひぃいいい……」
恐怖のあまり変な声が出てしまった。マコティーは確か転生前の余の半分の齢の二十五歳。余に仕えて十年になるが、純愛などと言われても余は今まで彼女を性愛の対象として見たことがない。今になって思えば、マコティーがよく男になりたいと言っていたのは余と結ばれたかったからに違いない。