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「もう帰るの?この後エレンやミカサも来る予定だったのに…」
『ごめんね、お母さんが心配で』
「そっか…仕方無いね。じゃあまたね」
『うん』
数百メートル程進んだ後、振り返って見ると
既にエレン達はアルミンと合流していた
本当にもうすぐ来る予定だったんだな
こんなに早いならもう少しいても良かったかもしれない
と、ほんの少しだけ後悔した
家の扉を開けると、私より先に二人がいた
ジュニーはまだしも、兄がこの時間に帰ってくるなんて珍しい
私が出ていってる間に帰ってきたのか
「………」
兄は”おかえり”も言わず、二階を指差した
お母さんが呼んでいるという事なのだろうか
話し合おうと思ったが
兄も兄で、あんな事を言ったあとだから
少しぐらい気持ちに変化はある筈だ
…お母さんに勇気を貰いに行こう
そしたら、その後は
ちゃんと話すんだ
「おかえり」
私が着いた頃、部屋には太陽が差していた
赤光が耳を赤くする
『お母さん?』
母の顔は、私のいる位置からでは見えない
というより、見せないようにしている気がした
いつもは外なんか興味無かったのに
今日は頑なに窓を眺めてこちらを向かない
「イェーガーさん…今日はお仕事でいないんだって。仕方ないわね。お医者さんだものね」
『…じゃあ、薬は?貰えたの?』
「大丈夫よ。心配しないで」
「ここ、おいで」
母は深く息を吸って、肺に空気を溜めた
既にこの部屋は重苦しい空気で飽和している
飾った枯れかけの花の匂いがやけに鼻についた
“あのね、ミロア”と、やっと言葉を発した後
母がこんなことを言ったんだ
「貴女にはずっと…言ってなかったんだけどね…お兄ちゃんが兵士をやめたのは、私達の為なのよ。亡くなったお父さんの代わりに生活費を稼ぐって。…訓練兵や調査兵団はどうしてもお金にはならないから、長男であるお兄ちゃんが支えてやるって…」
『、』
一瞬、言葉に詰まってしまった
分からない
母は今何を言ったのか
私には分からないよ
だけど
何か大切なことを伝えようとしてくれている
それだけは分かった
「ごめんなさい。お母さんが弱かったのよ。…いいえ、今言いたいことはそれじゃないわね」
口から吸った息を漏らさず、母は続ける
「貴女達の事、皆んな愛している。だからどんな道も選ばせてあげたかったし、どんな道でも幸せになれると信じていた。それが例え あの人のような兵士でも…これも言い訳ね。だけど嘘じゃない」
「愛していたのよ。本当に」
コホッ、と一つ咳をした
その咳を受け止めた手には
血がついていた
そのまま
母は血を吐いて力無く倒れた
『かっ…母さん!!』