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「元貴、ギュッてしてもいい?」


ほんの少し…

ほんの少し、いつもよりドアを閉める音が大きいだけ。

ほんの少し、いつもより物を雑に扱ってしまっているだけ。

ほんの少し、いつもより言葉の語尾が強くなっているだけ。

ほんの少し、いつもより眠れないだけ。


ほんの少し、いつもより笑顔でいるだけ。




「いいよ。」


そんな、自分でも気付かないようなほんの少しの違いに、涼ちゃんはいつも気が付いてくれる。

そして、いつもギュッと優しく包み込むように抱きしめてくれる。


『大丈夫?』とか『ギュッてしようか?』とかではなく、『ギュッてしてもいい?』と言ってくる辺りが、涼ちゃんの人となりを表していると思う。

大丈夫じゃなくなってる人に大丈夫?と聞いたって、大丈夫と言うに決まっているし、ギュッとしようか?に至っては押し付けがましい事この上ない。

そんな捻くれた事を考えてしまうぼくの事を全部分かった上で、涼ちゃんは隣に居てくれて、 いつも、ぼくが闇に落ちそうになる前に手を引いてくれる。




「ありがと。ぎゅぅーっ。」


数年前より、少し大きくなった涼ちゃんに抱きしめられる。

涼ちゃんの腕の中はすごく温かくて、優しくて、柔らかくて、ずっと貼り付いて取れなかった笑顔の仮面がゴトッと音を立てて剥がれたような気がした。


涼ちゃんは子供をあやす様にぼくの背中をとんとんと叩く。

そこでやっと自分の目から涙が溢れている事に気が付いた。


涼ちゃんは自分の服が濡れるのも気にせず、ぼくの涙が止まるまで抱きしめてくれていた。






「…涼ちゃん、ありがと。」

「こちらこそ。ありがとう。」

「…て、なんで涼ちゃんも泣いてんの。」

「だはーっ。なんかもらい泣きしちゃった。」


涙が止んで顔を上げたら、なぜか涼ちゃんの目が赤くなり、頬っぺたには涙のあとが付いていて、それを少し笑いながらつっこんだら、涼ちゃんは恥ずかしそうに笑った。




「もう、ほんと……大好き。」

「えぇ〜、僕も大好きっ。」











-fin-

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