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「ん〜、やっぱり今日はプリンかなっ。」

「涼ちゃん、何してんの?」


さっきから移動車の窓の外を眺めながらぶつぶつと呟いている涼ちゃん。

若井は寝ているし、暇を持て余したぼくは涼ちゃんに話し掛けた。




「今日の夜のデザートをね、考えてたの。 」


そう言って、えへへっと笑う涼ちゃんをアラサーなのに可愛いと思ってしまうぼくは、どうかしているのかもしれない。




「あれはアイスで、あれはプリンに見えるでしょ?」


そう言って指差した先には、青い空にぷかぷかと浮かぶ雲があった。

どうやら、左に浮かんでいる雲がアイスで、右に見える雲が、涼ちゃんにはプリンに見えているらしい。




「えぇー。どこがアイスでどこがプリンなの?」


ぼくにはとてもじゃないけど、そんな風には見えなくて、目を細めてみる。

まあ、頑張れば左はケンタッキーで、右は富士山に見えなくもないけど…。




「うそぉー、もっとよく見てよっ。」


そう言って、涼ちゃんはぼくの手を握って、雲がよく見えるように窓の近くに引き寄せた。




「わ、ちょっと。」


涼ちゃんの膝の上に手をつくような形になり、涼ちゃんとの距離がグッと近くなる。

そして、なぜか心臓がドキドキして仕方ないぼくの事なんかお構い無しに、涼ちゃんはぼくに詳しく説明しようと自分も窓を覗き込んだ。




「ほら、あの上のとこがアイスクリームで、下がコーンに見えるでしょ?んで、あっちは三角でお皿に乗っけたプリンに見えるじゃん。 」


必然と更に距離が近くなり、この心臓のドキドキが聞こえてしまうのではと焦ってしまう。




「ねえっ、聞いてる〜?」

「き、聞いてるって。てか、今日はプリンって言ってたけど、昨日もコンビニでプリン買ってたじゃん。涼ちゃん、ただプリンが好きなだけでしょ。」


とてもじゃないけど説明なんて聞いてられる心境じゃないぼくは、そう言いながら窓の近くから離れて元居た自分の位置に座り直した。

これで心臓のドキドキは治まってくれるはず。




「だはーっ、バレたか!」


涼ちゃんはいつもの変な笑い方で笑うと、また窓の外を眺め始めた。


…なぜかぼくの手を握ったまま。




「あの、涼ちゃん。」

「ん?なーに?」

「いや…なんでもない。」


手を離してと言おうと思ったけど、振り向いた涼ちゃんの顔が少し赤くなっていたから、なぜかぼくは言うのをやめた。




「ねえ、なんで手繋いでるの?」


しばらくお互い無言のままそうしていると、いつの間にか目を覚ましていた若井が不思議そうな顔で聞いてきて、ぼくと涼ちゃんは慌てて手を離した。




「あっ、わ、忘れてた!もう〜、言ってよ元貴〜!」

「や、ぼ、ぼくも忘れてた…。」

「忘れてたって何?まあ、涼ちゃんは何となく分かるけどさー。」

「なんでよっ、酷い!」







「…て事、あったよね。」


車の窓から空を眺めて、ぼくはあの頃の初々しい気持ちを思い出していた。

今では当たり前のように握ってる手だけど、あの頃の気持ちに感化されたのか、少しだけ恥ずかしい気持ちになる。




「あったあった〜、懐かしい!あ、ねえねえ、あれプリンに見える!って事は、今日のデザートはプリンだなっ。」

「プリンに見えなくても、どうせプリン食べるでしょ?ぼくん家の冷蔵庫に3つも買い置きあるし。てか、夏までに痩せるんじゃなかったっけ?」

「そこは元貴に手伝って貰って夜の運動するから大丈夫!」

「……?!///」

「おーい、イチャイチャしないで貰っていいですかー?おれも居るんですけど?」











-fin-

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コメント

2

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初々しいって可愛いんだね~((

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