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第55話
アニカが帰った後も、訓練後の汗臭いままの騎士団長が来たり、シャワーを浴びた他の騎士の人たちも見舞いに来てくれた。
もうそろそろ、潮時かな……
僕は手が震えていたと思う。肘の骨折で震えるだけでも痛む。
『ねぇ。ねぇ。勇者様。大丈夫?』
ぼんやりと光を見ているとその光がクルクルッと舞って、本の挿絵で見たような妖精が目の前に現れた。
夢かな……それとも、幻覚?
僕がぎこちなく頷くとそっと妖精は僕の体の中に入った。
何だか、筋が見えるようになってきた。光もはっきりと妖精に見えて、自分の力も感じられるようになった。
訳が分からないまま、その他の妖精を見つめた。
✡
あれから二日後。
団長さんの勧めでエルドの長――フリオさんの元へ訪ねた。
案内されたのは、ロルフとフリオさんが、よく話していた崖の上だった。
「私、ロルフを傷つけてしまったのかしら……」
「そんな事ないと思いますよ。ロルフは、姫様の近くでずっと見守ってきました。それに、姫様を想っての口止めだと思うんです」
「口止めだったんですね……」
私は思わず声に出してしまった。
ずっと見守ってきた……じゃあ、ずっと守られてきただけって事……失敗に巻き込まれたって事……
「まぁ、最初はどうなる事かと思ったが……」
私は話を遮るように「ロルフさんまで、あの姿って事は……私は一度失敗したという事でしょうか……?」と声を震わせないように気をつけながら言葉を発した。
「そこは、ご自身でお確かめください。でも、ロルフは、簡単に傷つくような柔ではありませんよ」
それから少し私も口止めをされてから宿屋に戻った。
口止めというのは、娘が産まれたという事らしい……というか、見せて貰えた。
可愛らしくて、小さかった。まだ一月も満たないそうだ。
口止めの理由は、ロルフが感情を殺さないようにだそう。自分だけ置いていかれている事にコンプレックスを感じているんじゃないか、というフリオさんの考察だそう。
二日くらい滞在してから王城に戻った。
やっぱり、口さのない騎士たちは沢山いる。ロルフに対してが酷い。
私に対しても何かは言われているけど、気にせず過ごしている。
と言っても……
「あんなガキが。調子乗ってるんだろ」「まぁ、産まれたのは先だが、寝てたんだろ」「族で倒れるんだ。頑張れば勝てそうじゃないか?」
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……酷い。守るのと、ただ倒すだけでは全然違う。
ロルフだって、必死だったのに……あいつらの攻撃は当たり所が悪かったら、もっと酷い……いや、死んでしまっていたのかもしれないのに……
「あの、やめてください。彼の強さは、努力のたまものです。私だって目の前で見てきました。何も知らない人はそんな事言う筋合いなんて無いはずです」
私が思い切って言ってみると口さのない騎士たちはどこかへ向かってしまった。
……後で、団長に相談してみるか。私が気づくって事は知ってるだろうけど……
でも、分からなくも無いんだよな。だって、あんなに何もかも簡単に乗り越えられているように見えるし……勿論、努力して生きてるのは分かる。
だけど、私たちができない事をそうやってやり遂げるのは、見てて悔しくなるし、自分と比べてしまう。
でも、ロルフだって何か無理してたような、気がするし……思い出せ無いけど。
「姫様。かっこよかったですよ」
私の後ろで言ったのは、研究者のハンナさんだった。
成人姿のユラガ族なので、年齢不詳だ。緑の瞳に、クリーム色のサラサラな長髪を下ろしている。
私を昔の姿に変えた張本人だ。
最新技術を使って、色々な薬や、機械を開発しているこの国で有数の凄腕研究者だ。私が招き入れた。
「い、いつから聞いてたんですか?」
「いつからって、あいつらの陰口から最後まで」
最初から最後まできっちり……
「よく、言ってやりましたね。どうですか? 記憶は?」
「あの日から進展は無いです……でも、心の底でざわついている物があるんです。だから、希望の光は見えているんです」
「姫様。そこまで無理しなくても良いんですよ。もしかしたらって考えるだけでも、違うってだけで、無理矢理思い出さないといけないって事はありません」
ハンナさん……
「姫様は、もう十分に頑張られています。だから、もうちょっとぼーっとする時間を作ってみても良いんじゃ無いんですか?」
肩をポンポンと叩いてからハンナさんは研究室に向かった。
コメント
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みぅだよ🤍🥀 第56話、読んだよ。主人公が騎士たちの陰口に「やめてください」って言い返したシーン、すごく胸にきた。自分も傷ついてるのに、ロルフを守ろうとする強さがちゃんと現れてた。ハンナさんの「ぼーっとする時間を作って」っていう言葉も、優しくてじんわり沁みたな。重い記憶を抱えながらも、一歩ずつ前に進もうとしてるのが伝わってくる。こはるちゃん、今回も繊細な心理描写が素敵だったよ🌙