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#ワンナイトラブ
おまる
土曜日の午前中
窓の外には雲一つない青空が広がり
穏やかな陽光がリビングのカーテンを透かして床に柔らかな模様を描いている。
今日はあえて外食も遠出の予定も入れなかった。
誰にも邪魔されず、ただ二人きりで過ごすためだけの「お家デート」の日。
それなのに、徹さんは朝早くから私の家を訪れ
キッチンに立つ私の背中にぴったりと張り付いて離れようとしない。
「……徹さん、本当に朝からずっとくっついてますけど…私、どこにも行きませんよ?」
私が苦笑しながら振り返ると、徹さんは愛おしげに目を細め、私の頬を大きな両手で包み込んだ。
少しだけひんやりとした彼の手のひらが、私の熱を奪っていくようで心地いい。
「甘えちゃだめかい?」
「そうじゃないですけど…私も今日一日は徹さんに甘えたいです」
「この一週間、結衣は本当によく頑張ったもんね。いいよ、今日は俺が、世界で一番甘やかしてあげる」
低い声で囁かれたその言葉通り、今日の彼はいつにも増して情熱的だった。
普段、会社で見せている「鉄の仮面」のような冷徹なエリートの姿はどこにもない。
今の彼は、私の温もりを片時も離したくないと言わんばかりの、甘えん坊な恋人そのものだ。
お昼ご飯の準備をしている間も、その独占欲は止まらなかった。
私が野菜を切ろうとすれば、徹さんは私の背後から覆い被さるようにして
自分の手を私の上に重ねて包丁を動かす。
首筋に顔を埋められ、深く呼吸をされるたび
彼特有の清涼感のある香りが鼻腔をくすぐり、思考がふわふわと白く染まっていく。
「……幸せだな。結衣の家の匂いがすると、すごく安心する」
ようやく出来上がった食事を終え、ソファに腰を下ろすと
彼は当然のような顔をして私の膝を枕にした。
膝の上に乗る彼の頭の重みが、二人の日常の確かさを物語っている。
私が指先で彼の柔らかな髪を梳くと、徹さんは猫のように気持ちよさそうに目を細めた。
そして、私の手を引き寄せると、指先から手の甲
手首にかけて、慈しむように何度も優しいキスを落としていく。
「寝ちゃうの?」
そう尋ねると、彼は潤んだ瞳をゆっくりと持ち上げ、私を見上げた。
その瞳の奥には、私への底なしの愛が揺らめいている。
「寝ないよ。…こうやって結衣に触れていたいだけ。……結衣、こっち向いて」
拒めるはずもなかった。
彼に促されるまま、ゆっくりと顔を近づけていく。
視線が絡み合い、互いの吐息が混じり合う距離。
吸い寄せられるように、自然と唇が重なった。
最初は、疲れを労わるような羽毛のように軽いキス。
けれど、一度離れた唇が再び触れ合ったとき
それはもっと深く、互いの体温を確認し合うような熱いものへと変わっていった。
絡み合う舌先が、甘い痺れを全身に運んでくる。
「……っ、徹さん……」
わずかに唇を離すと、彼は私の指と自分の手を絡ませて
指輪の感触、私の体温を確かめるように、
彼はそれを愛おしそうに、何度も丁寧になぞった。
「……愛してる。世界中の誰よりも、何よりも。結衣は、俺の宝物だよ。ずっと、俺の全部で君を愛し抜くから」
耳元で響くその誓いは、どんな高価な宝石よりも力強く私の心を捉えた。
窓から差し込む陽光はどこまでも優しく、部屋の中には二人だけの甘く濃密な時間が満ちていく。
柏木が吐いた卑劣な嘘も、親族たちが突きつけてきた重圧も、今の二人を揺るがすことはできない。
ただ目の前にいる、愛する人の温もりだけが世界のすべてだった。
「私も……愛してる、徹さん。ずっと、ずっと一緒にいてくださいね」
私は徹さんの首に腕を回し、自分からもう一度、永遠を願うような深いキスを贈った。
私たちは今日、誰にも邪魔されない最高の安らぎと、確かな真実を分かち合っていた。
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