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Doors好きな主
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学生時代、親戚に頼まれて、とある町の祭りの準備を手伝ったことがある。
1週間ほど滞在し、境内の設営や細かな雑用に追われる毎日だったが、祭りの当日は自由に楽しんでいいと言われていた。
会場となる神社には、当日になると地域の人々が大勢集まるという。人混みが苦手な私は、前日のうちに少しでも静かに休める場所を探しておくことにした。
境内を歩き回った末に目をつけたのが、拝殿と本殿の陰に隠れる裏手。参道の賑わいから外れ、雑草も少し伸びているため、わざわざ足を運ぶ者はいそうになかった。1人で腰掛けるのにちょうどいい大きさの石があり、すぐ後ろには寄りかかれそうな太い木まで立っている。
ここなら祭りの最中でも静かに休めるだろうと思い、翌日の居場所はそこに決めた。
祭り当日、境内には前日までの静けさが嘘のように人が溢れ、参道にも出店の明かりが並んでいる。
屋台で食べ物と飲み物を買った私は、神楽が始まるまで少し休もうと、人混みを抜けて神社の裏手へ向かった。
予想どおり人影はなく、昨日見つけた石と、その後ろに立つ太い木が見えてくる。
ところが、前日には存在しなかったものがそこにあった。
「……藁人形?」
太い木の幹に藁人形が打ち付けられているのだから、見間違えようがない。
昨日、私は石に腰掛け、背後の木へ寄りかかれることまで確認している。その時点で幹に何もなかったのは間違いない。
つまり、私がそこを離れた祭り前日の夕方から、翌日の祭りが始まるまでの間に、誰かが神社の裏手へ入り込み、藁人形を打ち付けたことになる。
そう理解した途端、休憩する気など完全に失せてしまった。
買ったものを抱えたまま踵を返し、急いで人の多い境内へ戻る。
表側には、祭りを楽しむ人々の笑い声が満ちていた。
色鮮やかな出店の明かりの下を子ども達が走り回り、大人達は酒や食べ物を手に談笑している。神楽を待つ人々の顔にも、これから始まる催しへの期待が滲んでいた。
そんな華やかな光景を眺めながらも、思い出されるのは神社の裏側で見た藁人形。
建物1つ隔てただけの暗がりには、誰かを呪わずにはいられなかった人間の感情が、藁人形という形になって木へ打ち付けられている。
前日の夕方にはなかった以上、藁人形が打ち付けられたのは、祭りの準備が終わった後なのだろう。
翌日には大勢の人が笑い、酒を飲み、神楽を楽しむとわかっている神社で、その誰かは夜の闇に紛れてあの木へ向かったことになる。
誰を呪おうとしたのか、どれほどの憎しみを抱えていたのかは、知る由もない。
ただ、祭りの前夜、人の気配が消えた神社の裏手で藁人形を木に打ち付けていたその人物が、いったいどんな顔をしていたのか――それだけは今でも時折考えてしまう。
祭りの表側には、笑顔と明かり、楽しげな声が溢れていた。
そのすぐ裏側では、表からは決して見えない誰かの憎悪が、ひっそりと形を持って残されていたのである。