言葉にした瞬間、不意に寧々の目から逃れようと、俯く。くちに、出してしまった。この思いをさらけ出してしまった。この言葉で寧々を困らせるのは分かりきったことだ。それ、でも。踏ん切りがつけられるのなら。幼なじみとしての神代類からステップアップ出来ずとも、僕はきみの選択を拒んだりなんてしない。…そう、分かっていても。それでもやっぱり「わたしも好きだよ。」っていうその音を欲してしまって。僕は頭をぐっと持ち上げられた。持ち上げられた先にいる彼女のアメシストがより一層輝いていて。頬は赤く染められていて。良くも悪くも寧々らしい表情だ。
「わた、しの…目を、見て。」
「類はわたしの返事が欲しいんでしょう?」
「もちろん、だよ。」
思ったよりもはっきりと僕に言葉を投げかける。その力強さに惹かれて、僕は彼女を見つめる。次の言葉が怖くても。
「わた、しは…私、は…」
戸惑うきみ。おどおどしているきみがとても愛おしい。
「私は、類が好き…なの、かな」
「え、?」
予想外の反応。きっぱり断るか、それとも恥ずかしながらも僕の気持ちに応えてくれるか。予想していたのはその2つだった。
「分からないの。わたしは」
そこから紡がれる言葉が気になって仕方がなくて。
「類といると胸だってどきどきする…し、類がいるとつい目で追っちゃったりも、する」
それ、は、それは…僕の、僕が…
「たまに、類に会いたくもなるし、声が聞きたくもなる…でも、こういう感情を知らないから…この感情の名前を知らないから…」
「類に返事はまだ、出来ない。あいまいな返事をして類が傷ついたら、やだし…」
「寧々。」
思わず頬が緩まる。
「それが、僕の恋なんだ。寧々の話してくれたそれが。」
「寧々と僕はいわゆる、両思いなんだ。」
「!!」
「じゃあ、類に、あいまいな返事を返さなくって大丈夫、なの…?」
「大丈夫さ。でも、しっかりとそのくちから答えが聞きたい。」
ぽっときみが頬をさらに赤らめる。いじわる、とちいさくつぶやいて。
それでも僕はずっと求めていたその2音が欲しくて、きみのくちから聞きたくて。
「わ、わたし、も…る、るいが」
うぅ、ときみが唸る。かわいくって、こんなにかわいい子が僕を好いてくれるのがまるで夢のように思えて。でも抱きしめたきみの細い体が、赤みを帯びた頬が、そのぬくもりが。これは夢じゃないって、現実なんだって教えてくれる。
「ずっと、待ってたよ。寧々。」
「こんな僕だけど、よろしくね。」
「わた、しの方こそ…よろ、しく…」
寧々の小さな額に悪戯に口付けをして。もう1度、寧々好きだよってきみの耳で囁いた。
「遅いと思ったらオレらを放っていちゃついてるんすか?」
しばらく抱き合い夢中になっていて扉が開いたのに気づけなかった。先程の2人の青年が僕らをまるい目で見つめる。すぐさまもうもとの色に戻っていた寧々の頬がぼっと紅潮する。
「オレらを追い出せばよかったじゃないっすか。」
「草薙、置いてかれて悲しかったぞ」
「ぅ、ご、ごめん」
「そんじゃオレらは帰るんで。お邪魔しましたね。ごゆっくり〜」
「彰人、待ってくれ」
オレンジの髪の青年は彰人というのか。また、さりげなく礼でも言っておかねば。出来れば、あの子にも。まぁ、いいや。今は、そんなこと。
「寧々。僕を選んでくれて、ありがとう」
「ううん、わたしの初めての感情を教えてくれたのは類だから。わたしの方こそありがとう。」
感謝の言葉を交えて、夕日に溶け込んでいくきみを離さないように。「ガレージ、行こう。」と寧々の手を引っ張った。
今回で完結です…!!ガレージでの出来事は出してほしいとの声さえあれば出すかも…!?
コメント
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え、本当にありがとうございます 尊い…尊い…尊ぉぉぉい!! うん、1回落ち着こ… (*´д`)スーハースーハー ε=(・o・*) フゥ 類寧々が最推しcpになりそうだ… てかなりましたねこれ☆ もちろん冬こはも最推しですよ? 2つ最推しにします☆