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センチネルのバトルドロイドは初めて見たけど、データ通り数を揃えることを優先したみたいで性能二の次だ。いや、センチネルの兵器全般に言えることだけどさ。
私の奇襲で混乱したドロイド軍団は、そのまま引き上げていった。すぐに押し返してくるのは分かってるけど、一息吐けた。今回は間に合って良かったけど、300人の生存者は予想外だ。私のトランクでは一度に10人が限界。プラネット号と居留地を30往復?現実的じゃない。
「酷い話だよ。奴等はすぐに我々を始末出来たんだが、まるでなぶるように攻撃してきた」
テルスさんのお話だと、センチネルの偵察艦隊に見付かって全滅を覚悟した。でも艦隊は軌道上で待機して、何故かウォーカーを投入。
それも、ウォーカーだけで事足りるのにわざわざバトルドロイド軍団を投入して攻撃してきたらしい。
「被害は甚大だ。当初1000人居た同胞も、もはや300人前後しか残されていない。嬲り殺しだよ」
「っ!」
自然と拳に力が入る。700人が犠牲になってしまった。いや、センチネル相手に全滅しなかったのは幸運だと言うけど……。
「ティナ!」
「フェル?」
何とか追い付いたフェルが私のところまで飛んできて……近い近い、目の前に着地した。
「また無茶をして!怪我してるじゃないですか!」
フェルに指摘されて、左の頬から血が流れていることに気がついた。さっきの戦いでいつの間にか負傷してたみたいだ。
「あははっ、こんなのかすり傷だよ」
「もうっ!ちゃんとしないとバイ菌が入って大変なことになりますよ!」
フェルはちょっと怒りながら治癒魔法で傷を癒してくれた。暖かい光は、彼女の優しさを現しているみたいで心地良い。
テルスは目の前の光景に唖然としていた。数多の同胞が倒れ、最後のドームまで追い詰められてアード人の意地を見せるしかないと覚悟したその時乱入したのは年端もいかぬ少女だったのだ。
同年代に比べれば背丈は少し低く、スタイルもスレンダー。その緋色の瞳には強い好奇心を宿し、整った目鼻立ちに僅かに感じる幼さは彼女に可愛らしさを持たせた。
そして金の髪が当たり前のアード人としては異例である白銀の髪を肩口で切り揃えた姿は、彼女の異質さを現していた。
そしてそんな彼女に駆け寄って治癒魔法の手当てを行う少女もまた異質であった。若草色のワンピースタイプの衣服に草を編んだサンダルの出で立ちは、伝統的なリーフ人の衣服だろう。
だがその背にある透明な二対の羽根と美しい金の髪は彼女が一般的なリーフ人ではないことを示していた。
リーフ人は銀髪が基本であり、羽根も一対で蝶のような模様がある筈。にも拘らず彼女はそれを持たない。
また、スレンダーな体型が多いリーフ人らしからぬグラビアアイドル顔負けの肉体を持つ。
この明らかに異質なコンビの登場は彼らを戸惑わせるに足るものであった。だが。
「時間がありません。軌道上にはセンチネル艦隊が居ますし、撃退したこともすぐに知らされる筈。トランクはありませんか?」
「残念だが、真っ先に保管庫を破壊されている。トランクも全て使い物にならない」
「真っ先に保管庫を?センチネルが?」
知的生命体の排除を最優先にして施設攻撃は二の次になるセンチネルらしからぬ動きに、ティナも困惑を隠せない。
「ティナ嬢、君たちの戦力は?」
「プラネット号……ハンマーヘッド級駆逐艦が一隻です」
フェルの手当てを受けながらティナ応えると、テルス達は目を輝かせる。
「軍艦があるのか!?それなら脱出できる!」
「えっ?」
「実はな」
テルス曰く緊急脱出用に輸送船を一隻だけ保管しているが、軌道上にセンチネル艦隊が陣取っているため打ち上げを行えなかったのだ。輸送船は非武装であり、打ち上げは自殺行為になる。
「だが、もし君達が奴等の注意を惹き付けてくれたら輸送船を打ち上げられる。そのままゲートへ飛び込めば解決だ。とは言え、危険なことに変わりはないが……」
「良いですよ、やりましょう。センチネル艦隊は私達の船に気付いていません。奇襲を仕掛ければ勝機はあります」
テルスの要請をティナは快諾する。輸送船があるなら、軌道上のセンチネル艦隊をどうにかすれば脱出できるからだ。
「すまん、君達を頼るしかない。打ち上げが終われば、我々もスターファイターで援護できる」
「助かります!それで、時間は?」
「1時間あれば準備も整う」
「1時間、ですか」
センチネルが増援を投入してくるのは時間の問題、本当なら今すぐにでも脱出したいんだけど……無理は言えない。
「バリケードとシールドをある程度修復しておく。またドロイド軍団を投入してきても、1時間は耐えられる」
「分かりました。じゃあ、1時間後に攻撃を開始しますね」
「それに合わせて我々も宇宙へ上がる。済まないな、助けて貰ったのに更なる危険に君達を晒してしまうことになる」
申し訳なさそうにしてるテルスさん。
でも、皆を救えるならこのくらいの危険は覚悟してる。
テルスさんと簡単な打ち合わせを済ませた私達はギャラクシー号に乗って裏側で待機してるプラネット号へ戻った。居留地周辺は不気味なくらい静かで、ドロイドも見当たらない。センチネルがどんな手を使ってくるか分からないけど……。
「フェルはプラネット号の指揮をお願い。私はギャラクシー号で援護に回るから」
「ティナ……気をつけてくださいね?」
「うん、フェルもね。アリア、私のサポートは最小限に、フェルのサポートをお願い」
『畏まりました、ティナ。気を付けて』
ぶっつけ本番も良いところ、傍受されないためにテルスさん達と連絡すら取れない。でも、信じるしかない!
『ステルスモード維持、間も無くセンチネル艦隊が射程に入ります』
プラネット号はステルスモードを維持したままセンチネル艦隊まで忍び寄る。あんまり近付いたら見付かるけど……この距離なら!
直ぐに回線を開いてフェルをモニター越しに見る。
「フェル!お願い!」
充分に近付いて、私はギャラクシー号を一気に加速させる。
そして力強く頷いてくれたフェルが、大きく息を吸って……。
『撃てー!!!』
プラネット号から発射された緑色のビームがセンチネル艦艇の1隻を捉えた。
ビームの濁流を受けた軍艦には大穴が空いて……大爆発を起こす。よし!作戦開始だ!