便座の蓋をおろし、携帯電話を置く。液晶の画面を叩いて履歴を遡った。ある男の名前で指をとめ、タップ。真夜の顔色がみるみる悪くなっていく。
携帯を掴もうとするので両腕を後ろ手で掴み、尻の間に陰茎を擦りつけた。震えた太腿に、慎司の精液が流れ出す。
「やだ。きって、切って兄さんッ!」
顔を隠そうとするが、その間も与えず。蕾のなかへ入り込んだ。滑っていていつもより狭く、押し出そうと拒む。
「ぁ、アっ……ア……!」
真夜のうなじを押えて、奥まで進む。ぬるついて熱い肉壁が、拒否することはない。
肩を揺らして泣き始めた真夜を無視して、フェイスタイム通話の相手は携帯に出た。映り込んだ男は、唖然としてこちらを見ている。
「ぅ、う、ぅう……っ」
泣きじゃくる彼の腰を掴んで、壁を押し上げるように突いた。ねっとりとした肉壁に、精液を塗りたくるように動かす。
「よぉ、真也。さっきの話の続き、したかったから掛けたんだけど」
男、真也は周囲を見渡し、青ざめたまま殺意を秘めた眼で睨みつけてきた。
『慎司……どこにいる……』
「どこって、駅だけど」
腰を打つたび、波打つ真夜の尻肉を撫でまわす。震えた腰まで撫で上げながら見せつけるように顎を掴んだ。
「や……見るな……ッ、……しんや……っ」
すっかり力が抜けて抵抗できない唇に吸い付き、舌を絡める。真也に見えるように真夜のパーカーをめくりあげ、白い胸を揉みしだく。昼間、家を出る前に噛みついた赤いキスマークが液晶に映し出されていることだろう。
「う、ん、んっ、ぁ……や、ぁ、っ!」
角度を変えて唇を貪りながら、突き上げる。わざと音を出すように動かすせいで、にちゃにちゃと淫らな音が出る。
「可愛いだろ。俺にだけこんな顔してくれんだ。長男である俺だけ、な」
「あ、ぁう、っ」
尖って色づいた胸の乳首を指でつまんで弾いた。腰をくねらせる真夜の太腿を掴みあげ、膝の上に座らせた。奥深く抉る格好になり、びくびくとからだを跳ねさせた。
「ひぃ……いっ」
繋がった部分を見せつけるため、太腿を固定して広げる。胎内からあふれ出た粘液が肉襞を汚してどろどろとこぼれ出す。
「こんなに美味そうに俺のちんこ、食ってくれるんだ。俺のこと、すげぇ好きだろ?」
真夜は放心状態のまま、涙を流している。プライドが粉砕されたのだろう。最も見られたくない相手である真也に、己の醜態を見られたのだ。
『……慎司……お前…お前は…最低だ……』
切れ切れに言葉を吐き出す彼から溢れるばかりの怒りが感じられる。涼しい顔で慎司は彼のうなじに吸い付いた。
「お前だってこうしたかったくせに」
口角を上げてそういえば、真也の顔が分かりやすく赤くなった。
「真夜、言ってやれよ。俺が強制してるんじゃない、お前がこうシして欲しいんだって」
敏感になった真夜の陰茎の先を、指の腹で叩く。ぷしゃ、と陰茎から力なく精液が溢れだした。
「ひぁ、っ!」
全て出し尽くすまえに陰茎の根元を掴んだ。止めていた律動を再開し、首筋を何度も噛む。
「あ、ぁ、アッ……や、離して、兄さん、はな……っ!」
「だぁ……め。真夜がちゃんと真也に教えてやんないと」
「あう、っ!」
精液が溢れ出る陰茎の先に爪を立てて握り込む。可哀想なぐらい赤く変色した陰茎は、さぞ吐き出したくて堪らないだろう。
「イきたいだろ?……手を離してイかせてやるから、素直に言えよ」
「ふ、く……っ」
赤く尖った乳首の先を撫でるだけで、つまんでやらない。いやいやと首を振っていた真夜だが、慎司が陰茎を抜こうと腰を引く。堪らなくなったのか、腕にしがみついてきた。
「ぬか、な……いで」
「……ん?聞こえないんだけど」
耳たぶを真っ赤にして、小さく再度呟く。
「抜かないで……好き、慎司兄さんと、するの、好きだから、して……っ」
潤んだ瞳が見上げてくる。ぞわり、と全身が総毛だった。
「たまんね………ヤり殺してやるよ……」
真夜の陰茎から手を離して、そのまま、間も与えず激しく突き上げた。がくがくと揺れ動く彼の足が空を切る。つま先に引っ掛かっていたサンダルがゆれうごき、落ちる。
「う、ぁあ、あぁっ……!」
汗まみれになった真夜のからだを抱きしめて、離さないように拘束する。真也と目が合った気もしたが、携帯電話の電源を落として彼の唇を貪った。吐息を重ねて、舌を味わう。
「ぁ、あ……っ…に、さ……」
袖を掴んできた手を取って、指を絡める。唇の端をついばみ、濡れた髪を梳いた。猫のように目を細め、頬を擦り寄せられる。
……本当に、馬鹿だろ。こんなひどい真似をされているのに、拒まないで受け入れるなんて。
細く白い首筋を手のひらで撫で上げ、片手で包んだ。いっそこのまま、締め上げてやりたい。そしたら……。
「しんじ、にいさん………」
ぼんやりとした表情で見上げられる。汗で頬に髪を張り付けた真夜が、緩く嗤った。
「殺していいよ、……兄さんならいい……」
聖母を思わせるその笑みに、呼吸を奪われるほど胸が痛んだ。首に回した手をゆっくりと離して、下腹部に回す。子供がここにあれば良いとは、口に出来なかった。
精と汗で濡れた彼のからだを拭くものがなかったので、トイレットペーパーで清めた。
ぐったりとして意識を失った真夜を背負い、トイレから出る。周囲はほの暗くなっており、下校中の学生たちでプラットホームはごった返していた。
こうやって背負ってみると、真夜はやっぱり体重があまりない。普段小食のため、兄弟の誰よりも華奢だ。そのからだが誰よりも細く、抱きしめるととてつもない不安と焦燥感に駆られるのは、慎司だけの特権。
失ってはならない。離したくない。それだけを思い、いつも手の中にあることを確認する。
こいつは猫みたいなものだ。気まぐれで、飽きたらすぐに去っていく。それこそあとを濁すことなどない。
自分自身で幕引きの仕方を知っているのだ。だから試している。どれだけのことをしたら逃げていくのか、少しずつ針を飲ませているようなものだ。
車両が入ってくることをアナウンスが告げる。背中の温度を確認しながら、背負い直した。学生たちが物珍しげに見つめてくるものの、気にならない。
目の前で開いた自動ドアに、吸い込まれるように足を踏み入れる。ゆっくりと車窓が動きだし、やがて見慣れた町へと帰っていく。二人分の切符を改札へ差し入れ、帰路を急いだ。きっと他の兄弟は、いつも通りに迎えるはずだ。
……真也を除いては。
首だけを動かして寝息を立てる真夜の額に口づけた。一生消えない傷を作ることができたらいいのに、と思った。
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