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結局最初からやり直し。という事で、再度ミューゼに木を生やしてもらった。

今度はあらかじめ何度か別の場所で練習し、最小限の必要な大きさに調整。木を生やす場所も葉の上ではなく、ファナリアで見る大木よりも太い枝の上なので、少々の重さではビクともしない。

ドアの絵から少し離れた場所に木を生やし、形状を捻じ曲げ、ドアを囲うように蜷局とぐろを巻いて、上部は葉で蓋をする。最後はパフィが横部分を切り開いて入口を作れば、即席の小屋の出来上がりである。


「こ、これでいいですか……」

「うむ、よかろう」


魔力切れではなく、魔力を調整して最小限に抑えるのに疲れたミューゼが、ペタリとその場にへたり込んだ。

これはチャンスと、ミューゼ達を労わろうとするアリエッタ。


「みゅーぜ、だいじょうぶ?」

「うん、大丈夫よ。ありがとね」

「ぴあーにゃ、だいじょうぶ?」

「うん? ああ、わちはなにもしてないが……」

「だいじょうぶ?」(ぴあーにゃも、みゅーぜの隣で頑張ったからな。甘やかさないと駄目だ)


ピアーニャはヤケになってミューゼに指示をしていただけなのだが、アリエッタには、妹分がミューゼの隣で一緒になって頑張ろうとしていた姿…に見えていたようだ。


(こんな小さいのに、仕事を覚えようとするなんて、健気だなぁ。よしよし)

「なんでわち、なでられてるんだ?」

(さて、ぴあーにゃは疲れただろうし……うん)


そこからは迅速に、流れるように、ミューゼとピアーニャの手を取り、新築の中に駆け込み、2人を寝かせた。突然の行動に対して、2人の思考がまとまる前にである。


『……え?』

「ぴあーにゃ、みゅーぜ、おやすみ」


ピアーニャは何が起こったか分からないまま、2人の間に寝かされた。ぽんぽんと優しく叩かれ、ようやく思考が戻る頃には、アリエッタは寝入ってしまっていた。

ミューゼは既に諦め、流れに身を任せてピアーニャの動きを封じている。

そしてアリエッタの背後には、いつの間にかパフィが密着して転がっている。

それを見て察したラッチも、家の隅に移動し、体を変形させて可能な限りの面積を木に密着させた。隙間風を埋める粘土のような姿になって、幸せそうに蕩けている。

そんな一同について行けず、家の入口で茫然と佇むムームーは……


「なんでわたし、この世に存在してるんだろう……」


どこか遠くを見るような目になり、ヒトの世の真理について悩み始めるのだった。




しばらくして、結局不貞寝したピアーニャが目を覚ました。


「ここはこうで……」

「あ、もうちょっと低くするのよ。アリエッタと総長には高いのよ」

「この子供用椅子を使えばいいよ」

「それいいね」

「だれがコドモだっ!」


これは聞き捨てならないと、慌てて跳び起きる。


コンッ

「へきゃっ!?」


すると、背後で可愛い悲鳴が上がった。その声の主に、ピアーニャが思いつくのは1人しかいない。

恐る恐る振り向くと、なんとか身を起こしながらも、今にも泣きそうなアリエッタがいる。同時に、近くで徐々に殺気が膨らんでいく。

マズいと思ったピアーニャは、殺気の方を絶対に見ないようにしながら、慌ててアリエッタの泣き止ませ方を模索。しかし、一番やりたくない方法しか思いつかない。


(く、くそぉっ! うらむぞテリア!)


背後の殺気で息が詰まりそうになった時、それを実行した。


「アリエッタ、よーしよーしよし。ごめんなさい、ちゅっ」

「…………ふぇ?」


アリエッタの時が止まった。周囲の時も止まった。


(なんというクツジョクっ! それもミンナのまえでっ)


以前ネフテリアと、アリエッタを泣かしてしまった時の対処法を考えていた。というのも、そんな事になったら保護者がどうなるか分かったものではないのだ。

単純に力でねじ伏せて大人しくさせるというのなら問題無いのだが、力以上に気迫が恐ろしい。以前王城でディランがやらかした時も、その気迫に呑まれて全員逆らえなくなってしまった程である。

その方法とは、謝ってキスをする。もしくは大人の魅力で包み込む。

後者はピアーニャには不可能。という事で、謝ってから頬にキスをしてみたのだが……


「……な、なんだ!?」


アリエッタが泣くのは止められたが、違う寒気を感じ、後ろを振り向いた。

全員が温かい視線をピアーニャに向けている……のだが、中に冷たさも混じっている。


「ほっこりするねぇ、ピアーニャちゃん」

「負けないのよ」

「しるかっ」


アリエッタに抱き着かれながら、そんな優しい目で嫉妬するなと言いたいピアーニャであった。




「で、2人が寝てる間に、家の改造リフォームしてみました」

「なんでだよっ!」


気を取り直して、ムームーが家の説明を始めた。いきなり家を改造した理由とは、


「むしゃくしゃしてやりました」

「わるかった! あやまるからオマエまでコイツらとおなじにならないでくれ!」

「さて、こちらは出入口」

「ムシかい!」


もうどうにでもなれーの精神である。

ほんの数刻で仕上げたという事もあり、必要最低限な設備だけを整えてあるが、そもそもドアを隠すために作った家なので、本来家具などは必要ないのだ。


「わたしの糸でカーテンを作りました! これで外から見られる事はありません」

「う、うむ……」

「続いてキッチンです! 火は使えないと注意を受けていたので、木の台とホットプレートを置きました。これでラスィーテ人以外でも簡単な料理は可能ですよ」

「はぁ……」

「そしてトイレ! ピュリファイアを置いて個室にしました! これでもう恥ずかしくありません!」

「……そうだな」

「最後にお布団! わたしが生地を作り、中にミューゼが出した葉っぱを詰め込んでいます。これで夜もぐっすりです!」

「ムダにカンペキでこまる……」


一通り説明を聞いて、すっかり怒る気が失せてしまったピアーニャ。それもその筈、探索中には最低限欲しくなる設備が揃っていて、拠点としてはとても良い物になっている。

家具には手放せない器具もある。『ホットプレート』はワグナージュが開発した食べ物を温める鉄板。『ピュリファイア』はハウドラントとファナリアで共同開発した浄化式簡易トイレの魔具である。

何も言えなくてため息を吐いた時、外から人がやってきた。


「おまえら仕事しろお!」

『えっ、きゃあああああああ!!』


バルドルである。

仕事の催促のために、女性陣の中に飛び込んだせいで、大きな悲鳴が上がった。


「ちょっ、ちが、まて、ぐべっ!」

『出てけええええ!!』

どっごおおおん


ミューゼ、パフィ、ラッチが、バルドルに襲い掛かり、ムームーがカーテンを入口から退かしたのに合わせて、思いっきりぶっ飛ばした。


「おまえら、イキぴったりだな」

(しんせーのおじさん、なむなむ)


バルドルが枝から落ちそうになっているのを見なかった事にして、今がチャンスと話を戻す事にした。


「よし、でかけるぞ!」

「え?」

「何の話なのよ?」

「たのむからシゴトしてくれっ!」


ピアーニャはとにかく調査に向かいたい。シーカーとなったのも、総長となっているのも、新しいリージョンを知りたいが為なのだ。

いろいろあって(だいたいアリエッタのせい)未知のリージョンにいるのに、いまだに転移地点からほぼ動いていない。もう我慢の限界のようである。


「さぁいくぞ! いますぐいくぞ! ドアなんかもういいから!」

「うふふ、駄々こねちゃって、かわいいですね」

「おまえっ……」


唯一の味方だと思っていたムームーからも揶揄われ、一瞬睨みつけた。が、その瞳の奥にある疲れにも似た同情の色に気づき、言葉を切った。


「……………ふん」

「まぁまぁ。お察ししますよ。ほらほらアリエッタちゃん。こっちにおいでー」

「はわ……」(よくみたら、むーむーってすごく可愛いな。歌とか踊りとか上手そう)


ピアーニャからアリエッタを離すため、ムームーはアリエッタを抱き上げた。

ルイルイでアイゼレイル人を見慣れているアリエッタだったが、間近でムームーの顔を見たのは初めてである。その可愛らしい顔立ちと今の服も相まって、前世で見ていたアイドルを思い出していた。

ただし、その体を見たのは初めてである。


「ん?」(関節が…球体関節? 蜘蛛か蚕っぽいなーと思ったら、人形っぽいな。どういう人種なんだろう)


初めて見るその肘と膝に、首を傾げていた。不思議な人体はパフィの髪の毛で見慣れているが、初めて見る構造はやはり不思議に思うのである。自分の肘とムームーの肘を見比べ始めていた。


「本当に可愛いですね。わたしの体にも興味深々のようで」

「さすがにヘンなことはするなよ?」

「分かってますって」


何はともあれ、アリエッタがムームーの腕の中で、ついにおとなしくなった。このチャンスを逃す手は無いと、ピアーニャが家の外へと繰り出し、


「さぁいくぅわっ!?」


何かに躓き、転んでしまった。


「総長? 手繋ぐのよ?」

「いらん! いったいなにが………………」


足元を見ると、そこには木から顔をのぞかせた、ニンジンの姿があった。

ただ生えているのではなく、ニンジンに顔があるのだ。


「ん? 何このちっちゃいマンドレイクちゃん」


ミューゼが口にしたその名の通り、見た目はマンドレイクちゃんに似ている。ただし大きさは普通の食用サイズである。

そのニンジンが、木から飛び出し、ミューゼに近づいた。


「マンドれイクちゃんとハ、同胞ノ名前でスか」

『喋った!?』


なんと、ニンジンは言葉を発した。ところどころ発音が乱れるが、間違いなく共通語で喋っている。交流の無いリージョンではありえない事だった。


「おまえ、コトバがつじるのか?」

「この家かラきおクを読ミ取り、言語といウものを理解シましタ。あなタ達ハ、外部ノ者達でショう?」

「記憶を読むって、私の魔力から吸い取ったって事? それじゃあアリエッタにヤっちゃったあんな事とかバレたら……」

「ちょっと詳しく話を聞かせるのよ?」

「ちょっとだまっててくれないか?」


ミューゼの行動は気になるが、今はそれどころではない。現地のヒト?が接触してきたのだ。

いきなり現地人と話が通じるなら、最大級の情報源となる。これを逃すなど、ピアーニャには出来ない。


「目的がコのリージョンの調査というノは、記憶かラ理解しましタ。そして、ミューゼさんガ、このリージョンの力を操ってイる事も」

「え、そうなの?」

「ようコそ、お客様。この木は私達の間では、古来より『ネマーチェオン』トいう名で記憶さレています。オそらく、あナた方が『リージョン』とよぶモノでス」

「お、おう……」


予想外に親切丁寧に説明してもらい、全力で戸惑うピアーニャであった。

からふるシーカーズ

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