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⚠︎︎現パロ⚠︎︎
ローレン・イロアスの夢小説です
ネームレス
なんでも許せる人向け
安いアパートの一室。隣の ローレンはまだ目を覚まさない。
昨晩は機嫌が悪かったのかいつにも増して手酷くされた。起き上がろうとして、腰がずきずきと痛む。
「……はぁ」
彼は所謂ヒモで、私たちがこの生活を始めてからもう2年になる。
元々彼の住んでいたアパートに私が転がり込む形で始まったこの関係は、じくじくと私を蝕んでゆく。
何度やめようと決意しても、彼の体温に触れるたびにその覚悟はじわりと滲み、消えた。
そうして今になっても、ずるずると続けてきたこの関係をまだ辞められずにいる。
「ローレン、起きて 」
隣で眠る彼の体を軽く揺さぶって起こす。もう昼前だ。彼は仕事をしていないとはいえ、昼夜逆転してしまうのはあまり良くないだろう。
「ん……」
彼の目が薄く開いたことを確認して、ベッド脇のカーテンを開ける。
「っ、まぶし……」
「布団被らないで、起きて。もう昼だよ」
再び布団を被ろうとする手を掴んで阻止して、無理やり起き上がらせ、ベッドからおろす。事後の朝はいつもこうだ。
「ごはんパンでいい?」
「んー……」
寝癖の着いた髪が歩く度にぴょこぴょこと揺れる。昼の柔らかな日差しを受けたローレンはいつもよりも健康的に見えて、少し面白い。
「何笑ってん」
「……なんでもない」
眠そうに目を細める彼を見ていると、昨夜の暴力的な空気さえ、ただの夢だったのではないかと錯覚してしまいそうになる。
「顔洗っておいで」
おぼつかない足で洗面所に向かう背中を見届けてから、トースターにパンを2つ入れる。二人とも朝はあまり食べない派だ。
「いただきます。」
平日はいつも眠るローレンを起こさないよう一人で静かに食べるから、こうやって二人で食べる休日がいつもより少しだけ好きだった。ローレンの横顔を盗み見ていると、ふと私の携帯が短く振動する。明るくなった画面に視線を移すと。
『明日の仕事終わりまた飯行きませんか?』
まずい。恐る恐るローレンの顔を見る。彼も画面を見つめていた。
「……これ誰?」
「職場の……ひと」
彼の表情から温度が消えた。スマホを取ろうとした手をガッと掴まれる。ぎりぎりと短く整えられた爪が食い込んで痛い。
「ローレン、痛……」
「男?男だよな?」
震える手から、彼が強引にスマホを奪い取った。開放された手は血の気が引き、白く染まって震えている。
画面を睨むローレンの口角が、歪に吊り上がった。
「またってことは前にも行ったってこと?」
「いや、それは断れなく」
言い切る前に、ガタッと音を立てて立ち上がったローレンは私の腕を強く引き、勢いよく床に倒す。打ち付けた背中が、昨晩痛めた腰と一緒にひどく痛んだ。
私を見下ろすローレンの瞳は、昨日の夜とおなじように私を射抜く。その瞳は、見つめられるだけで背筋が凍って動けなくなるような、それでいて指先に甘い痺れを感じさせるような、支配的な何かを孕んでいた。
彼はテーブルの上にあった煙草の箱を手に取り、取り出した1本に火をつけた。私は彼が纏うこの煙草の匂いが嫌いではなかった。
緩慢とした動きで煙草を咥えて、1度煙を吐き出す。立ち上る呼出煙と、吐き出される副流煙が彼の輪郭を曖昧にぼやけさせた。
「お前はさ、俺以外の男。好きになれないだろ?」
私の部屋着の胸ぐらをつかんで言った。がくがくと揺らされて、首が少し痛い。
「なのになーんでこんなことするかなぁ」
ローレンが腕を振り上げる。直後、頬に強い衝
撃と、その後に痛みが走った。ここで抵抗すればもっと酷くされるのは今までの経験から分かりきっていたので、されるがままにする。
すこし開けた窓から入ってきた春の風が、穏やかに、優しくふたりをを撫でていく。春特有の、世界中が微睡みの中に溶けていくような気候のせいだろうか。振り下ろされる彼の拳がゆっくりと、スローモーションに見えるような気がする。
体のあちこちがじんじんと熱を帯びていくのを感じながら、彼が落ち着くのを待つ。
じゅっ、と、手のひらに煙草を押し付けられた。熱い、痛い、もうやめて。 痛みに喘ぎながらごめんなさいと涙を流せば、彼は少し恍惚として笑みを浮かべるのだ。そうして機嫌の良くなった彼は、いつものように私を抱きしめて、私の体に浮かび上がる痣を優しく撫でるだろう。
いつから、どうして。それを考えようとすると、流れ込むあの煙草の煙が思考に白く靄をかけてしまう。結局いつも考え込むのが面倒になって、また彼からの支配と、愛部と、暴力を享受するだけの日常へと戻されるのだ。
「おい、聞いてんの」
灼けるように熱くて、甘く痺れる痛みを受けた手のひらが、私を彼から離してくれない。
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玲奈