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【フランスside】
…
…夜、?
アラームもなしに目だけを覚ます。
日は跨いでいないらい。結構暗いけど、多分まだ夜の7時前後だろう。
午前中に起きた時よりも意識がはっきりとしていて、記憶を呼び起こすのにさほど時間はかからなかった。
…残念、どうやら悪夢は続くらしい。
色々な記憶を辿っていたら、ろくに食事をとっていないことを思い出して、支度でもしようかと上半身を起こす。
すると、急に背中側がぼんやりと白く光って、部屋中に小さなバイブ音が鳴り響いた。
「電話…」
手だけを後ろに回してスマホをとる。
まだ明るさに慣れない目で画面を見ると、 そこにはイギリスという文字が浮かんでいた。
「…っは、?」
イギリス…イギリス、!?
まだ完全に覚め切らない頭のまま、
慌てて飛び起きた勢いで電話に出ると、聴き覚えのある声が機械音越しに聞こえてきた。
《あー、フランス?掛けて平気でしたか?》
「ぃや、大丈夫…だけど」
どうしよう、
つい先日に諦めなきゃいけなくなったのに、今まで何ともなかったのに、改めて掘り返された思いが、これでもかというほどに気持ちを昂らせていて
「寝起きで…ごめん、うまく話せないかも」
嬉しさとか、虚しさとかが、全部一括りにラッピングされたような、そんな気分。
《聞いているだけで大丈夫ですよ》
「…ありがとう」
《昨日はG7のメンバーで集まっていたんですか?》
《随分と騒がしそうで…どうせ話題は私なんでしょうけど》
《イタリアから電話が来た時は驚きましたよ。帰り道だからよかったですが》
「…帰り道、?」
《え、はい。…なにか引っかかりましたか?》
「いや、…今日ってこれから予定あるの?」
《特…には?》
「昨日早く帰ったのって、予約かなんかでしょ?」
《よく分かりましたね…早めの時間帯でないと間に合わなかったので》
…なにこれ、
噛み合ってるようでズレてる気がする…というか、まともな休日なんて今日ぐらいなのに、イギリスはいつに予約を取ったんだこれ?
「イギリス…って、いつに予約とったの?」
《そんなに気になります?別に予約はいつとかじゃないですよ。言うなれば今日?なんでしょうか》
「…なんかクイズみたいになってきたんだけど?」
《フッ、クイズですか?まあ私も少し意図的にぼやかしてましたからね》
「なにそれ…というか今日なら、今って通話してていいの?」
《はい?》
「…誰か待たせてるんだったら、僕と話してる場合じゃ、」
コンコン…
…ふと、
会話に水を刺すように、玄関から音が鳴った。
電話の音も、時計の音も、外から聞こえていた風や車の走行音も、全部止まったみたいに部屋は静寂に包まれて、それに釣られて思考も止めてしまっていたことに気づくのに、しばらく時間がかかった。
自然と口から息に混じって声がこぼれて、ちょうど秒針の音と重なった。
「…ぇ、」
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