・初投稿です。お手柔らかにお願いします。
・蘭春、春ココ展開のつもりは一ミリもないです。完全な竜春です。
・ウブな甘々です。
・高評価が多ければ続き書きます。
・もし続きが出ればハッピーエンドになります。
桜シロップ
やけつく様な暑さに、茹だる様な湿気。人々はやれ夏休みだの、やれ海開きだの騒ぎ立てる中その人は桜の髪を靡かせながら女なら誰もが夢見るであろう端正な指で銃の引き金を引いた。
「おい三途、お前また見事に飛んでるなぁ。おい竜胆、見てみろよこいつの顔。」
そう言って梵天随一のサイコパス、蘭は振り返った。
「うわあ、きったねぇ面。」
竜胆と呼ばれた可愛いらしいウルフカットの男も同調する様に三途を見下ろした。
「んー。なぁ九井、三途もう仕事入ってねぇよなぁ。」
蘭が楽しげに九井にそう聞いた。
竜胆は瞬間。察した。生まれたときから一緒だったのだ、蘭の思惑など手にとる様にわかる。そして今まで、それに逆らったらことなどなかったし、まして邪魔をしたことなど一度もなかった。生まれたときから蘭は竜胆の全てで、竜胆の絶対だった。蘭にとってもそれは同じであろうが。
ーーーー三途が。喰われる。ーーーー
兄の言葉を聞いて、瞬時にわかった。蘭は本当に三途を喰うだろう。面白いと思ったことはなんでもやる、蘭はそう言う男だ。ゾッとした。理由は自分でもよくわからない、三途のことなんて今まで気にも留めたことがなかったのに、わからない、本当にわからないのだ。けれど、自分が一番に慕う兄だったとしても、三途が自分以外の者としているところを想像したら頭がぐらぐらと沸き返りそうだった。
出来るだけ、平然と、顔に出さず、いつもみたいに。
「兄貴、三途になんて構ってないで今日公開されたプラダの新作見に行こうよ。」
声は震えていなかっただろうか、顔は引き攣っていなかっただろうか。
「あー。そうだったな、可愛い竜胆の頼みだし。春ちゃん、またね♡」
蘭はその甘く美しい顔でにっこりと三途に微笑かけるとそのまま竜胆を連れて去っていった。
「ヴっぇ、きっしょい呼び方してんじゃねぇぞ灰谷ぃ⁈」
飛びに飛びまくっていた三途は気づかなかったのだ、去り際、竜胆が一瞬心配そうに三途の方を振り返ったことを。
竜胆も気づかれまいとすぐに顔を戻してしまったから。しかし、ずっとそこで静かに膨大な量の書類を消化していた九井には全て見られていたことを竜胆は知らない。
おかしい。何がおかしいのか。そう聞かれるとよくわからない。ただ、変な気分になる。竜胆が視界の端を掠めただけで、竜胆の声が聞こえただけで、ふわふわと心が浮つく。訳がわからない。さっきもそうだ灰谷兄だけのときはいつもみたいに売り言葉に買い言葉、どんな暴言だって吐けるのに、竜胆の前だと息が詰まって、何も反論できなかった。
「あぁっ、くそ。」
「三途、どうした?」
「九井…俺さ、最近なんか変で。」
「どんなふうに?」
「なんて言うか、あ゛ー。だめだ、うまく言葉に出来ねぇ。やっぱなんでもない。」
「そうか、なんかあったらすぐ言えよ。俺のできる範囲だったらいくらでも助けてやるから。」
九井は三途に少し甘い節がある、三途も九井のことは特別信頼しているのだろう、大抵の相談ごとは九井にしていた。
「今日は朝から仕事だったんだろ、明日も早いんだからもう家帰って寝ろ。」
「ん、九井も無理するなよ。あ、そういえばこの前の会食のとき先方のババアから菓子折りもらったんだけどお前にやるよ。」
「菓子折り?」
「あぁ、お前のだーいすきな札饅頭♡」
「そんな端金いらねぇよ、それにせっかくお前が気に入られて貰った金だろ?お前の好きに使えよ。」
「そう言うと思ってもう使っちゃいましたー。って事ではい、これ。颯饅頭が可愛い金魚に大変身。」
「金魚のティーパック…?」
「あぁ、疲労回復に効果があるって事で評判らしい。お前最近疲れ溜まってんだろ?」
「三途…なんでわかった。」
「三途様を舐めるなよ!部下の体調管理は上官の務めだからな。」
相変わらずこの男は…こんなに人の機微を見分けるのが得意な癖に、自分の好いた男の機微は何一つ汲み取れないんだもんなぁ。竜胆も、こいつも、本当に馬鹿だ。でも、だからこそ、応援したくなってしまう。
ーー頑張れよ、三途。ーー
九井は心の中でそう呟くと、ぱっぱと三途を外に追いやり家に帰した。そして、一人にやけながら三途の残していった紅茶を淹れるのであった…
♡は何回でも押していただけますし、作者のモチベーションへ直結していますので是非押していただけたら嬉しいです!
コメント
6件
こういうほのぼの竜春もっと増えて欲しい!供給量少ないから続き渇望。
いやもう。コレはノベルのせいだな…
続編更新 高評価二万以上 …続きが出ればキュンキュンな恋廻りとは違ってほのぼのラブラブな竜春になる予定だったんですが、なんで開かなくなっちゃったんだよノベルスタジオー!