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「うぇ……うぇぇん……」
銃兎?と思わしき子供はべそべそと泣きながら寂雷の前にいた。
「……」
左馬刻は銃兎を怪訝な顔つきで見る。
「ひっ……」
銃兎が左馬刻の視線に気づき、びくりと肩をふるわせる。
「うへー、左馬刻、怖がられてるやーん、第一印象が悪かったな〜」
簓が左馬刻の背中をぽんぽん叩く。
「っるせぇ!! 」
左馬刻は幼いといえど銃兎に怖がられているという事実が信じがたく簓を怒鳴る。
「左馬刻くん、これ以上この子を怖がらせても何も進まないよ」
簓と左馬刻の会話を見ていた寂雷が注意する。
「……分かってっけどよ……」
左馬刻は頭をガシガシとかき、銃兎に向き合おうとする。
寂雷も下に目線を向けるが、そこに子供はいなかった。
「わぁ〜!!! 頬柔らかい!! ぷにぷにしてる!! 可愛い〜!!!」
乱数の声が聞こえ、簓、左馬刻、一郎、寂雷がそちらに目線を向けると、乱数と空却が銃兎を抱っこしながら頬をぷにぷにさせているところだった。
「はぁぁぁ……柔らかい……ストレスが消えてく……」
乱数が銃兎に頬ずりすると、銃兎は泣いて真っ赤に腫らした目元をへにゃりと柔らかくさせ、きゃらきゃらと可愛らしく笑う。
「……可愛い」
乱数の素での可愛いは中々聞くことがないので、リーダーたちは驚きつつ、乱数と空却の方に向かう。
「んで、こいつどうすんだよ」
空却が6人に問いかけると、みなそれぞれの反応をする。
「どう、いうてもな……」
簓が扇子を広げて空を仰ぐと、一郎がため息をつく。
「その前に、本当に入間さんなのかを確かめなきゃだろ……」
一郎はもう一度大きなため息をつくと、子供に歩み寄り、そっと乱数の手から抱き上げた。
子供はきょとんと大きく、長い睫毛で縁取られた目をぱちぱちさせた。
「お名前、言えるか?」
一郎が優しく問いかけると、子供はぱっと顔を明るくさせた。
「いるま、 じゅうと! ごさい!」
「……」
一郎はその笑顔を見た瞬間硬直する。
「一郎くん、銃兎くんをこちらへ」
寂雷はそれを見て何かを察し、銃兎をひょい、と抱えあげた。
「……ねぇ、ずっときになってたんだけど、おにいさんたち、だぁれ? ぼくのこと、しってるの?」
銃兎が問いかけると、一郎がだばーっと大粒の涙を流し始めた。
「!?」
銃兎はそれを見ると猫のように目を細め、寂雷の首にぎゅっ、と抱きつく。
「あっはは〜! いっちろ〜、どうしたの〜?」
乱数がけらけら笑いながら聞くと、左馬刻が怒鳴り声をあげた。
「急に泣くんじゃねぇよクソダボッ!! 銃兎にこれ以上怖がられたらどうすんだ!!」
「その声で怖がられてる気がしなくもねぇが……」
空却がちらりと銃兎を見ると、背中を狼に遭遇した子羊のようにふるふる震わせながら、寂雷の首元に顔を埋めていた。
「はぁ……ごめん、入間さん……可愛すぎて……」
一郎は簓が無言で差し出したティッシュで鼻をかみながら言った。
「……とりあえず、お家の人のところに行かないとですかね……」
寂雷は今だぷるぷると震える銃兎の背中をぽんぽんと優しく叩きながら言う。
「えぇ〜!!! やだやだやだ! もっとうさぎさんのほっぺ堪能するの〜!!!」
乱数が頬をふくらませながら寂雷を見る。
「駄目です」
寂雷に即否定された乱数は、「はぁ〜〜!!??寂雷のケチ!!」と怒り、ほかの1番手のメンバーは呆れながら見ていた。
銃兎は、もう慣れたのか、寂雷の長い髪の毛を自分の指に絡めたり、もぐもぐと口に含みながら寂雷の首に抱きついていた。
もちろん、寂雷、その他のメンバーから口に含んでいた髪の毛を今すぐにぺっするように言われた。