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引退を口にし続けるあたしに、なだめても無理だとわかった事務所関係者らは、次に交換条件を出した。
だったら、引退コンサートをやろうと。
でも、こないだニューアルバムのツアーが終わったばっかで、引退コンサートって変でしょ? って言ってやったら、関係者はまたも頭を抱えた。
そう、ふつうに考えて、おかしいよね。
なんでニューアルバムを出しといて、いきなり引退するんだよ? って感じで。
どうでもまだ”七瀬リオ”で稼ぎたい事務所サイドは、仕方なく苦肉の策を打ち出した。
「じゃあ、こないだ最後に歌った曲を、ラストソングとして出せ」と。
これにも、同意しないわけにはいかなかった。
七瀬リオには、今までお金がいっぱいかかってるんだって、言われたしね。
それぐらいは返せって言われたから。
あたしは、「REAL」を、ラストソングとして、発売することになった。
「REAL」の発売が決まったと同時に、引退の話は一気にマスコミに広まった。
たぶん、事務所がリークしたのに違いなかった。
もう引退が決まってしまった今となっては、やっきになって話題をもみ消すよりも、あおってぶちまけてしまった方が、けっきょくは曲も売れるし。
事務所側が情報を解禁したことで、あることないことが、七瀬リオに関して、そこかしこに書き立てられるようになった。
そうして、あたしが一番恐れていた過去のことまでもが、やがて引っ張り出されてきた。
ゴシップ誌に書かれた、「七瀬リオは、かつてイジメられていた!」という記事。
同級生のAとかいう女が、語ってるらしいその記事には、あたしのイジメられてる様が、まことしやかに書かれていた。
そうしてイジメに付随して、かつての同級生の自殺にも話題が及んで、あたし自身もいつの間にか、イジメから自殺へと追い込んだ主犯格にされていた。