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詩音の家に残っていた4人は話に花を咲かせていた。
美咲と翔が、空気を変えようとした結果だった。
「ぇえ?三崎さんってそれで店辞めたんですか?」
空になった紙のコーヒーカップを弄びながら三崎はニコニコと笑う。
翔は思わず声を出し、沙織は口元がにやけそうになるのを抑え、視線をミサキに動かした。
ミサキは口を引き締め、不機嫌そうにしている。
三崎がミサキに惚れ、交際を申し込んでいたがずっとミサキに断られていた。
ミサキには離婚歴がある。三崎の事は嫌いじゃない。むしろ、交際を申し込まれた時非常に嬉しく感じ、朝まで詩音と飲み明かしたことがある。2人だけの秘密だが。
しかし、承諾するのに8ヶ月も待たせた。
三崎は離婚から来る再交際というのに臆病になっているのでは、と考え猛アプローチをしていた。
少なからず好意があるのが分かるのと、否定も拒否も無かった為、全力で可愛がった。
そして、とうとう付き合う事となるきっかけが店長と和人だった。
『いいかげんうぜぇ!』
の、店長の口火から、テーブル席へ総移動し、強制話し合いの場へと切り替わった。
『うざい気持ちも分かるよ。従業員同士で甘酸っぱい空気出すのやめて。いたたまれない』
『ミサキさんも意地張ってないで正直になっていいと思いますよ。可愛いでしかない変な理由なんですから』
『詩音!それ、褒めてないわよ!』
『いっつもはぐらかしてくるんだよー。なのに拒否しないんだ。俺って弄ばれてるのかも』
『毎度好き好き可愛い言ってたら飽きるだろ。本当かどうかも嘘くせぇ』
『正論なのがなぁ。薫、言い過ぎって思うけど、、同感だな。美咲さんは、三崎の事好き?嫌い?』
『、、嫌いじゃない。です。』
『素直になれないみさちゃん可愛い』
『三崎、黙れ』
詩音が三崎の耳を塞ぎ、和人が顔面手のひらで隠した。
2人の4つの目が続きを促している。
『おら、早く吐いちまえ。詩音上がりの時間なんだよ』
『私、こんなじゃないですか。バツも付いてるし、子供、産めないし。この年齢で付き合うとなると一緒になるのが見えてくるじゃないですか。もう、拒否されるの嫌だし。何より、三崎美咲になるのが、ほんと嫌で。』
ミサキはふくよかな体型をしている。薫達と年もそう変わらず、三崎は5歳年下である。
そして、ミサキには子供が出来ない事を気にしていた。
子が出来なかったのと、太った事が離婚の理由だったからである。
『えっ、みさちゃん子供産めないの?』
4つの手を顔から剥がし、三崎が目を丸くしてミサキを見る。
『一緒だねー。俺も子供産めないー。というか、できちゃったら正直困るかも。高齢出産になっちゃうし。俺、みさちゃん独占したいな。名前は、、、。名前まで俺と一緒になってくれるなら嬉しいかも。俺、三崎でよかったー』
詩音が思わず、ふふっと笑い、薫が呆れる溜め息を吐き、産めたら怖ぇよ。と口の中だけで呟き、和人が『言い方が軽いけどかなり重いね』と若干引いた。
ミサキは顔を赤らめ、口をぱくぱくさせるが言葉がまとまらない。
『どうしたら付き合ってくれる?』
前のめりに乗りだし、ミサキを覗き込むようにして結論を委ねることにした。
『、、三崎くんが、、。ここを辞めてくれたら、、』
にこっと三崎が笑み、テーブルに常備されている紙ナプキンにボールペンで《退職届》と書き、幸せになるため。と理由を書いた。
ニコニコと無言で薫に渡し、薫が若干嫌そうに受け取った。
受理はするが、紙ナプキンを受け取るのは最初で最後だろう。保管が必要なのだろうか。
三崎は、翔達に脱線しつつ話して聞かせ、冒頭へと戻る。
沙織は、あらまし程度は聞いたことがあった。
三崎美咲になるのが本当に嫌で引き延ばしていた。
同棲はするから籍は入れたくないと駄々をこね、その時には働いていた悠真に言われ、じゃんけんで負けて婚姻届に名前を書いたのも、沙織は聞いていた。
もし、ミサキが勝ったとしても『もういっかい』が聞き入れられることは皆が知っていた。
そんな会話が続いている時、チャイムが鳴り響いた。
4人それぞれ顔を見合わせ、翔が急いで玄関へ向かう。
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コメント
1件
読ませていただきました!ミサキさんと三崎くんの馴れ初め話、めちゃくちゃ良かったです…。特に「一緒だねー。俺も子供産めないー」からの三崎くんの返し、あれで全部解決しちゃった感じがして胸が熱くなりました。紙ナプキンに書いた即席退職届も、軽いけど本気の愛情が伝わってくるようで。あと、詩音や薫たちが見守ってる雰囲気も温かくて素敵ですね。次、チャイムの正体が気になります!
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