若井に肩を支えられたままソファに座らされた涼ちゃん。頭はまだぼんやりしていて、視界の端が揺れている。
元貴がゆっくり立ち上がり、
テーブル横に置かれた涼ちゃんのリュックへ目を向けた。
「…涼ちゃん。正直に言って。
昨日、何の薬飲んだの?」
涼ちゃんは一瞬で顔色を変える。
胸の奥がズクッと痛んだ。
「あ…ちょっと……やめ…」
小さく震える声。
元貴がリュックに手を伸ばそうとした瞬間、
涼ちゃんは反射的に立ち上がった。
でも眠剤のせいで足がふらつき、
壁に一度よろめきながら、必死にカバンの前へ移動する。
「やめて……ほんとに……」
声が弱くて、息が上ずっている。
若井と元貴は、追いかけるというより、
倒れないように慌てて涼ちゃんの腕を支える。
「涼ちゃん、無理して動くなって」
若井が焦った声で止めようとしても、
涼ちゃんは首を振る。
涙をこらえるように唇を噛んで、リュックをかばうように抱え込む。
「……見ないで……」
その言い方があまりに弱くて、
隠そうとする必死さが胸に刺さった。
元貴はしゃがんで涼ちゃんの目線の高さに合わせる。
声を荒げず、でも逃がさないような静かな声で言う。
「涼ちゃん…
その薬のせいで今、立つこともできないんだよ。
俺たち、心配しちゃダメ?」
涼ちゃんの肩が小さく震えた。
「…違っ……違うんだよ……
迷惑かけたくないだけで……」
言葉が途中で途切れる。
涙が一粒、ぽたりと床に落ちた。
若井はそっと背中に手を添えた。
「迷惑とかじゃないよ。
涼ちゃんが苦しいままのほうが、ずっとイヤだ。」
涼ちゃんはぎゅっとリュックの紐を握るけど、
指先が震えて力が入らない。
元貴はゆっくり手を伸ばす。
強引じゃなく、逃げ道を塞ぐようでもなく、
ただ「預けてほしい」という気持ちだけを乗せた動き。
涼ちゃんは一瞬だけ迷って……
力が抜けたように、リュックから手を離してしまった。
その拍子にまたふらっと揺れ、
若井が慌てて抱き留める。
「ほら、もう危ないって……」
涼ちゃんは若井の胸元で、小さく息を震わせたまま呟いた。
「……見ないで…お願い…」
でも、もう2人は
涼ちゃんがどれだけ追い詰められているか
はっきり気づいてしまっている。
コメント
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なんか泣ける、続き待ってます!
涙出てくる 続きが待ち遠しいです♪