ドクンドクンと心臓の音がする。
布団の中で抱きしめられているだけで、鼓動が速くなるのに、そんなことを言われてしまったら、身動き一つとれない。
無言で固まっている私に
「すみません。愛の方からキスしてくれたのが嬉しくて。つい調子に乗ってしまいました」
そう言うと蓮さんは、私から離れベッドから降りようとした。
「水を飲んできますね。電気を少しだけつけます」
真っ暗だった部屋が少しだけ明るくなり、彼の姿が見えた。
私に気を遣ってくれているんだろう。
無理やり触れないのも、あの出来事から時間が経っていないから。
私が思い出して精神的にショックを受けないようにしてくれているからだと思った。
「蓮さん!」
慌てて呼び止める。
せっかく二人で一緒に居られるのに、このままだったら彼が気を遣ってソファで寝ますと言い出しかねない。
「ごめんなさい。私、男性の経験がなくて。こういう時どうしたらいいのかわからなくて」
正直に伝えるしかない。
「でも、嫌なんかじゃないです。ドキドキしますけど、蓮さんに触れられて嫌だと思ったことはありません」
彼はベッドの上に座り
「俺が焦りすぎているんですよ。愛は何も悪くない」
優しく頭を撫でられる。
「先に寝ててください。頭を冷やさないと。また愛を傷つけてしまうかもしれません」
やはり、彼は勘違いをしている。
私は蓮さんだったら怖くないのに。
薄暗いが、彼の顔が見えた。
私はもう一度彼の頬に軽くキスをした。
「愛……?」
「無理なんてしてないです。私は傷ついてなんかいない……。さっきの続きをしてください」
私の言葉に彼は驚いていたが、私の表情が伝わってか
「本当に怖くないんですか?無理しなくていいんですよ」
私に優しく問いかける。
「怖くありません。相手が蓮さんだから……」
「わかりました」
彼は手が届きそうな距離まで再度近くにきてくれた。
「俺がもう一度愛に触れたら、自分でも抑えきれるかわかりません。それでも……」
蓮さんが何か言おうとしたが、私が彼に抱きつき、もう一度頬にキスをした。
「愛……?」
「蓮さん、好きです」
薄暗い部屋の中、彼と目が合う。
その瞬間、ベッドに押し倒された。
「……!」
彼の顔が近くなる。
「嫌だったらすぐ嫌だって言ってくださいね。俺も愛が好きです」
彼は、私の唇に軽く優しいキスをしてくれた。
一旦、唇が離れた。
しかし再び唇をすぐに合わせてーー。
それを何回か繰り返した。
「ん……」
次第に声が漏れてしまうようになった。
軽いキスだったのが、時間をかけながら深くなっていったのがわかった。
「ん……。はぁっ……」
どこで息をすればいいのか、全然わからない。
「……。苦しいですか?」
蓮さんの吐息があたるくらいの距離から話しかけられる。
「……。苦しくは……ないです。どこで息をしていいのか……。わからなくて」
私がそう答えると、彼は深くキスをしてきた。
「んぁ……!」
彼の舌が私の口の中に入ってきてーー。
「んん!!」
蓮さんの舌が……。私はどうしたらいいの。
恥ずかしすぎて、心臓が出てきてしまうのではないかと思う。
「はぁっ……」
気持ちとは逆に、彼の舌の感触、温度が気持ち良いと身体は感じているみたいだった。
「そろそろ終わりにしましょうか?」
「おわ……んんん!!」
終わりにしようと言われたが、蓮さんはキスを止めなかった。
「んっ!んんっ……」
ダメだ、何も考えられない。
「嫌じゃないですか?」
「もっと……」
「愛……?」
何も考えられなくなった私は
「もっとキスしてください……」
自分の欲求のまま、そんなことを言ってしまった。
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