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ぽんぽんず
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第11話【800年の沈黙と、ドSな言い訳】
「……つい先月、人間界の人口がめでたく100万人を突破したんだよね。ゼウスの禁制は、完全に解除された」
堂々と神罰をクリアし、自分を迎えに来たのだと誇らしげに告げるアーモンド。
その底知れない執念に一瞬は圧倒されかけたアイラナだったが、彼の話を聞き進めるうちに、胸の奥から別の感情がフツフツと湧き上がってきた。
それは、800年間、張り裂けるような想いで孤独を耐え抜いてきた魔皇帝としての、正当な「怒り」である。
アイラナはアーモンドの細い指先を強引に振り払うと、レッドダイヤモンドの瞳を激しい怒火で燃え上がらせて彼を睨みつけた。
「待て、レミエル……。お前が人間界で苦労していたのは分かった。だが、それは800年もの間、私にただの一通も手紙を寄越さなかった理由にはならんぞ!」
「え?」
「『え?』ではない! 魔界への立ち入りが禁じられていたとしても、天界最強と謳われたお前の魔力があれば、ゼウスの目を盗んで手紙を届けることなど容易かったはずだ! それなのに……一言の連絡もなく、生きているか死んでいるかも知らせず、私をどれだけ……どれだけ待たせれば気が済むのだ!」
一気呵成にまくしたてるアイラナの瞳には、怒りと同時に、長年の孤独による切なさが滲んでいた。
800年だ。文字通り、狂ってしまいそうなほどの長い年月を、彼女はあの戦場での不遜な笑顔だけを心の拠り所にして、独身を貫いて待っていたのだ。
そんなアイラナの必死の怒りを正面から受け止めたアーモンドは、一瞬だけきょとんとした後――。
ク、ククッ、と肩を揺らして、この上なく愉しげに笑い始めた。
「あはは! なんだ、アイラナちゃん。そんなに僕からの手紙が欲しかったんだ?」
「笑い事ではない! 私は大真面目に怒っている!」
「ごめんごめん。でもね、それも僕の『計算通り』なんだよね」
アーモンドは極上の流し目をさらに妖しく細めると、怒るアイラナの懐にスッと踏み込み、再びその華奢な腰を抱きすくめた。
今度は、アイラナがどれだけ抵抗してもビクともしないほどの強い力で。
「だってさ、下手に手紙なんか送って、君の寂しさを中途半端に紛らわせたくなかったんだ。800年間、僕に会えない寂しさと飢えをじっくり、じわじわと煮詰めて欲しかったんだよね。……そうすれば、こうして再会したときに、君は僕のことしか考えられなくなってるでしょ?」
「――っ、お前、……どこまで……!」
「ほら、現に今、君の頭の中は僕への怒りと愛しさでいっぱいだ。800年手紙を寄越さなかった僕を、君は一生忘れることができない。……僕の思った通り、最高の執着を育ててくれたね、アイラナちゃん」
耳元で囁かれる、ぞっとするほど甘く鬼畜なドSの真意。
手紙を寄越さなかったことすら、アイラナの心を自分だけで支配するための完璧な調教(お仕置き)の一部だったのだ。
あまりの悪趣味さにアイラナは言葉を失い、羞恥と悔しさで顔を真っ赤に染めながら、アーモンドの胸元を拳で小突くことしかできなかった。