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誠也くんの肩に寄りかかったまま、私は目を閉じた。そのあたたかさに、胸の奥がじわっと緩んでいく。
–––––このまま、ずっとこうしていたい。–––––––
なんて思った自分に驚く。
出会ってまだほんの少しなのに。
記憶もないのに。
それでも彼のそばは、不思議なくらい安心できた。
『なあ……』
誠也の声が低く響く。
『俺、今日ずっと考えててん。これ、ただの偶然なんかって……。』
私はゆっくり顔を上げた。
誠也の横顔は真剣で、いつもの柔らかさが少しだけ影をひそめていた。
『偶然にしとくには、できすぎてる気ぃするんよな。あんたの顔見たとき、なんでか分からんけど……ホッとしたんよ。“あ、この子知ってる”って、直感で思った。』
その言葉に、胸が跳ねた。
私も、そうだった。
目覚めたとき、驚いたはずなのに……怖くなかった。
「……あのさ」
『ん?』
「誠也くんといるとね、言葉にしづらいけど、心があったかくなるの。きっと……私は、あなたを……。」
喉の奥まできた“好き”って言葉が、そこで止まった。
彼の目が、真っすぐすぎて。
言葉にした瞬間、何かが変わってしまいそうで。
「……なんでもない」
『そっか……』
誠也は無理に追及せず、笑ってくれた。
その優しさに、また胸が締めつけられる。
風がそっと吹いて、木の葉が揺れた。
『明日も、一緒におれる?』
「……うん。居たい。」
『ほんなら、決まりやな』
小さく笑う彼の声が、胸に静かに染み込んだ。
“好き”って言葉をまだ言えないまま、私はまた彼の肩に身を預けた。