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その日は、雨の降る夜だった。車も人も誰も通ることの無い夜道にポツンと、ボロボロになったダンボール箱が置かれていた。
「あら? ダンボール…?」
通りかかった女性は、ダンボールに目を止めて立ち止まる。ふと、中が気になり覗き見ると女性は驚愕した。女性はダンボールの中身を抱きかかえて雨に濡れることも気に停めず、家までヒールで走り出した。
「母さんおはよー…」
欠伸をしながら、高校生の男子が2階から降りてくる。
「おはよう!ハヤト!お弁当持って行ってね!」
ハヤトの母は、ハヤトを見ては微笑み身だしなみを整える。彼女は定食屋を営んでおり、昼時から黄昏時までの間、1人で働いている。
「母さん、いつも1人だけど大丈夫?」
「大丈夫よ!アンタを1人で育てたんだ、これくらいどうって事ないさ!」
母は胸を張って自慢気に話す。母は店を開けるため準備に入る。その時はいつもラジオをかけて仕事をしている。ラジオからは、朝のニュースが放送されている。ハヤトは身支度を整えながらラジオを聞いていると、気になるニュースが耳に入った。
「昨晩、車がひとりでに暴れ出し街を滑走したという通報が相次いでおり、持ち主の男性はサイドブレーキも引いてある状態で動き出すのはおかしいと述べ、警察は調査しています…。」
変なニュースだ…。ハヤトは不思議に思ったが、特に気にせず家を出る。
「いってらっしゃい!」
母の言葉に軽くてを振り返して学校に向かう。
ハヤトはいつも学校に向かう途中、近くの神社に寄り道する。そこは静かで誰もいない、鳥の鳴き声だけが聞こえる空間が、ハヤトは大好きで小さい頃からここで一人で遊んでいた。
「あ、花咲いてる。」
ハヤトは桜の木の写真をスマホで撮る。見返すこともない画像として桜を収め、春が来たことに耽る。
ハヤトは神社に立ち手を合わせる。ダルい学校を頑張りたいという、学生ながらのちょっとした願いを毎日祈って行くのが習慣だった。
「いってきます。」
そう言ってゆっくり目を閉じると、頭の中に声が聞こえる。
「来る…。ヤツらが暴れてきおる…。」
「ん?」
ハヤトは目を開けるが誰もいない。幻聴だろうか、それにしてはハッキリ聞こえた。辺りを見回すと、 お社の中から淡い光が見えた。
「なんだろうアレ…」
ゆっくり歩みを進めお社の中を覗くと、人魂が暴れているのが見えた。
「ひ、ひとだま!?」
ハヤトの声に驚いて、人魂は暴れ出し神社の扉を勢いよく破り飛び出してくる。
「うわぁぁっ!?」
ハヤトに向かって飛んでくる人魂に、思わず身構え防御姿勢を取る。人魂はスマホに吸い込まれるように入り込んだがハヤトはそれに気が付かない。突然、眩い光が辺りを包みハヤトは目を開ける。光の中に、うっすらと鬼のような影が見え怖くなって目を瞑る。
「ハッ!!」
目を開けると、破られた神社の扉は元に戻っており鬼の姿も無くなっていた。ハヤトは頭の処理が追い付かず呆然としていると、スマホが鳴った。
「ハヤト!学校行かないでどこにいるの!」
母からだ。スマホの時計を見ると、午前9時を指しており登校時間を過ぎていた。
「ヤバい!!」
ハヤトは急いで学校に向かう。言い訳を考えているほど余裕は無くただ焦る一方だ。
「すいません!遅れました!」
「ハヤト、お前が遅刻だなんて珍しいな。何かあったのか?」
「えっと…桜を見ていました。」
ハヤトの理由にクラス中が笑い、先生は呆れている。
「まぁいい、今回は初犯ということで見逃してやる。次は無いからな?」
「ありがとうございます。」
ハヤトは席に座る。クスクスと笑う声が聞こえる。
「花見ニキやばすぎだろw」
「花見はヤバいw」
バカにしているのが聞こえる。そうだ、ハヤトは普段から陰湿ないじめを受けているのだ。友達は愚か、先生からも見捨てられ味方が居ない。だからハヤトは静かな1人の空間が好きなのだ。
放課後。ハヤトは1人になれる屋上で特撮ヒーローをスマホで見ながらお弁当を食べている。
ハヤトが昔から憧れていたヒーロー。そのヒーローは悪を倒すために悪の力を得たという、ダークヒーローだ。そんな、ヒーロードラマを見ていると…校庭が騒がしいことに気が付く。動画を停めて校庭を覗き込むと、生徒たちが何かから逃げている。まるでモノノ怪にでも襲われているかのようだった。生徒たちの後ろには、ひとりでに暴走する車が走り回っている。
「何あれ!!?」
生徒たちの様子を見ていると、頭の中に声が聞こえる。神社で聞いた声だ。
「ぐッ…!!??頭が痛い…!」
「ヤツらが…来た…。今こそ…立ち向かう時…。」
頭痛がする中、ハヤトの足は自然と動き気が付けば校庭の真ん中に立っていた。他の生徒がいない、ハヤトだけの1人の空間に暴走する車のエンジン音が聞こえる。
「危ないぞ!!逃げろ!!」
先生の声は、ハヤトには届かない。ハヤトの目は暴走する車を睨み付けている。
「契約者よ…。我に従い…その姿を解放せよ…。」
頭の中に響く声にハヤトはウザさを感じ、トラックを走り回る暴走車に怒りを感じていた。
スマホが鳴り響きスマホを見ると、見た事のないアプリが目に留まる。
「これは…。」
「我に従い…その姿を解放せよ…。」
ハヤトはアプリを開く。 スマホの画面が光ったかと思うと炎がハヤトを包み、地獄の炎のような真っ赤な姿の装甲を纏う。その姿は、ハヤトが好きなダークヒーローにも似ていた。
「我が名は、カガリ。全ての悪しきモノノ怪を焼き尽くす者。」
変身したハヤトの姿はカガリになり、その姿を見て、暴走車は突撃する。カガリは暴走車を片手で食止めフロント部分を握り潰す。その腕は、まさに「鬼」その物でカガリは超怪力で車を投げ飛ばす。投げ飛ばされ大破した車から禍々しい黒い妖気が溢れ出し、妖気の中から大きな車輪のモノノ怪が現れる。
「このワシを止めるとは…貴様やり手だな?」
「お前は…!?」
「ワシは輪入道。せっかく風を切って走っていたのに…ワシの邪魔をしおって!!貴様にはお仕置が必要だなぁ!!!」
輪入道は怒り狂い、車輪を回転させ高速で走り回る。カガリは輪入道の動きを見切り、大きな金棒で輪入道の顔に重い一撃をぶち込む!輪入道の動きは鈍り遅くなる、輪入道は怒り車輪から火球を放ちカガリを攻撃する。
カガリは火球を睨み付けて、金棒で打ち返す。輪入道にとっては必死の攻撃だが、カガリにとってはバッティングセンターのよう遊びも同然だ。カガリは金棒を構え直す。そして、握る手にギュッと力を込めると、金棒に地獄の業火が纏う。
「燃え尽きろ…!」
カガリは高く飛び上がり、金棒を振り下ろす。金棒から放たれる炎の熱は輪入道ですら耐えらずに唸り声を上げる。顔にまでめり込むほどに、何度も何度も金棒を振り下ろし輪入道の顔を金棒でぶん殴る。
「消え失せろ…!」
重いトドメの一撃が輪入道の顔にヒットすると、輪入道は叫びながら業火に包まれ妖気ごと燃やされた。
「完了。」
カガリはそう呟くとハヤトの姿に戻り、ハヤトは疲れからその場に倒れ込んだ。
ハヤトは意識の底で、赤鬼と遭っていた。赤鬼はハヤトを見つめ口を開く。
「ヤツらがすぐそこまで来ている…。我と共に闇を打ち倒そう。」
赤鬼はハヤトに手を差し伸べる。
「ヤツらって? それにキミは…。」
赤鬼はハヤトの動きを見ている。ハヤトはなぜだが赤鬼が「ただの赤鬼」では無い事を悟っていた。赤鬼に手を取ろうと、腕を伸ばす。段々と意識がはっきりしてくる…。
「ハッ!!?」
目を覚ますと、保健室の天井に安堵し、深く息が抜ける。掴めなかった自分の手を見る…。もし、赤鬼の手を掴んでいたらと思うと少し怖くなる。
「目が覚めたか?」
扉が開き先生が入ってくる。ハヤトの事はあまり心配していなさそうだ。
「まさか、君にそんな力を持ってたとは…」
「あの力…先生も何か…?」
先生は何も言わない。何か言えない事情があるのか?それとも、本当に知らないのか…。
「調子よくなったら、授業戻れよ。」
そう言い残して、保健室を出て行った。