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ひなは発達過程で少し問題があって小柄なのだ。

それとも大事な孫なのにちゃんと食べさせていないのか、って思われたり……。

体質の問題なんだけど、どうしよう!


「あ、あのっ、ひなは月齢よりちょっと小柄なんです。そういう体質で……」

「……ひなちゃん、ひょっとして乳糖不耐症?」

「え⁉ どうしてわかったんですか?」

「鷹也もそうだったからよ」

「鷹也が……」

「ひなも乳糖不耐症なのか?」

「うん……生後1ヶ月くらいから下痢がひどくなって、最初は新生児だから軟便なのか、下しているのかわからなくて……。三ヶ月検診の時に相談したら乳糖不耐症だって言われたの」


乳糖不耐症とは乳製品などに含まれる乳糖を身体でうまく分解・吸収できない体質だ。

母乳にも乳糖が含まれるわけだから、乳糖不耐症の赤ちゃんは授乳の度に下痢をするのだ。

そのため、ひなはまったく体重の増えない時期が続いた。


「それで、無乳糖ミルクに切り替えたの?」

「いえ、私は母乳がよく出る方だったので、酵素を足すことにしました」


乳糖を分解するガラクターゼという酵素が不足することが原因なので、酵素を補うことで母乳を飲めるようになる。


「あら、じゃあ授乳の度に大変だったのね」

「毎回のことですからすぐに慣れました。でもやっぱり体重はなかなか増えなくて……。離乳食が始まってから少しずつ無乳糖ミルクを足していきました」


体重の伸びに悩んだ時期があった。このまま大きくならなかったらどうしようって。

でも祖母や知美さんに支えてもらってなんとか乗り越えることができた。

ひなの体重も少しずつ増え始めたし。


「森勢の家の体質なのよ。お父さんもそうだったんだって。私はお姑さんにその体質のことを聞いていたからすぐに対処できたの。でも知らなかったら大変だったと思うわ」


そうか……。たしかに森勢の家が乳糖不耐症の体質を持っていると知っていれば、あれほど悩むこともなかったかもしれない。


「大きくなるにつれて強くなってくるの。小学校の低学年くらいまでは気をつけないといけないけれど、いずれ牛乳も飲めるようになるわよ」

「そうなんですか⁉」

「ひな、ぎゅうにゅうのめないよ? のんだらおなかがいたくなるの」


ひながこう言うのは、私がいつも牛乳には気をつけるように口を酸っぱくして言っているからだ。


「ひなが大きくなったら飲めるようになるんだって」

「ひなちゃんはじいじに似たのね」

「ひな、じいじににたの?」

「あ、ひなっ、パパの方のじいじよ」


ひなはじいじイコール私の父だと思っているはず。


「ひなちゃん、私は森勢隼人(もりせはやと)といいます。はやとじいじって呼んでくれるかい?」

「はやとじいじ? ひな、パパとふくみみがにているの。ぎゅうにゅうがのめないのははやとじいじににているの?」

「福耳も牛乳が飲めないのもはやとじいじとそっくりだと思うわよ」


あれ、そう言えばお義父さんも福耳だわ。

お義父さんはちょっと強面なんだけど、ひなにそっくりだと言われてデレデレしている。似ているって嬉しいのかな。

ひなの頭をポンポンと撫でるしぐさは鷹也にそっくりだ。

「ひなは俺に似たのに、なんで親父が出てくるんだよ……」


鷹也がブツブツとボヤいている。

だからどっちもだってー。


「ママー、ひなねむいー」

「え」


そう言えば、お昼寝の時間をとっくに過ぎていた。

客間に布団祖敷いてもらって、ひなは寝かせることにした。

その間に、鷹也は私たちの間にあったことをご両親に説明してくれた。

私がリビングに戻ったときには何度も謝罪されることに。

特にお義母さんには……。


「杏子ちゃんごめんなさい。あなたあの時のお友達だったのね。私、あの頃はすっかり黒島家にだまされていて……」

「いえ、私も誤解していたんです」

「でもあなたが鷹也の彼女だったのに、いい気はしなかったはずよ」

「私、自信がなかったんです。あの頃、仕事も始まったばかりでいっぱいいっぱいで、鷹也とは休みが合わないし……。そういう心の隙を突かれちゃったんだろうなって思います」


お義母さんが私の手を握ってくれる。


「杏子ちゃんが悪いんじゃないわ。ストーカーは犯罪よ。杏子ちゃんは被害者なの」

「……はい」


たくさんの肩の荷が少しずつ降りていくようだった。


ひなの保育園での話をしながら和やかにお茶をしていると、お義母さんが突然言った。

「ところで、こんなことを聞くのはどうかと思うんだけど」

「はい?」

「杏子ちゃんは鷹也と結婚していいの?」

「え」

「母さん!? 何言ってるんだよ!」


鷹也が慌てている。たしかにこの流れでぶっ飛んだ質問だ。


「そ、そうだぞ。やっと鷹也が結婚して、しかも念願の孫に恵まれたというのに、お前は何を――」

「だって、鷹也は4年も放ったらかしにしていたのよ? そんなことされて、普通なら愛想を尽かさない?」

「お、俺は放ったらかしにしていたわけじゃなくて……」

「今は結婚にこだわらなくてもよくなってきているじゃない? 立派に子育てして、資格を持ってちゃんとお仕事もして、人によってはいいとこ取りにも見えるわ。面倒な結婚という枠に縛られなくてもいいんだから」


ああ、わかった。お義母さんの言いたいこと……。


「私は……結婚したいと思っています。鷹也と別れたのは嫌いになったからではありません。光希さんがいると思ったからです。何もなければ別れたりしませんでした。今は……再会して、改めて鷹也を愛していると思いました。プロポーズされて嬉しかった。だから鷹也と結婚したいと思っています。結婚して、ひなと三人で暮らしたいです」


お義母さんはきっと確認したかったのだ。私の気持ちを。

これから先は結婚して夫婦としてやっていけるのかということを。

子供のためだけの結婚ではダメだと伝えたかったのだろう。


「杏子……幸せにする。もう絶対離れないから」

「鷹也……うん!」

「ゥッ……ゥゥッ……」


ん? ええっ?


「お、お義父さん?」


なぜかお義父さんが感極まって泣いている……。


「もぅー、お父さんったら! ……でも良かったわ。結婚はね、愛する人とするのが一番よ。家柄とか政治的なこととかそんなの関係ないの。私たちは二人が幸せな結婚をしてくれるならそれが一番だと思ってる。結婚式はどうする?」

「え」

「いきなりだな」

「もちろん挙げるよな? 杏子ちゃんの花嫁姿、和久井のお父さんも楽しみにされているだろう。順序が逆になったが挙げないとダメだ」

「そうよ。お父様に安心していただかないと! 私たちもなるべく早くご挨拶させて頂きたいわ」

「あ、はい!」

「たしかに挨拶は早くしないとな。杏子、日程調整頼めるか?」

「うん!」


こうして私たちは結婚に向けて大きく動き出した。

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