テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
LAST

143
183
「……10年後って子供2人くらいいるかもしれないね。家も買って、車も買って、仕事も忙しくて。旦那いらなーい、なんて言ってるかもしれないのに。今はパートナー探してるわけだから恋愛スイッチ入ってて、10年後に俺への比重なんて1%くらいかもしれないじゃんよ。結婚したらパートナーは同志って言うだろ。浮気や心変わりなんて年の差関係なくあるわけだし、男が年上ならアリって考えも嫌。男の方が平均寿命短いじゃん。死別だってあるし、人生何があるかわかんないじゃん」
「そうなんだけど、そうなんだけど。男の人と女の人は違うし……やっぱり男の21の結婚は早すぎるよ」
「俺のひいひいじいちゃん20で結婚してっけど」
「時代が! 違うでしょ」
「時代が違えど21は21だよ。何が違うの。昭和生まれだと大人なわけ」
「え……昭和? 高祖父が昭和生まれなの……? 」
「そうだけど。そこなのかよ、ひっかかるの! 」
何だか話しているうちに何が問題なんだろうと気になって来てぶんぶんと首を横に振った。違う、問題だらけだ。
「げ、芸能人とかで熟女好きを公言してた人達、みんな奥さん年下じゃない」
おずおずと口にすると、広睦くんは目を丸くしてすぐに吹き出した。
「よわ。弱くね、反論としては。弱すぎだろう。ははははは」
「芸能人とかは、綺麗で若く見えるから年の差があってもいいんだろうけど」
「んはは、どんだけ若さにこだわるんですか。わかったよ、わかった。年が離れてることに負い目感じてるってこと、俺は気にしないし、今は何とでも言ってあげられるけど、春美さんには響かないだろうから。とにかく、もう一度考えてみてよ。問題はないはずだよ」
「つまんないわよ、私。絶対に学生は学生と付き合った方が話も合うだろうし。何より、やっぱり32歳が21歳と恋愛しようって言うのがちょっと引くっていうか。あなたが私に夢中になったとしても諭す立場なんだよ」
言ってしまえば、広睦くんは「ほう」と頷いた。
「なるほど。じゃあ、諭せなかった、ってことでいいんじゃありません。俺の一過性の心の迷い、それにつき合ってくれたら。熱病みたいなもんでしょ。時が来れば目が覚める」
「そうだよ。そりゃあもう、何だったの、アレ。ってくらいスー……ッとね。でも残念ながら私にはあなたの熱に浮かされているのを見届けるほど時間が無いの。結婚したいんだってば! 」
だんだん口調が荒くなってきてしまった。
「んとに。怒らずに答えればいいじゃないですかなぜカリカリしてるんです、いつも。それが、大人なんですか? 」
「その人生達観したような態度が嫌! 」
「あれ、嫌なのは態度なんですか? 年下が嫌じゃなくて? 」
「どっちも嫌よ! 」
「嫌がってるように思えませんけど、本当はそこまで嫌じゃないんでしょ、俺の事、年齢も含め」
「嫌だって言ってるでしょ。あなたが年下じゃなかったら悩んでない。誰に相談したって年の事は言われるわよ」
「ふ、年齢の事なんて、言われたくないなら上手くかわせばいいだろう。それも出来ないってことは図星じゃないのか。それとも地雷だった? 」
「……違うわよ」
ぐ、と言葉に詰まってしまった。更に苛立ちが沸き上がってくる。
「んふ、ははは。わかった、わーかったってば」
広瀬くんはお手上げ、というポーズをして見せた。やっとわかってくれたとホッとする。が、
「じゃあ、俺とつき合って」
全く意味の分からない言葉に私の頭の中は『??????』だ。
「あ、そ……そう。えっと……」
色んな思いが、考えが感情が頭の中と心とでぐるぐるする。最善策って何だろう。
「相手見つかるまででいいから。そのくらいの責任はとってよ。風邪ひいたのは春美さんのせいなんですから」
七瀬広睦はそう言って、切なく同情を誘うような顔で微笑んだ。
この子と結婚するつもりはない。付き合うのも本当はダメなのかもしれない。
けど、このグダグダした期間をダラダラ過ごすくらいなら関係を変えて短期間ですっぱりとケリをつけるのもいいのかもしれない。
この子がそれで諦めて、私もこのとげのような引っかかりが取れるのなら。
どう正当な答えを探しても正解ではなく、言い訳にしかならない。けど、これが今の私の出した答えだ。切り替えて婚活に精を出せる遠回りなようで近道であると思う。
……お願い。そう思わせて。
「わかった……」
そう呟いた。
付き合うにしても色々と決めておかないといけないことがある。曖昧なまま始められるほど簡単なことじゃなかった。
広睦くんが私を見て微笑む。見るというより見つめるといった方がいいかもしれない。いたたまれなくて目を逸らす。
「そんな気まずそうにしなくても」
「だって、結局付き合うことになるなんて……」
「……うん。そうだね」
すごく、穏やかに彼は目を細めた。私も、それなりに恋愛はしてきたつもりだ。自分に向けられる相手の目が自分をどう思っているか言葉にされるよりわかる時がある……。夢中になっている相手に向ける目には熱が灯り惚けたように緩む。今の私の目は彼にはどんな風に映っているだろうか。同情、責任、彼を意識しだすことへの抑制……。同類相哀れむ……そんな目が合う。ふっと彼が笑う。
「諦め」
「はい? 」
「春美さん、諦めた目をしてる」
そう言われドキッとしてしまう。
「でもさ、俺知ってるんです。本当は俺の事意識してるってこと。でないと春美さん諦めてつき合おうなんて思わないでしょう? 」
さっきの比じゃないくらいドキッとして頭に血が上る。恥ずかしい。図星をさされて、恥ずかしかった。
コメント
1件
みぅだよ🤍🥀 第5話-6、読んだよ〜。 もうね、この年齢差の壁をめぐる心理戦がたまらなく好き。春美さんの「大人の立場」に縛られて葛藤する感じ、すごくわかる。でも広睦くんが「諭せなかった」とか「熱病みたいなもん」って言い返すところ、ずるいよなあ…笑。最後の「諦めた目してる」って指摘からの「本当は俺の事意識してる」って追撃、完璧だった。お願い、そう思わせて、って祈るような春美さんの心情、胸がきゅってなった。続き、気になるよ🌙