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ジワジワと蝉が五月蝿く鳴く暑い夏の日。
───日向は俺の腕の中で冷たくなっていた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー「かげやーーまーー!!」
日向が大きな声で俺を呼んだ。
「うるせぇぞ日向ボゲェ!!!!」
そんな感じでいつも通りの練習が始まった。
最近気づいた事だが、俺は日向が好きなんだと思う。しかも恋愛感情の方。自分でも馬鹿らしいと思っているが、コロコロ変わる表情や揺れる太陽みたいな髪の毛に、スパイクを打つカッコ、俺を呼ぶ声…日向の全部が好きでたまらないのは事実である。
だがそれと同時に“日向を俺だけの者にしたい”という「独占欲」がある事にも気づいた。それは日を重ねるごとに大きくなっている…と思う。日向が俺以外の人と一緒に居ると心の中のどす黒い“ナニカ”が渦を巻く。自分が自分じゃなくなるように…
だから日向とは出来る限り一緒に居るようにした。「こいつは俺のモノだ」と周りにアピールしたいのだ。そんな俺に日向は
「どうしたんだ影山?俺と一緒が良いのか?」
と、可愛らしい声で問い掛けてきた。
そうだ、そうなんだよ日向。俺はお前と一緒が良いんだ。離れたら寂しいよ、殺したいくらいだ。
そんな俺の隣で日向は俯いていた。
いつからか日向が俺を避けるようになった。練習の時も必要な時以外は山口とか菅原さんのところに居るし、お昼に誘っても「大丈夫だから」と断られた。まさか俺と一緒に居るのが嫌なのか??いいや、そんなはずは無い。だって俺は日向が好きなんだから、日向も俺のことが好きなはずだ。絶対に。
でも日向の態度は変わらなかった。
(なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで…)
日向が隣に居ないともうダメだった。ハハ、俺日向に依存してんじゃん。そんなことどーでもいいけど。
我慢出来なくなった俺は日向を問い詰める事にした。練習終わり、日向に
「部活終わったら部室残れよ」
「あ…わかった…」
そう答えた日向は凄く怯えていた。
ー:ー:ー:ー:ー:ー:ー:ー:ー:ー:ー:ー
「なぁ、日向。最近俺のこと避けてるよな。なんで?」
「そんなことないッ…「わけねぇだろ!!」
大声で怒鳴ると日向の小さな肩が跳ねた。それすらも愛おしいと思える。
「かっ、影山と一緒に居るのは好きだよ…でもなんか最近ずっとお前が近くにいて縛られてる感じがして。それに俺が他の人と話してるとお前すっげー怖い顔すんだもん…」
まずいまずいまずいまずいまずいまずい……嫌な予感がする。日向が次に言うことは俺をおかしくしてしまう…
「ね、影山。俺たちちょっと離れない──
日向が言い終わる前に俺はその細い首に手を掛けていた。そのまま床に倒れ込んで馬乗りになった。
「やめろ、そんなこと言うな。俺たちはずっと一緒に居るんだ。」
「かッ、、、げやっ、、ま“ッッ、、、ぐるっ、、じ、、、、ぃ“ッ、、」
ジタバタと俺の手を跳ね除けようとしてもがいている
「なぁ、日向?俺たちはずっと一緒に居るんだ。俺な、お前が好きなんだ。その顔も身体も全部大好きなんだよ。だから俺から離れるなんて言うな。」
「ッ、、、!?、、ン“っ、、ハァっ“、、、」
しばらくして日向が糸の切れた人形のように動かなくなった。
「日向?おい、返事しろよ」
いくら揺さぶっても日向は起きない。そこで影山は気がついた。
(あ、あぁぁああ、ぁああ、ぁぁぁあ???????)
「俺、日向ころしちやった」
影山は動かなくなった日向を抱き寄せて、
「ひなた、おれたちこれでずっといっしょだな。これからはおれ、いままでいじょうにあいしてあげるからな。しあわせになろう。ひなた」
すっかり冷たくなった日向を影山はプレゼントを貰った子供のように大事に大事に抱きしめた。
ー:ー:ー:ー:ー:ー:ー:ー:ー:ー:ー:ー
しばらくしてテレビで『宮城県の高校生二人が行方不明になった』というニュースが流れた。
END